【ナビスコカップ決勝】30分に起きた「西野→岩下」のCB“ドタバタ”交代劇。長谷川監督と岩下が舞台裏を明かす SOCCER DIGEST Web 10月31日(土)21時50分配信

岩下投入を決断したひとつの要因は“レフェリング”。

 G大阪の長谷川監督が交代カードを切ったのは、早々の30分。大一番に起用したCBの西野に代わり、ベンチスタートとなった岩下の投入を決断した。

岩下は右足首に負傷を抱えて本調子には遠く、コンディションは決して万全ではなかった。長谷川監督はそうした事情も考慮し、22歳の西野の先発を決めた。しかし、序盤から鹿島の猛攻に晒され、もはや失点は時間の問題。そう判断した指揮官は、岩下を強行出場させたのだ。

長谷川監督は、序盤の戦況についてこう語っている。

「球際で負けていた。今日のレフェリーが家本(政明)さんだったので、球際のファウルはあまり取らないのは分かっていたが、他のレフェリーなら(ファウルを)取るチャージでも意外と流されていて、そのへんが良い形で鹿島に転がってしまった」

そうしたレフェリングも影響を及ぼしたなか、岩下を投入した最大の狙いは“最終ラインの安定化”にあった。

「(チームが)受ける気持ちになり、球際の部分で前半はほとんど勝てなかった。最後の最後で守っていたが、(守備の)スライドでも混乱があった。(安定感 が)戻ればそのままの形でいかせようと思ったが、前半に1点取られたら難しいゲームになると思い、30分ぐらいを目途に、あまり落ち着いてこなかったら、 岩下を入れようかなと」

事実、開始2分に鹿島の遠藤康に強烈なシュートを浴びると、直後の5分、12分にも立て続けにピンチを招いた。エンジン全開の鹿島に面を食らった形となり、最終ラインはパニック状態に陥ったのだ。

長谷川監督は「別に西野が悪いというわけではなかった。メンバーを代えて、なんとかゼロで折り返して後半を向かえることができた」と語る。西野も奮闘していたとはいえ、守備組織を立て直す意味で、早々の交代は妥当だった。

岩下が受けた指示は「声を掛けながらバランス良く押し返せるようにしてくれ」。

 序盤から劣勢に立つG大阪の状況について、岩下は「とにかくバタバタしていたし、セカンドボールも拾われて、守備がハマっていなかった」と分析していた。時計の針が30分に差し掛かる直前、長谷川監督から呼ばれた岩下は、こう言われたという。

「最終ラインを落ち着かせて、声を掛けながらバランス良く押し返せるようにしてくれ」

そして投入されると、指揮官の狙いどおりに状況は“劣勢”から“一進一退”の攻防へと変わっていく。危ない場面も作られたが、「ピンチのシーンがたくさんあったなかで、ヒガシ(東口)が何度も止めて0-0で前半を折り返せた」(岩下)。

しかし60分、CKからファン・ソッコに先制点を献上。84分にも再びCKの流れから金崎に追加点を奪われ、86分にはカウンターからカイオにとどめを刺された。

「セットプレーで相手がフリーになるのは今までなかった。(鹿島が)上手くブロックを使っていたが、それでも(マークに)付かないといけなかった。マン ツーマンのなかで、単純に受け渡しのミスや責任を持った守備ができなかった。それは自分の責任でもある。弾き返せれば良かったけど……。CKが何本もあっ たので集中が切れてしまった」(岩下)

途中出場で指揮官に送り出され、後半にまさかの3失点。セットプレーも絡んだとはいえ、大きな責任を感じているのだろう。G大阪の闘将は「使ってもらったのに仕事ができなくて申し訳ない」と語り、その後も反省の言葉を繰り返した。

「ガンバらしいサッカーが全然できなかった」
「自分も含めて、基本的なことができていなかった」
「(決勝に来るまでに)たくさんの選手が出場してきたなかで、決勝でこういうゲームをしてしまった。(決勝に)出なかった選手にすごく申し訳ない」

G大阪が勝っていれば、あの交代は「起死回生の好手」として称えられていた。

 敗北という結果を受けて、30分の交代劇が失敗と考えるのは早計だ。90分間を通して考えれば“岩下効果”は少なからずあった。

交代によって最終ラインの安定感はそれまでよりも増したうえ、後方のパス回しもスムーズになった。長谷川監督や選手たちは、0-0で前半を折り返して後半に反撃というプランを描いていたはずだ。

前半は思惑どおりに展開し、岩下も指揮官の期待に応えるパフォーマンス披露。ただ、それでもG大阪の攻守は好調時の状態に遠かった。そのひと言に尽き る。仮にG大阪のコンディションが万全であれば、2連勝したリーグ戦のように巻き返せたかもしれない。そして、G大阪が勝っていれば、あの交代は「起死回生の好手」として称えられたに違いない。

大胆な一手は結果に結び付かなかったが、岩下は「悔しいで終わらないようにしたい」と力強く語る。その視線の先にあるのは、リーグと天皇杯の2冠。自責の念に駆られる青黒の闘将は捲土重来を期す。

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