「アジア最強」に挑むガンバの勝機。 宇佐美“以外”の選手の攻撃力が鍵。Number Web9月30日(水)10時30分配信

30日、ACL準決勝1stレグでガンバ大阪は敵地で「アジア最強」と称される広州恒大と激突する。

広州恒大は、中国でオンラインマーケットなどを運営するアリババグループから巨額な投資資金を獲得。280億円もの潤沢な資金で世界の著名選手を獲得し、アジアでレアル・マドリーのような王国を築こうとしているリッチなクラブだ。

実際、現在は元ブラジル代表監督のフェリペ監督が指揮を執り、選手もブラジル代表のパウリーニョを移籍金19億円で獲得し、同じくブラジル代表の ロビーニョも手に入れた。他にもリカルド・グラール、エウケソンらのブラジル人がおり、中国の選手も15人以上が現在の中国代表だ。

天井知らずの補強もあって、チーム総力ではガンバを上回る非常にやっかいな相手である。その相手に初戦アウェイで、ドロー以上の結果が求められるのだから、ガンバにとってはハードルがかなり高い。

「守備から入る」で勝ち始めたガンバ。

その広州恒大に、ガンバ大阪はどう立ち向かえばいいのだろうか。

ガンバは、2ndステージに入ってから失点が増えていたが、「守備から入る」と意志統一をしてから勝てるようになった。まずはそれを広州恒大戦で も継続していけばいい。おそらく相手は準々決勝の柏戦のように、前から激しいプレスをかけてパス攻撃を遮断してくるだろうが、球際で負けないようにファイ トし、鋭いカウンターをちらつかせて戦っていれば、いずれ相手は体力を消耗して疲れてくる。そうなればボールを保持できる時間が長くなるだろうし、パト リックと宇佐美がゴールに迫るシーンが増えてくるだろう。それまで、まずは失点せずに耐えることだ。

だが、先に失点するとダメージは大きい。

準々決勝のホームでの広州恒大は、リードしている時はロングボールを前線に蹴ってセーフティな戦い方を取りつつ、柏にボールを持たせてカウンター を狙っていた。それを徹底されると、点を取るのが非常に難しくなる。それゆえガンバは、絶対に先に失点しないことが試合を有利に運ぶ前提条件になる。

パウリーニョを自由にさせない等々、個別の約束事はあるが、前線からチーム全体でしっかりと守備をして相手の良さを消しながら、いかにしぶとく戦っていけるか。それに徹することができるかどうかが初戦のポイントになるだろう。

宇佐美の献身と、セットプレーが鍵。

もちろん組織的に守っていても、スーパーゴールで得点を奪われるかもしれない。その時はリスクを負って点を取りに行かなければならないが、実はガンバは攻撃に若干の不安を抱えている。

今野泰幸は言う。

「今の攻撃は正直、パトリック頼み。パトの前への推進力で相手のDFラインを押し下げて、(倉田)秋や阿部ちゃんが絡んでいい攻撃ができているけ ど、そこにサイドバックが絡んでという分厚い攻撃ができていない。(宇佐美)貴史が戻ってくるのは大きいけど、マークが厳しくなるだろうし、そういう時に 他の選手がゴールを狙い、しかも恐がらずにいかに全体を押し上げていけるか。難しいけど、リスクを負わないと点は取れないんで」

宇佐美が戻ってくる分得点のチャンスは増えるが、当然マークもきつくなる。ただ、やり方はある。全北現代戦での2ndレグで相手が倉田にベタ付きしていたが、その時は倉田がうまいプレーを見せてくれた。

「自分にマークがついていたんで、あえてサイドに流れることでバイタルにスペースを作ることができた。そこにいろんな選手が入ってきてチャンスができていたんで、自分は汚れ役で消えてもいいという思いでやったのが逆にいい感じになった」(倉田)

宇佐美も、倉田のようにうまく味方を使うことができる。そうなると、点を取るためには2列目の選手の活躍が欠かせない。

他には、セットプレーがより大きなポイントになるだろう。柏はアウェイでの広州恒大戦でFKから先制点を奪った。中国選手が並ぶ最終ラインはボー ルウオッチャーになることが多く、人の動きについていけない。遠藤保仁が正確なクロスを入れれば、アウェイゴールを挙げる確率はかなり高くなるはずだ。

試合の最後をまとめる能力には不安も。

一方、不安なのは試合の終わらせ方である。準々決勝では、ロスタイムに米倉恒貴が劇的なゴールを挙げてホームで逆転勝ちをした。最後まで粘り強 く、勝つことを考えて戦ったがゆえの神様のプレゼントのようなゴールだったが、本来は2-1で勝たなければいけない試合だった。そのためにクローザーとし て金正也を投入し、ピッチの選手に改めて守り抜く意識を強調したが、警戒していたはずのセットプレーから失点し、苦しい状況に追い込まれた。

試合後、長谷川健太監督は「(守り抜くのは)難しい決断だった」と語っていたが、ガンバはそもそも守り切るスタイルのクラブではない。かといって 以前のような、相手を圧倒して攻め切る強さもない。そうであるならば、ボールを握れている状況なら攻めのポーズを取りつつそのまま終わらせた方がいい。変 に守備を意識してしまうと逆にバランスを崩しかねないのだ。

アウェイでヒールになりきれるか。

「リーベルプレートとも(スルガ銀行杯で)いい試合ができていたし、強いところとやるのはむしろ楽しみ。それに俺らはベスト4が目標じゃない。全北現代との試合をムダにしないように、次はアウェイだけど勝ちにいくよ」

遠藤は、自信満々にそう言った。

敵地での初戦、長谷川監督は準々決勝での退席処分によりベンチに入れない。とはいえ、自らの戦術眼を活かして金を前に止まらせ、逆転勝ちでチームをベスト4進出に導いた遠藤がいれば、少なくともピッチ上の問題は解決できる。

また、阿部浩之、倉田ら2列目の選手がJリーグで点を取り始めて、調子が上がってきているのも頼もしい。26日のJリーグでは3連敗中だった柏に勝ち、勢いに乗っている。

敵地でドロー狙いなどガンバの選手は考えていないだろう。アウェイで完全なヒールとなって、一泡吹かしてほしい。

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