【G大阪】開幕戦で見せた「諸刃の剣」。ツネ&ヤットはいかなる打開策を見出したのか

敗戦にあってもハッキリ示した「ハイプレスと縦に速い攻撃」

ガンバ大阪の開幕戦は、終わってみれば確かに「がっかり」した印象が残る。

ホームに横浜F・マリノスを迎え、開始早々に小野瀬康介が先制ゴールを挙げて幸先の良いスタートは切った。だが、そのわずか2分後にクロスのこぼれ球を仲川輝人に押し込まれて同点とされる。34分に三好康児に強力なミドルを、38分にはエジカル・ジュニオにループショットを決められ逆転された。いずれも横浜のパスワークに振り回され、守備網を切り崩された失点だ。

88分に相手のミスから藤春廣輝が一矢報いるも、手遅れだった。シュート本数、10本対24本が示すように、横浜の猛攻の前に屈した。中盤の汗かき役である高宇洋の「思った以上に相手を捕まえるのが難しかった」という言葉からも、苦心ぶりが窺える。

厳しい船出となったが、それでも今後への期待が膨らんだプレーがふたつあった。ひとつ目は、先制点を生み出した前線からのプレスである。

中盤で喜田拓也にチェイシングした遠藤保仁がパスを引っかけると、ルーズボールがチアゴ・マルチンスに渡る。その瞬間、遠藤は「行くよ」と言わんばかりに相手GKに右手で指をさし、それにファン・ウィジョが呼応。狙い通りにバックパスをカットしてシュートを放つと、ポストの跳ね返りを小野瀬康介が詰めた。実に組織的で、綺麗に連動されたプレスだ。

遠藤も手応えを口にする。

「相手も後ろ向きでしたし、前から行くことは多少なりともみんなも思っていたと思うので。相手のミスもありましたけど、積極的に前からプレスを掛けるのはこれからも大事になってくると思うので、それをチーム全体で上手くやれるようにしたいですね」

ふたつ目は、縦に速い攻撃だ。17分、高のボール奪取から小野瀬→ファン・ウィジョへと繋いでゴールに迫ったショートカウンターは象徴的な形だった。

”アグレッシブ”で泥沼にハマるリスクも…

このハイプレスと縦に速い攻撃はかなりアグレッシブで、今後に期待を抱かせた。「今季のガンバはこう戦うんだ!」と、のっけからサポーターに誇示した感さえある。実際、宮本恒靖監督も試合の狙いを次のように話していた。

「マリノスの独特なボールの動かし方に対して、できるだけ高い位置でボールを奪おうとしました。1点目はその形が上手くはまったと思います。あとは、ボールを奪ったら早く攻めることが、ひとつの狙いとしてありました」

ただ、ハイプレスには徐々に歪みが生まれ、縦に速い攻撃はCBにカットされるか2トップがオフサイドにかかるようになり、どちらも狙いが裏目に転じていった。能動的なアクションスタイルが機能しなくなると、一気にバランスが崩れる。諸刃の剣になりかねないことが、開幕戦で明らかになったのだ。対戦相手に対策を練られ、同じような戦いを繰り返せば、勝点を落とし続ける泥沼にハマりかねない。

もちろん、そんなリスクは百も承知。指揮官はとりわけ攻撃面に関して、横浜戦の反省と今後の修正をこう述べた。

「試合前からゆっくり攻めるところと、速く攻めるところの使い分けを伝えていましたけど、ゆっくり攻めるべきところで、速く攻めてしまってボールを失ってしまった。それが今日の試合の反省点。今年は立ち上がりから、速く攻めれるときは速く攻めようと話しているなかで、そこがみんなのなかで共通したものが、まだないのかなと思います」

鍵となるのは速攻と遅攻の使い分け。ボランチでゲームメイクする遠藤は、横浜戦を振り返りながらそのコツをこう説明した。

「苦し紛れのロングボールが多かったので、意図した部分ではないと思います。裏にはスペースがありましたけど、オフサイドになる回数も多かった。そこはタイミングの問題だと思いますし、裏に出す雰囲気を出して蹴ったら、相手にとっては分かりやすいと思うので、どこか2、3人が絡みながら裏を狙うことが必要だと思う」

カウンターもポゼッションもできる多芸への道は、そう簡単にはいかないだろう。チャレンジの代償として、序盤戦は苦しむかもしれない。それでも、Jリーグの覇権を奪還するためには必要なチャレンジであり、上手くいけば、昨季に成し遂げた9連勝以上の快進撃を見せられる可能性もある。

大きな期待を込めながら、今後の戦いぶりを見守っていきたい。

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