「強く願え」宇佐美浮上させた恩師長谷川監督の助言

<当落線上の男たち>

今の思いを語る宇佐美の言葉には熱がこもっていた。「とにかくワールドカップ(W杯)に行きたい」。ゆっくりと、自らに言い聞かせるようだった。3月の欧州遠征で9カ月ぶりに日本代表に復帰。今年に入ってから、所属のドイツ2部デュッセルドルフで徐々に出場機会を増やし、2月からは4試合連続得点を挙げるなど、状態を上げたことが評価された。

浮上のきっかけは恩師の一言だった。昨年12月、ガンバ大阪時代に師事した長谷川健太監督(現東京)がドイツまで宇佐美を訪ねてきた。当時は、同8月にデュッセルドルフへ加入後、先発が4試合だけという状況。初めて2人で酒を酌み交わし、苦しみを打ち明けると、温かい助言をくれた。

「自分がどうなりたいか、強く願うことは大事。強く願えば、脳がそのための準備をしてくれるから。成功しているイメージを常に持つこと。力のあるやつは自然と上っていける」

宇佐美は「自分にはない発想やったから『面白いな』と思った」。そこから毎晩、自分が試合に出て活躍する場面を強く思い浮かべながら眠りについた。

「直接的な原因かは分からないけど、ちょうどその頃から栄養学の先生に出会って食改善をし始めたり。個人的にトレーナーについてもらってプラスアルファで続けていたトレーニングも、全部ゆっくり(成果として)つながりだした。体のキレも戻ってきて、いい状態の作り方として点と点がつながった感じ」

2月のフュルト戦から4戦連発し、先発を勝ち取り、移籍後初のフル出場も果たした。軌道に乗り始めた今、毎晩想像するのは「W杯のこと。そこに向けては全力でトライしたい」。ピッチに立つ自分を思い浮かべ、目標を達成するために努力を続ける。

課題ははっきりしている。3月の欧州遠征の際、ハリルホジッチ監督からも言われた。「もう少しリスクを冒していい。シンプルにプレーしすぎている。仕掛けられる選手だからもっと仕掛けないと」。クラブでは慣れない右MFを務める。Jリーグでも結果を残してきた左サイドとは違い「右ではなかなか思い切りの良さが出せていない。だから監督に言われたことも全くもって同感やった」。

宇佐美の良さであるドリブルや仕掛けが減り、連係やDFの背後への抜け出しで崩すことが増えた。今までになかった技術が身についたことは収穫だが「ドリブルの挑戦が少ない。そこが今、僕の伸びしろ。右でも縦にぶっちぎる場面が練習、試合で出せてくると完全に(成長の)幅としてガチッと土台となって固まるかな」。助言に耳を傾け、W杯で戦う準備を着々と進めている。

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