【41歳に】今の若手は「サッカーを賢くやらなくなっている」… 実は熱く、厳しい遠藤保仁の発言が胸に響くワケ

雑誌「Sports Graphic Number」と「NumberWeb」に掲載された記事のなかから、トップアスリートや指導者たちの「名言」を紹介します。今回は1月28日、41歳の誕生日を迎えた遠藤保仁の5つの言葉です。

<名言1>

相手の逆手を取るようなプレーがないと面白くない。

(遠藤保仁/Number948号 2018年3月15日発売)

◇解説◇

遠藤の信念は、サッカーの魅力を端的に言い当てたものだ。

彼にはスピードやパワーなど飛びきりの身体能力があるわけではない。しかし、“止める・蹴る”の基礎技術をベースに、相手の思考を読んで相手守備陣の虚を衝くプレーは名人の域で、なおかつ遊び心にあふれている。

「自分たちが楽しんでいないと、見ている人も楽しめないじゃないですか」とも話す遠藤。ちなみにこの発言をしたのは、38歳となって新シーズンを迎えようとしていたタイミングだった。そこから遠藤はガンバ大阪でレギュラー争いを繰り広げ、最終的にはJ1リーグ戦34試合すべてに出場しているのだから恐ろしい。ユルそうに見えて、プロの世界を生き抜く術を知り尽くしているのだ。

<名言2>

注目されなかったのが良かったのかな、と思いますよ。

(遠藤保仁/Number873号 2015年3月5日発売)

◇解説◇

遠藤はいわゆる「黄金世代」の1人だ。

ただし1999年ワールドユースの主役は小野伸二稲本潤一小笠原満男だったし、2002年W杯メンバーは落選、そして2006年W杯では出場なしに終わった。それでもイビチャ・オシムが日本代表監督に就任して以降「日本のボランチと言えば遠藤」という時代が約8年も続いたのだから、まさに大器晩成である。

「僕の場合、周りにそうそうたる顔触れが揃っていたんで、その陰でコソコソとやれましたから」

まさに遠藤らしい、飄々とした言い回しで同世代との比較論について語っているが、次の言葉の方が、ヤットが心の中に秘めている“芯の部分”なのかもしれない。

「ま、その選手の態度次第だとは思うんですよ。注目されるのも、それ自体は悪いことじゃない。でも、チヤホヤされることで自分の立ち位置を見失っちゃうと、ね」

<名言3>

悪く言えば、サッカーを賢くやらなくなっている。良く言えば“俺が俺が”が正解になりつつある。

(遠藤保仁/Number985号 2019年8月29日発売)

◇解説◇

日本人プロサッカー選手初の公式戦1000試合出場――。

2019シーズン、遠藤が成し遂げた前人未到の記録である。

世界を見渡してもシャビ、ブッフォン、マルディーニら限られた選手しか届いていない域に、遠藤は到達した。

当時、遠藤はガンバでベンチスタートの機会が増えていたが、ピッチに立てば気の利いたパスで攻撃にリズムを与えていた。そんな遠藤だが、ここ最近の若手選手について「俺が俺が」の姿勢が強くなりすぎてないかと疑問を呈する。

「相手が前にいるのに、敢えて突っ込んでいったり、損なプレーが増えてきた。周りには10人の仲間がいるんだよっていうのをもっと感じてほしいし、学んでほしい」

ピッチ全体に目配りできる“ヤット”らしいアドバイスである。

<名言4>

結果として1-0で勝てればいいけど、そんな試合を誰も期待していないでしょ。

(遠藤保仁/Number臨時増刊 2014年6月23日発売)

◇解説◇

ブラジルW杯直前のテストマッチで日本はコスタリカ、ザンビアに連勝したが、2試合で7得点、4失点と守備には課題が残った。

しかし、遠藤は「俺たちのチームは、攻撃的なサッカーをするというスタイル。だから、4失点したことよりも俺は攻撃で7点取れたことを評価している。失点が減ればチームのバランスが良くなるのは分かるけど、今の代表は1-0の試合を望めるメンバーじゃない」と話していた。

そして迎えたブラジルW杯本番、日本は2敗1分けという結果でグループステージ敗退を喫し、わずか3試合で大会を去った。

当時は相手の策に対応しきれず、“自分たちのサッカー”に固執したナイーブさを指摘する声が大きかった。ただ遠藤のコメントを振り返ると、特徴だったはずの攻撃力で殴り合いに持ち込めなかったことも敗因、という見方もできるだろう。

それでも――マイペースながら攻撃マインドを貫いている遠藤が輝くからこそ、彼が所属するチームは攻撃的で面白いという側面がある。それは西野朗監督が率いた頃のガンバ大阪、そして2011年アジア杯を制したザックジャパンが証明している。

<名言5>

まだまだできる。プレーで違いを見せられる自信はある。

(遠藤保仁/NumberWeb 2020年11月7日配信)

https://number.bunshun.jp/articles/-/845737

◇解説◇

2020シーズンのJリーグで衝撃的なニュースとして報じられたのは、遠藤のジュビロ移籍だった。

ガンバでの偉大なキャリアで忘れがちだが、遠藤はこれまで横浜フリューゲルス、京都サンガにも所属経験がある。そこで地道にプレー機会を得たからこそステップアップしたわけだし、“まだやれる”と思うならば別のクラブにチャンスを求めるのはプロ選手として当然だろう。

実際、その年J2で苦しんでいたジュビロは即座に“ヤット効果”を実感することになる。加入後18試合中15試合に先発出場し、チームはこの期間わずか3敗。加入直前まで13位と低迷していた磐田は、最終的に6位まで上昇したのだ。「ここまでアシストや勝点で貢献してくれるとは正直驚きもある」とのチーム関係者の声も大げさではないだろう。

「若手とベテランが一緒になって良いものを作り上げながら、自分のサッカー人生に新たなページを加えたい」

遠藤はこのようにも語っていた。今季は同じ黄金世代の稲本潤一が所属するSC相模原がJ2昇格するなど、見どころは多い。“サックスブルーのヤット”がどんな妙技を見せてくれるのか、ぜひとも注目したい。

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