宇佐美が強烈なシュートを放てる理由は? 専属トレーナーの証言「見たことがないくらい…」

専属トレーナーの田辺光芳さんが宇佐美の“肉体”を語る 「柔らかく、しなやかな筋肉を持っている」
ガンバ大阪FW宇佐美貴史が、復活を遂げている。10月からの出場した公式戦6試合6得点で、現在3試合連続ゴール中。特に11月に行われた第30節湘南ベルマーレ戦(3-0)の2発と第31節大分トリニータ戦(1-2)は、「This is 宇佐美貴史」というような精度の高いシュートで決め切った。Jリーグ屈指の技術を持つ宇佐美だが、その肉体からどのようにシュートは生まれるのか。専属トレーナーの田辺光芳さんに、宇佐美の肉体を解説してもらった。

リーグ終盤戦に差しかかって、好調を維持する宇佐美。今夏、G大阪への復帰を遂げ、一時は負傷もあったが、ここまで12試合6得点しており、現在はリーグ戦3戦連発中。湘南戦、大分戦と23日の第32節ベガルタ仙台戦(2-0)はいずれも左右の足からコンパクトな振りでニアサイド、ファーサイドを使い分けてシュートを打っている。“屈強”とは言えない宇佐美が、小さなモーションであんなにも強烈な一撃を放てるのはなぜか。

「宇佐美選手の治療をしていても、お腹や腰の手の入る深さが違う。体が硬いと筋肉が張って手が入らない。それだけ柔らかく、しなやかな筋肉を持っている。今まで見てきた患者さんのなかでも、他には見たことのないくらい柔らかい筋肉を持っている」

そう話すのは、宇佐美の専属トレーナーを務める田辺さん。2017年12月、当時ドイツ2部のデュッセルドルフに所属していた宇佐美は、ロシア・ワールドカップ(W杯)出場を目指して肉体改造に取り組んだ。きっかけは16年夏にG大阪から2度目の海外挑戦として選んだアウクスブルクで出場機会に恵まれず、17年夏にデュッセルドルフへ期限付き移籍したこと。ある意味、吹っ切れた宇佐美は、自分の体と真摯に向き合うことにした。

そこで出会ったのが田辺さん。京都から何度か田辺さんがドイツへ足を運び、オフには練習場を借りて個別にトレーニングを積んだ。“遠距離”でも宇佐美からこまめに動画が届き、改善点を頻繁にチェック。当時は、右の肩甲骨が他の部位に比べて硬かったため、走る時に無駄な力が入り、90分間プレーすると余計な疲労が溜まった。田辺さんの下で右肩甲骨を鍛えて、走り方を徹底的に改善。動画でやり取りしながら数センチ単位で調整した。“新・走法”は、90分間を通しての体力をマネジメントするため。疲労を溜めない走り方を習得することで、終盤でもパワーを発揮できるようになった。

もともと、恵まれた体を持ち合わせ、歩き始めたのは生後8カ月。それと同時にボールを蹴り出した。だが、重い布おむつが擦れて上手く蹴れず……。まだ赤ちゃんで話せない宇佐美は、兄のブリーフパンツを指さして「これが履きたい」と駄々をこねたという“伝説”もある。

しなやかで柔軟な筋肉を「ムチみたいにしならせる」
もともと筋肉は田辺さんが「他に見たことがない」と話すほど、抜群にしなやかで柔軟だ。鍛えても筋肉が硬くならず、だからこそ、繊細で柔らかいタッチが可能となる。例えば、ボールの威力を瞬時に消し去る、ピタリと止めるトラップができる。

では、コンパクトな振りからなるシュートで、力強いボールを打てるのはなぜだろうか。まず、威力のあるシュートにはボールに伝わる重さと速度が必要。そのなかでカギを握るのが、重さ。腰下の脚の力だけで振るよりも、上半身の力を使うことで、伝えられる“重さ”が大きくなる。宇佐美は特に腰回り、背骨付近の筋肉に弾力があり、「引っ掛かりがない」という。すると、「ムチみたいに体を上手くしならせることができる。どこかが硬いと力を上手く伝えることができない。だけど、宇佐美選手は体を反らせてからシュートを放つ瞬間まで、筋肉が引っかかることがない」と田辺さんは言う。

さらに、ニアサイドとファーサイドを打ち分けられ、左右の足からシュートを放てるのは、「筋肉のつき方、バランスが均等。股関節の可動域も両方が均等。どちらかが硬ければ、アウターマッスルが張ってくるが、宇佐美選手はそれがないから」。そして、小さいモーションで速度も上げられる。シュートの威力を発揮するために必要な“重さ”と“速度”を兼ね備えている。このシュートを打つために生まれてきたような肉体を持って、誰もが惚れ惚れするような一発を放てるようになった。

今季のJリーグも残り2節。G大阪は宇佐美が途中でチームを離れた2016年から4季連続でタイトルを獲れていない。東京五輪が開催される2020年、スポーツが盛り上がりを見せる歴史的な年に、クラブ史上10個目のタイトルを獲得することができるのか。宇佐美の一振りにかかっているはずだ。

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