恩師と再会果たした倉田秋…4年ぶりのJリーグ制覇へ共闘誓う【J1注目選手:ガンバ大阪】

かつてのヤンチャ坊主は、いつの間にか“チームリーダー”という肩書きが相応しい男に成長していた。

天才パサー、二川孝広(現東京ヴェルディ)が長年背負ったガンバ大阪の背番号10を自ら志願して背負った倉田秋にとってプロ11年目の昨季は、充実のシーズンだった。

「自分がガンバでしっかりとやらないとダメだという危機感があった。自分を追い込みたかったし、そのためにも背番号10を選んだことが、自分へのいいプレッシャーになっている」

昨季のJ1リーグではチーム内で長沢駿に次ぐ8得点をマークし、攻撃をけん引。トップ下やサイドハーフ、ボランチと万能ぶりを披露した倉田はヴァイッド・ハリルホジッチ監督が率いる日本代表にも復帰。ワールドカップアジア最終予選にも出場するなど、ロシア行きも決して夢ではない立ち位置にいる。

しかし、2017シーズンを振り返るとき、背番号10の口を突くのは悔しさが大半だ。

「去年は不甲斐ないシーズンに終わってしまったが、年が変わったからと言って、あの悔しさを忘れたわけじゃない」

日本代表の一員としてワールドカップに出場することも倉田にとっての大きな目標だが、「今までも代表に入るためだけにプレーして来たわけじゃないし、自分のリズムを大事にしながら、チームでやるべきことをやってきた結果が去年の代表入りにつながった。ガンバで結果を出すことだけしか考えていない」

■恩師・クルピとの再会

2年連続で無冠に終わったG大阪は5年間続いた長谷川健太体制にピリオドを打ち、かつてセレッソ大阪を率いたレヴィー・クルピ監督を招へい。「奪還」をチームスローガンにタイトル奪回と攻撃サッカーの再構築を目指している。

攻撃面に関しては個のアイデアを重視するブラジル人指揮官を知るチームで唯一の“クルピチルドレン”が倉田である。

1月の結団式で久々にかつての恩師と再会した倉田は「年を取ったなって言われました」と冗談好きな指揮官による第一声を明かしてくれたが、クルピ監督が好むスタイルを熟知する倉田は今季のキーマンの一人であることは間違いない。

「レヴィーと過去に一緒にやったことがあるのは今のガンバでは僕だけ。新しいスタイルを作る上でしっかりと僕も貢献して行きたい」

「年を取った」ことで変わったのはその外見だけではない。かつてのテクニシャンは、今やピッチ狭しとハードワークし、戦う姿勢を全面に押し出す闘将でもあるが、倉田自身もC大阪時代とは異なる自身の姿をクルピ監督に見せつけるつもりだ。

「セレッソ時代、レヴィーからは『とにかく点にこだわれ』と言われ続けて来たけど、あの当時は僕も勢いだけでプレーしていた感がある。その当時から、さらに攻撃的な面でより成長したところを見せたいし、その自信もある」と言い切った倉田。

昨年までは副キャプテンを任され、ベテランの遠藤保仁が不在の試合ではキャプテンマークも巻いたこともあるが、今季はチーム内での肩書きはない。ただ、倉田は「背番号10」の重みを忘れることは一切ない。

「僕自身、背番号10をつけて2年目のシーズンになるけど、よりチームを引っ張って行くつもりでいる。調子がいい時は放っておいてもチームは回りますが、苦しい試合展開の時に、一人で打開したり、点を取ったりできればかなりチームを助けられると思っている。今年は明らかにより攻撃的なスタイルをチームも採ると思うし、僕自身も自ずと去年以上の得点を決めないとダメですね」

明確な攻撃の形を最後まで見いだしきれなかった昨年は、選手個々の踏ん張りに頼らざるをえず、単発的な攻撃を繰り出すのみだったが、倉田は攻撃サッカーの再構築に向けて、恩師に全幅の信頼を寄せている。

「レヴィーは選手個々の持ち味をうまく生かすのが得意なので、僕自身も今シーズンは楽しみ。楽しいサッカーを目指すのは間違いないからそこに向けて、僕も応えられるようにやっていきたい」

エースとして期待されるアデミウソンがグロインペインの発症で出遅れ、攻守で絶大な存在感を見せる今野泰幸もキャンプ中に痛めた右足首の痛みで開幕戦の欠場は決定的。未だ理想のフォーメーションを定め切れていないG大阪ではあるが、倉田が持つ個の力はチームにとって不可欠だ。

「ワールドカップイヤーということで、今年の開幕は特別な思いもあるし、昨年もシーズンの終盤はチームとして良くなかったけど、開幕当初にいいプレーを見せられたことが代表入りにつながった。今年も去年以上にいいスタートを切りたい」

目指すのはG大阪でのタイトル奪回と、キャリア最高の大舞台になるワールドカップ行き。名実ともにチームの中心に成長したかつての“クルピチルドレン”は、背番号10に相応しい結果にこだわるつもりだ。

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