攻撃的スタイルの復活で頂点へ…G大阪のミッションは「奪還」【J1戦力分析:ガンバ大阪編】

■クルピ新体制で「奪還」を目指す

今季のチームスローガンにチームが目指す方向性が端的に示されている。

「奪還」。2年連続で無冠に終わっただけでなく、昨季はJ1リーグで10位に低迷したガンバ大阪が目指すのはタイトルの奪回である。

「G大阪というのは、今まで数々のタイトルを獲ってきた歴史のあるチーム。もう一度タイトルを取るというクラブの目標のために、全力を尽くして貢献したい」。1月20日に行なわれた新体制会見で力強く言い切ったのはかつてセレッソ大阪でも指揮を執ったレヴィー・クルピ監督だ。

ややもするとリアクション中心のスタイルで結果を出して来た長谷川健太監督(FC東京)に別れを告げ、ブラジル人指揮官を迎えたのはタイトルを「奪還」するためだけではない。

今季、優勝争いだけでなく、G大阪が目指すのはかつてJリーグを席巻した攻撃的なスタイルを「奪還」することだ。

■「奪還」のキーマンは新加入の矢島

ただ、常勝軍団の復権は決して容易いミッションではない。1月には攻守の中心として得難い存在に成長していた井手口陽介がイングランド2部のリーズに完全移籍(現在はレンタルでスペイン2部・クルトゥラル・レオネサに所属)。

新加入選手は9人が加わったがうち7人がルーキーで、即戦力クラスは浦和レッズから加わった矢島慎也とモンテディオ山形からの加入となる菅沼駿哉の2人のみ。昨季の上位陣と比べるとやや寂しい補強にとどまったと言わざるを得ないのが現状だ。

「まずは自分の目で選手たちを見極める」(クルピ監督)。沖縄で行なわれた2度のキャンプではフィジカル強化と、練習試合を通じたフォーメーションの模索が行なわれてきたが、徐々にクルピ・ガンバの輪郭は定まって来ている。

グロインペインで出遅れているアデミウソンと、キャンプ中に右足首を痛めた今野泰幸の出遅れは痛手だが、名古屋グランパスとの開幕戦のピッチに立つ顔ぶれはほぼ定まってきている。

2月17日にパナソニックスタジアム吹田で行なわれた徳島ヴォルティスとの練習試合では、対名古屋を想定した現状のベストメンバーを投入。主力組同士による90分間は終始、遅れを取り0対2で完敗。沖縄キャンプを通じて主力組は練習試合を3分け1敗で終えている。

「結果としては残念な結果だったが、まだ今は全体を見極めている、ただ、チームとしてまだまだレベルが低いと思う」とチーム作りが道半ばであることをクルピ監督も認めたが、現状では4-2-3-1のフォーメーションで連携の熟成を目指しているG大阪。指揮官こそ変わったものの、チームベースに大きな変化はないが、キーマンとなりそうなのがリオデジャネイロ・オリンピックにも日本代表として出場した矢島である。

徳島との練習試合で気を吐いた数少ない選手の一人だった矢島は、ボランチのポジションで持ち前のパスセンスを見せただけでなく、前方への推進力もアピール。「矢島はいいアクセントになってくれていた。あいつに自由にボールを持たせた方が攻撃面でのアイデアや、いいボールが出てくる」と倉田秋もその存在を手放しで評価していた。

トップ下でもボランチでもプレーが可能な矢島は「選手として成長するためにガンバに来た。移籍してきたからには試合に出たい」と新天地での定位置確保に燃えている。

■前線の注目は17歳のルーキー・中村

新旧の日本代表が数多く揃うG大阪ではあるが、現状では「アキレス腱」となりかねないのが前線の層の薄さである。アデミウソンの合流が遅れている今、クルピ監督が得点源として期待しているのは長沢駿、ファン・ウィジョ、そしてルーキーの中村敬斗の3人だという。

特に注目したいのがアカデミー出身者以外では初めてとなる高校3年生でのプロ契約を勝ち取った中村だ。昨年のU-17ワールドカップで計4得点を叩き出した逸材は、フィジカルの強さや積極的な仕掛けなどで早くも存在感を示した。低調だった徳島との練習試合でも途中出場で攻撃のアクセントになるなど、早くも開幕戦でのベンチ入りが視野に入って来ている。

「ケイト(敬斗)には信頼を置いているし、非常に将来性がある。今季、彼が試合に出る可能性は十分ある」(クルピ監督)。若手の積極登用も、クルピ監督に託されたミッションの一つだけに、いかなる若手が抜てきされるのかも楽しみの一つである。

「勝者と呼ばれて、リーグ戦で優勝するチームは最後まで攻め抜く姿勢を貫く。そういうチームを作りたい」と新体制会見でキッパリと言い切ったブラジル人指揮官だが、攻守両面において未だ新たなスタイルの模索は始まったばかり。ただ、「奪還」に向けてG大阪にはいきなりの試練が待ち受けている。名古屋との開幕戦後、鹿島アントラーズ、川崎フロンターレ、柏レイソルといった昨季の上位陣との対戦がズラリ。「昨季の上位チームとの試合が最初に来るので、そこで勢いに乗りたい」と話すのは6年連続でチームキャプテンを務める遠藤保仁である。

タイトル奪回と攻撃的なスタイルの再構築を目指す2017シーズンのガンバ大阪。その復権はクルピ監督の手腕にかかっている。

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