【セルジオ越後が斬る】“ボロボロ”のガンバに勝っただけで、これでアントラーズを「強い」と錯覚してはいけない SOCCER DIGEST Web 10月31日(土)18時58分配信

一番頑張っているクラブが、疲弊して、結果を逃す…。

 史上最多となる6度目の優勝を目指すアントラーズか、連覇を狙うガンバか。注目のカードとなった今年のナビスコカップ決勝は、アントラーズに軍配が上がった。

0-0で折り返した後半、アントラーズはセットプレーとカウンターから3ゴールを奪取。守備も安定していてガンバの反撃を許さず、まさに盤石の強さを見せての完勝劇だったね。

試合全体を振り返っても、アントラーズが圧倒したゲームだった。シュート数は24本のアントラーズに対し、ガンバは5本。ガンバは前半こそなんとか耐えたけど、後半は息切れしてしまった感じだ。

両チームの実力を考えれば、ここまで差がつくような対戦ではなかった。にもかかわらず、一方的な展開になったのは、コンディションの差が大きかったんじゃないかな。ガンバはここ最近の過密スケジュールの影響が出てしまったと言わざるを得ないよね。

ガンバは今回の決勝だけでなく、ACLの準決勝第2戦ではスコアレスドローでファイナル進出を逃すなど、いろいろと重要な試合をこなさなければいけないなかで、大事なところで勝ちを逃している。

ここに来て、ガンバはボロボロになっている印象を受けるよ。リーグではチャンピオンシップを狙える位置にいて、ACLでは日本勢で唯一の4強入りを果た し、そしてナビスコカップでは決勝に進出。宇佐美、東口、丹羽、米倉と、代表に選ばれる選手も少なくない。今季、一番頑張っていると言ってもいいクラブ が、疲弊して、結果を逃してしまう。

ただ、スケジュールの影響が出ているのは間違いないけど、一方でタイトな連戦を乗り切るだけのキャスティングをできなかったとも言えるんだ。ある意味、ガンバはチーム編成を見直す時期に来ていると言えるかもしれないね。

通算17冠目は“慰め”のタイトルだね。

 話は少し逸れるけど、ガンバは新スタジアムが完成して、新たな一歩を踏み出すわけだ。となれば外国籍選手の質も含めて、それに見合ったチーム作りをしていかなければいけない。ハードは立派だけど、ソフトが見劣りするようでは、本末転倒だ。

素晴らしいスタジアムを手にすれば、こんなに強くなれるんだぞ、というのを示さなければいけないと思う。そうなってくれば、他のクラブも刺激を受けて、Jリーグも良い方向に進んでいく気がするよ。

勝ったアントラーズは、ナビスコカップ優勝は3年ぶりで、これで通算“17冠目”を達成した。今季は、リーグでは年間順位で中位に甘んじ、セカンドス テージ優勝の可能性も決して高くはない。ACLはグループステージで敗退し、天皇杯でもすでに負けている。そんなアントラーズにとっては、“慰め”になる タイトルではあったと思うよ。

大会を制したのは紛れもない事実だけど、そもそもナビスコカップ自体のブランド力が落ちている気もするよね。天皇杯では3回戦でJ2の水戸に勝てなかっ たチームが頂点に立った大会だし、決勝以外はスタジアムが埋まることはまずない。常に強い関心が注がれているわけでもないんだ。長くサポートしてくれてい るスポンサー企業に申し訳ないよ。

たしかにアントラーズは優勝した。でもそれをもって、他のコンペティションでは不甲斐ない戦いを見せるチームを「強い」とするのは、錯覚なんじゃないかな。そもそも、リーグではガンバ相手にホームでもアウェーでも負けているわけだから。

一時期、ナビスコカップを制したチームが翌年にはJ2に降格するというジンクスがあったけど、そうならないようにしたいね。再び、アントラーズを“常勝軍団”と呼ぶのは、リーグで結果を残してからでも遅くないんじゃないかな。

タイトルが懸かる国際大会をより意義のあるものに。

 また、ナビスコカップで優勝すれば、南米のクラブとタイトルを争えるスルガ銀行チャンピオンシップに出場できる。それ自体は悪いことではないけど、この大会がいつも日本で開催されていることには、少なからず違和感を覚えるよ。

せめて日本と南米の交互で開催しても良いんじゃないかな。もちろん、南米で試合をするとなれば、問題が生じるかもしれないのは理解している。でも、例えばアルゼンチンの地で真剣勝負ができれば、クラブにとっても選手にとっても、強化につながるのは間違いない。

タイトルが懸かった国際大会は、貴重な経験の場だ。より意義のあるものにしてほしいよね。

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