コロナ禍での中断延長に揺れるJリーグを緊急探訪【ガンバ大阪】

大阪府の吉村洋文知事が出した「3月3連休の大阪・兵庫往来自粛」に困惑が広がった関西圏。その渦中の3月22日。ガンバ大阪の本拠地・吹田スタジアムの最寄駅、JR吹田駅は閑散としていた。万博記念公園も草野球や少年サッカーなど一部が練習していただけ。例年の春休みに比べると人出は大幅に減った様子だ。そんな中、ガンバの選手たちはJリーグ再開に向けて活動を続けている。

が、4月3日の再開もさらに延期される事態になった。2月23日の今季開幕・横浜戦でJ1最多タイの631試合出場を記録した遠藤保仁は、「どの国もほとんどサッカーしていないんで。日本も慌てる必要はないと思いますし、みんなの健康が第一。冷静な判断をしていただければ、僕らはそこに従うだけです」と長期戦を覚悟する構えだ。

元日本代表主将・宮本恒靖監督就任3年目のガンバは、今季J1開幕戦で昨季王者の横浜を2-1で撃破。好スタートを切った。遠藤の記録達成もあり、序盤の快進撃に大きな期待が高まったが、新型コロナウイルスの感染拡大に水を差される格好となった。

3月1日のホーム開幕・仙台戦では満員に近い来場者が予想されていただけに営業面の痛手も大きい。

スタジアム内チームショップ「ブルスパジオ」の店員も「3月は試合がないのでお客さんもパラパラ。3連休も出足が伸びませんね」と顔を曇らせる。

試合を待ち切れないサポーター数人もスタジアム外に集まり、4月4日の川崎戦に向けて横断幕を作成していたが、いつ掲げられるかも分からない。本当にもどかしい時間が続いているのだ。

苛立ちや不安を覚えているのは現場も同じ。

宮本監督らスタッフ陣は「こういう時こそプロとして意識を高く持ってやってほしい」と選手にハッパをかけているが、先の見通しが立たなければモチベーションを上げようがない。

2008年に感染症で入院し、オーバーエージで出場するはずだった北京五輪を棒に振った遠藤は、「今はどこにいてもリスクがあるし、普段より注意して生活したいです」とより入念な体調管理を行うつもりだが、選手側もコンディション維持が難しくなっている。

■昌子や宇佐美らケガ人にはプラスに

困難な状況にあって、ガンバにはプラス要素もある。ひとつはケガ人が復帰する時間が持てたこと。2月にトゥールーズから移籍した日本代表DF昌子源は、その筆頭だ。約1カ月のリハビリを経て昨年から痛めていた右足首が良くなり、21日の練習試合ではついにフル出場を果たした。

「90分出たのはフランスにいた昨季以来。自分にとっては大きかった。エムパペ(パリSG)とかと対戦した頃に比べて何%というのは難しいけど、試合を続けていけば自然と状態も上がっていくと思う。フランスは今、1カ月の外出禁止命令が出ていて、トゥールーズで僕の通訳をしていた人も自宅待機中。違反したら130ユーロ(約1万5000円)の罰金もあるみたい。僕がケガをしたまま『ずっと自宅にいろ』と言われたらメンタル的にも相当きつかった。結果論ですけど、タイミング的には帰ってよかったです」と、本人も前向きに話していた。

昌子とガンバのジュニアユース時代の2年間をともに過ごした同期の宇佐美貴史も目下、左ヒザ負傷で離脱を強いられている。

「最初は歩けないくらい痛かった。2週間くらい走ってないので、ヒザが治っても体力を戻していく時間が必要なのかな」と現状を打ち明ける。そんな状態でドイツに留まっていたら、まともにトレーニングもこなせていなかっただろう。

「今はみんな試合が週末にある充実感はないかもしれないけど、しっかり練習できている。サッカーがやれてる分、ストレスなく生活できてるのかなと思います。源や(小野)裕二もそうだけど、海外の苦労を知ってるし、同じような経験をしてきたんで、一緒に戦うのが楽しみですね」

こう話す宇佐美も、盟友たちとの共演を心待ちにしている。

韓国人DFのオ・ジェソクが「Kリーグは練習試合も禁止でリーグ再開も決まっていない。Jリーグより厳しい状況です。僕らも自国に簡単に帰れなくなった。家族も心配しています」と言うほど、世界のサッカー界は混乱の最中にいる。

むしろJの選手は恵まれているのかもしれない。ガンバも王者奪回を目指して〈今〉を大事にするしかない。

長谷川健太監督時代の2014年にJ1、ナビスコ杯(現ルヴァン杯)、天皇杯の国内3冠を達成し、2015年も天皇杯を制して以降、彼らは停滞を余儀なくされている。そればかりか2018、2019年は2年連続でJ2降格危機に瀕した。

遠藤が「もともと選手の質は高いし、下位争いをしていたらおかしいチーム」と語ったように、戦力と結果が全く伴っていないのだ。

「今は僕や源が27~28歳、(三浦)弦太や(小野瀬)康介が25~26歳、その下に(井手口)陽介とかがいて(年齢的にも)いいバランスだと思う。この機を逃したくないですね」と宇佐美が言うように、2020年の大躍進は最重要課題。

関西の雄・ガンバの再開後の戦いぶりを注視したい。

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