天才の親には共通の特徴がある!? 宇佐美貴史の例にみる、最新子育て論。

京都府長岡京市の一般的なサラリーマン家庭。1992年に、3人兄弟の末っ子として生まれたのが宇佐美貴史である。

サッカーとはまるで縁がなかった両親がどうやって、17歳にしてガンバ大阪で公式戦デビューを果たし、日本代表としても活躍するスター選手を育てたのか――。

宇佐美貴史の両親、和彦さんと美紀さんを取材した作家・吉井妙子さんに取材時のお話をうかがった。

「男の子を3人も育てたのですから、食費をはじめ家計も本当にたいへんだったはずなんです。なのに、息子にのびのびサッカーをやらせたいということ で(後述するある理由から)わざわざ一軒家まで購入したりね。お父さんのお小遣いは毎月2万円、お母さんも洋服を買わないようにするなど自分たちのことは 切り詰めた生活だったようです。でも、その当時のことを苦痛だと感じさせるような言葉は取材中一切聞きませんでしたね。むしろそういう思い出を楽しそうに 語っていたのが印象的でした」

両親は共にとても明るい方だったという。

「長男の子育てで反省することがあったということでシリアスな話になったときも、オープンマインドに笑って話せる感じでした。何かあったとしても、それをマイナス思考で捉えるのではなく、常にプラス思考で考える持ち主に見えましたね」

トップアスリートの親に共通する特徴とは?

吉井さんは宇佐美のほかにも、大谷翔平や萩野公介、白井健三、宮原知子ら今を時めくトップアスリートの親の取材を重ねてきたが、彼らの家庭にはいくつか共通する子育てのルールがあったという。当然、宇佐美家にもその共通点は見られた。

「例えば、親が率先して子供にいろんなきっかけを作ってあげていること。宇佐美家の場合、両親ともに最初はサッカーに興味はなかったのに、たまたま スーパーの抽選で当たったガンバ大阪の試合のチケットがきっかけで、熱狂的なガンバサポーターになったというんですね。貴史くんは、幼い頃からお母さんに おんぶされて毎日のように練習場に行き、早朝から並んでスタジアムの最前列に陣取って試合を見てきたそうです。6歳年上になる長男が入っていたサッカーク ラブの練習に、2歳のころからついて行き、公園でひとりで何時間でもボールを蹴っていたというんですよ」

子供は褒められると自分から上手くなろうとする。

オムツが邪魔で、1歳になる前には自分からオムツを突き返していたというほど元気一杯だった貴史。長男についてサッカークラブに顔を出していた頃 はまだ団地住まいだったのだが、彼が四六時中ボールを蹴っていたので、両親は近所迷惑も考え、自宅でも常に練習ができるようにと一軒家の購入を考えたのだ という。

「それから“ほめ上手”、“否定語を使わない”、“常に考えさせる”といった共通点もありましたね。美紀さんは、『貴史から“おかん、見ててね”っ て言われた時は、たとえ台所仕事が忙しくても手を止めて、“上手いねえ”と褒めてやりました』と話していました。子供は褒められると自己肯定感が湧き、自 分からもっと上手くなろうとします。最近の親御さんの多くは、自分の子育てが周りにどう評価されているかばかりを気にして、あまりに“世間的に良い子”に 育てようとし過ぎです。主役は子供なのですから、その自主性を忘れてはいけません」

当時の宇佐美家が読んでいた、ある本とは?

そして吉井さんは、常に家族が同じ方向を見ていることも大事だという。

「宇佐美家の場合、家族のキーワードが“サッカー”であり“ガンバ”。趣味が同じなので、毎日の家庭内の話題にも事欠かない。そうすると、夫婦間の 会話も密だから、子供のちょっとした変化にも気づきやすくなります。貴史くんは一度、躾のために父親から殴られたことがあったのですが、それも反抗期に差 し掛かる時に良くある、ほんの僅かな悪い兆しを父親が見逃さなかったからです。厳しい躾こそあれ、そこに親子間の断絶は無いんですね」

実は宇佐美家は、吉井さんが15年前にイチローや松坂大輔らの両親に取材してまとめた『天才は親が作る』という本の大ファンで、当時から自分たち の子育ての答え合せとして熟読してくれていたという。今回の取材では、そのこともあって吉井さんが家族中から大歓迎を受けることになったという話も。

“イクメン”なんていう言葉は不要!?

スポーツだけでなく、幅広く執筆活動をされている吉井さんは、トップアスリートの親に子育ての秘訣を聞くことをライフワークとしてきた。

このたび、『天才は親が作る』の第2弾として、宇佐美貴史のほか、大谷翔平、石川佳純、萩野公介、宮原知子、白井健三ら12家族に取材した『天才を作る親たちのルール』という1冊の本が発売されることとなった。

前作から15年を経て変わっていたのは、父親と母親の子育てにかける比重だという。以前はどちらか一方の親に偏っている場合が多かったのだが、今 回はどの家庭も父母の比重が同等。“イクメン”などという言葉が不必要なほど、両親ともに自然に愛情を注いでいるのが印象的だったそうだ。

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