ガンバ大阪、5年間の歴代フォーメーション。際立つ近年の低迷ぶり、4季連続無冠で薄れる強者の姿

Jリーグの各クラブは、毎年メンバーを変えながらシーズンを戦っている。5年前と比べると、ほとんどのチームでメンバーの大半が入れ替わっていることがわかる。今回、フットボールチャンネルでは、ガンバ大阪の過去5年間の主要メンバーや基本システムをシーズンごとに紹介していく。

過密日程にも負けず(2015年)
【シーズン成績】
明治安田生命J1リーグ:2位(1st:4位/2nd:3位)
ヤマザキナビスコカップ:準優勝
天皇杯:優勝
AFCチャンピオンズリーグ:ベスト4

2014シーズンに鹿島アントラーズ以来となる国内三冠を達成したガンバ大阪には、この年もタイトル獲得が期待されていた。オフ期間の補強はFW赤嶺真吾、MF小椋祥平、GK藤ヶ谷陽介の3名のみ。前年とほぼ変わらぬ主力メンバーで、シーズンをスタートさせている。

1stステージは開幕2戦未勝利とスタートダッシュにこそ失敗したが、第3節から6連勝を達成するなどすぐに立て直した。第11節終了時点では首位にも立っている。ただ、終盤に5試合連続未勝利に陥るなど急失速。4位で1stステージを終えることになった。

FW長沢駿を加えた2ndステージは3位と4位の行き来を繰り返したが、最終節でモンテディオ山形を4-0で下して3位フィニッシュ。年間順位でもFC東京を抜いて3位に浮上し、チャンピオンシップ(CS)出場を果たした。

CSでは準決勝で延長戦の末、浦和レッズを撃破。年間1位のサンフレッチェ広島が待つ決勝に進出した。しかし、ファイナルではホームでの第1戦を終盤の連続失点で落とし、アウェイでの第2戦でも勝ち切ることができず。リーグ連覇を逃す結果となった。

それでも、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)では日本勢最高のベスト4進出、ヤマザキナビスコカップでは準優勝、天皇杯では優勝を飾るなど随所で強さを見せつけた。長谷川健太体制3年目のチームも、非常に魅力的であったと言えるだろう。

2015シーズンはとにかくハードであった。G大阪は実に公式戦60試合を同シーズンだけで消化しており、1週間に2試合というスケジュールが隔週やってくる日程を強いられた。疲労の蓄積を隠せない試合もいくつかあったのは事実で、その影響で終盤に息切れして勝ち切れないゲームもあった。

それでも、上記のようなシーズン成績を収めたのはさすがと言える。2014シーズンから主力メンバーが変わらず、意外性には欠けたかもしれないが、安定感は常に保証されていた。長谷川監督の下で築いたチーム力の高さというものが、改めて証明されたシーズンと言えるだろう。

▽GK
東口順昭

▽DF
岩下敬輔
丹羽大輝
米倉恒貴
藤春廣輝

▽MF
今野泰幸
遠藤保仁
阿部浩之
宇佐美貴史
倉田秋

▽FW
パトリック

新スタ元年は無冠に(2016年)
【シーズン成績】
明治安田生命J1リーグ:4位(1st:6位/2nd:4位)
YBCルヴァンカップ:準優勝
天皇杯:ベスト8
AFCチャンピオンズリーグ:グループリーグ敗退

クラブ設立25周年となる2016年。ガンバ大阪はこのシーズンより、本拠地をサッカー専用スタジアムの「市立吹田サッカースタジアム」へと移転している。

オフ期間には横浜F・マリノスから元U-21ブラジル代表FWのアデミウソン、MF藤本淳吾、大卒No.1ルーキーとの呼び声高いFW呉屋大翔などを獲得。主力級選手の退団はなく、満を持してリーグタイトル獲得を目指した。

しかし、現実は厳しかった。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)を最優先にした影響もあるのか、G大阪はなかなか波に乗り切れず、安定して勝ち点を奪うことができない。長谷川健太監督もシステム変更を行うなどして状況の打開を試みたが、最後まで停滞感は拭えず。優勝どころかチャンピオンシップ(CS)出場も危ぶまれる6位で1stステージを終えることになってしまった。

上位進出を目指したACLでも、水原三星、上海上港、メルボルン・ビクトリー相手に1勝も挙げることができずグループリーグ敗退。勝ち点2という数字は2004年大会以降最低となる成績であった。

ただ、風向きが変わり始めたのはFW宇佐美貴史のアウクスブルク移籍が決定した直後だ。長谷川監督はシステムを4-2-3-1に固定し、アデミウソンを1トップに据える。すると前線で自由を得たブラジル人FWが大きく躍動し、攻撃全体の勢いが格段に増したのだ。

そしてMF井手口陽介の台頭も見逃せないポイントとなった。もともと評価の高かった選手ではあったが、攻守における存在感は絶大で、日本代表招集も受けるなど飛躍の年となっている。彼の成長もチームの勢いを加速させたと言えるだろう。

しかし、2ndステージでは4位につけるなど追い上げを見せたものの、年間勝ち点が1ポイント足りずチャンピオンシップ進出を逃した。また、YBCルヴァンカップでは決勝進出こそ果たしたが、PK戦の末に浦和レッズに敗北。天皇杯でも横浜F・マリノスに敗れ準々決勝で姿を消すなど、無冠に終わってしまった。

井手口の台頭、アデミウソンのフィットなどポジティブな要素もあった。ただ、新スタジアム元年は悔しさが残るシーズンとなってしまった。

▽GK
東口順昭

▽DF
丹羽大輝
金正也
オ・ジェソク
藤春廣輝

▽MF
井手口陽介
今野泰幸
阿部浩之
倉田秋
遠藤保仁

▽FW
アデミウソン

低迷。長谷川体制の終焉へ(2017年)
【シーズン成績】
明治安田生命J1リーグ:10位(11勝10分13敗)
YBCルヴァンカップ:ベスト4
天皇杯:4回戦敗退
AFCチャンピオンズリーグ:グループリーグ敗退

長谷川健太体制の5年目。ガンバ大阪はオフ期間にMF泉澤仁、DFファビオ、DF三浦弦太などを補強。一方でMF阿部浩之が川崎フロンターレに、DF岩下敬輔がアビスパ福岡に、DF西野貴治がジェフユナイテッド千葉にそれぞれ移籍している。

リーグ戦の序盤は順調だった。開幕からいきなり5試合連続無敗を記録すると、その後も安定してポイントを取り続ける。第12節のサガン鳥栖戦終了時点では首位にも立っていた。結果的に前半戦を4位で終えることにはなるのだが、この時点ではまだリーグタイトルの可能性を十分に残していた。

しかし、後半戦に思わぬ急ブレーキを踏んでしまう。成長をチームの結果に還元しつつあったMF堂安律のフローニンヘン移籍、ファビオら主力の相次ぐ怪我、FWアデミウソンの絶不調などが重なり、チームの勢いは完全に失われた。クラブの決断も早く、9月7日の時点で長谷川監督のこのシーズン限りでの退任を発表している。

そして、こうした悪い空気を最後まで払拭することができなかったG大阪は、リーグ戦10試合未勝利のままシーズンをフィニッシュ。順位は長谷川監督就任以降最低となる10位だった。

後半戦の獲得勝ち点は総合順位で最下位だった大宮アルディージャと並んで18チーム中最低となる11ポイント。さらに「リーグ戦10試合未勝利」「リーグ戦19試合連続失点」「公式戦13試合未勝利」などクラブワースト記録も連発している。第33節の北海道コンサドーレ札幌戦(0-1)後に行われたホーム最終戦セレモニーでは、指揮官が話し始めるとスタジアムからは大ブーイングが飛んだ。これこそが、この年のG大阪の低迷ぶりを象徴していると言えるだろう。

FW宇佐美貴史やFWパトリックらがチームを去った中、二桁得点を記録したのはFW長沢駿のみ。夏に加入したFWファン・ウィジョも奮闘したが、低迷するチームを救い出すほどの存在にはなれなかった。これまで毎年のようにタイトル争いを繰り広げていたG大阪の一時代が、ここで幕を閉じたと言えるだろう。

▽GK
東口順昭

▽DF
三浦弦太
ファビオ
オ・ジェソク
藤春廣輝

▽MF
井手口陽介
遠藤保仁
藤本淳吾
倉田秋

▽FW
ファン・ウィジョ
長沢駿

タイトル奪還が目標もまさかの…(2018年)
【シーズン成績】
明治安田生命J1リーグ:9位(14勝6分14敗)
YBCルヴァンカップ:ベスト8
天皇杯:2回戦敗退

5年間チームを指揮した長谷川健太監督に別れを告げたガンバ大阪は2018シーズン、新監督にかつてセレッソ大阪で攻撃的サッカーを築き上げ、若手育成にも定評のあるレヴィー・クルピ氏を迎えた。この年のチームスローガンは『奪還』。2季連続で逃したタイトル獲得を目指してシーズンインしている。

ところが、タイトル獲得の期待は早くも薄れてしまう。FWアデミウソン、MF今野泰幸らを怪我で欠いたまま迎えたリーグ戦では2012年以来最悪となる開幕3連敗スタート。第7節のジュビロ磐田戦でようやく初白星を掴み取ったものの、それ以降も勝ち点は伸び悩み前半戦終了時点で16位に低迷。目標は「タイトル奪還」から一転して「残留」へと切り替わった。

クルピ監督の下では規律が曖昧となっており、一度狂った歯車はその後もなかなか噛み合わなかった。攻撃的なスタイルも形を成さず、第17節終了時点で総得点数「15」と脆さが浮き彫りとなっていた。当然、この状況を良しとしないクラブはクルピ監督を解任。後任にはU-23監督を務めた宮本恒靖氏が就いている。

しかし、その後もチームの調子は上向かず。第24節のサガン鳥栖戦終了時点で自動降格圏内となる17位に沈んだ。この時点では残留の可能性も薄いと言わざるを得ない状況であった。

しかし、第25節の川崎フロンターレ戦(2-0)を皮切りにチームに残留へ向けてのエンジンがかかった。韓国代表としてアジア競技大会を戦ったFWファン・ウィジョの合流、今野の戦列復帰、アデミウソンの復調、夏に加入したMF小野瀬康介のフィットなどもあり、チームはそこから怒涛の9連勝を記録。最終的に9位で見事残留を果たす結果となった。

ただ、失望の1年だったことに変わりはない。本来の目標はタイトルの奪還であったが、一度も上位に進出することなくシーズンを終えている。強きガンバ大阪の姿は一体どこへ消えてしまったのか。

▽GK
東口順昭

▽DF
三浦弦太
ファビオ
オ・ジェソク
藤春廣輝

▽MF
今野泰幸
遠藤保仁
小野瀬康介
倉田秋

▽FW
ファン・ウィジョ
アデミウソン

またも残留争いを強いられる(2019年)
【シーズン成績】
明治安田生命J1リーグ:7位(12勝11分11敗)
YBCルヴァンカップ:ベスト4
天皇杯:3回戦敗退

宮本恒靖体制の2年目。前年のリーグ戦で不振に陥ったチームにはこの年、上位進出を果たし復権への道を切り拓くことが求められた。しかし、そこに待っていたのはまたも苦難の連続であった。

開幕から4試合こそ2勝2分の成績を収めるなどしていたG大阪であったが、第5節のヴィッセル神戸戦から第11節のサガン鳥栖戦まで泥沼の7試合連続未勝利。その後セレッソ大阪とのダービーを制したものの、直後に3試合連続ドローに終わるなど、第16節終了時点で自動降格圏となる17位に低迷していた。MF中村敬斗、FW食野亮太郎など若手を積極的に起用した宮本監督であったが、なかなかチームとしての強度は上がり切らなかった。

しかし、夏場にチームは大きな変化を遂げる。FW宇佐美貴史、MF井手口陽介、FWパトリック、元スペイン代表MFのマルケル・スサエタらを獲得する一方、DFオ・ジェソク、中村、食野、MF今野泰幸、MF藤本淳吾、FWファン・ウィジョ、DF米倉恒貴を放出するなど、メンバーの大幅入れ替えを行ったのである。

そして迎えた後半戦も何度か勝ち切れない試合はあったが、宇佐美、井手口ら復帰組がゲームを重ねるにつれ本来のパフォーマンスを取り戻すなど躍動。DFキム・ヨングォンとDF三浦弦太の新CBコンビのパフォーマンスレベルが上がるのに時間を擁し、失点が重なってしまったのは残念であったが、宇佐美とFWアデミウソンの2トップが抜群の破壊力を発揮するなど、最終的に7位でリーグ戦を終えている。

決して満足のいく7位ではない。YBCルヴァンカップはベスト4、天皇杯は3回戦敗退を余儀なくされるなどこの年も無冠に終わってしまったのは事実だ。ただ、終盤は2020シーズンに繋がるような戦いぶりだったのも事実。「名門復活」の時は近いのか。

▽GK
東口順昭

▽DF
三浦弦太
高尾瑠
キム・ヨングォン

▽MF
矢島慎也
小野瀬康介
藤春廣輝
井手口陽介
倉田秋

▽FW
アデミウソン
宇佐美貴史

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