負けたら辞任もあり得た?背水の宮本ガンバが”大阪ダービー”で手にした1勝以上の価値

若手抜擢にシステムチェンジ…大胆策が奏功した

 ダービーが特別な試合であることは言うまでもない。独特の重さがあることも理解している。ただ、それを差し引いても、37度目の大阪ダービーは戦前から異様な雰囲気が漂っていた。取材を進めていけばいくほど、宮本恒靖監督の”覚悟”が感じられたからだった。

「このシステムでやると決めたのはオフの日です。ある程度……流れを変えるために若手を起用する時に誰を使うか考えた」

宮本監督は試合後にそう明かした。この時、チームは7試合連続勝ち星なし。J2降格圏に足を踏み入れていた。13日のオフに指揮官は大きな決断をし、14日の練習から3―1―4―2システムを取り入れ、DF高尾やMF福田、MF高江らをスタメン組に抜擢した。

ただ当初、選手たちも戸惑いを隠せなかったという。「本当に、このメンバーでやるのか」。そう思うのも当然だろう。遠藤と今野という大黒柱をベンチに置き、J1デビュー戦で本職サイドバックの高尾をセンターバックに置くことや、今季1度も出場機会がない福田をサイドアタッカーとして起用する。そんな大それたことを大阪ダービーという大一番でやるのか。どうも福田と高江が出るらしい……。そんな話を耳にした時は私自身も半信半疑だったし、最後まで疑念はぬぐえなかった。普段はチーム内の事情を口にしたがらない指揮官が15日の取材時に若手起用を隠そうとしなかったのも、何か異質なものがあった。

その”何か”は選手にも伝わっていた。C大阪戦後に、ある選手はこう言った。「きょうのツネさん(宮本監督)はスーツで臨んでいたし、負けたら覚悟していたのかと思いました」。クラブは宮本監督を解任しないことは決めている。それだけに、残されているのは辞任しかない。あるベテラン選手は週半ばのミーティングでも指揮官から同様の雰囲気を感じ取っていた。もちろん宮本監督本人が口にしたわけではないので確証はないが、選手の多くが最悪の事態を想定していたのは事実だ。

G大阪の選手がC大阪の選手よりも球際でファイトし、総スプリント回数で54回も上回っていたのも、指揮官の”思い”を汲み取っていたからではないだろうか。

ダービーは様々なモノを背負う。名声や誇り、重圧……。ただ宮本監督は最大限のリスクを背負い、そして選手は応えた。既存の主軸と若手の融合で勝利した令和最初のダービーは、今まで以上の価値がある。指揮官にとっても、クラブにとっても新時代を切り開く勝点3だった。

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