宇佐美はもう若手ではない――。代表で輝くために求められる“活かし活かされる”関係性

明日にシリア戦を控えた日本代表。アフガニスタン戦で はベンチを温めた宇佐美貴史が先発に予想されている。チーム最年少ではあるが世界基準で見れば若手ではない。チームの核になるような動きが求められてい る。鍵は左サイドでコンビを組む長友佑都との連携だ。

 2018年ロシアW杯アジア2次予選最終戦となる29日のシリア戦(埼玉)が明日に迫ってきた。すでに最終予選進出を決めている日本代表は9月から始まる決戦を見据え、選手たちが率先して食事会やミーティングを実施するなど、早くも臨戦モードに突入している。
「やはり1位で上に行かないといけないですし、ホームでやる試合なんで、代表が勝つためにプレーしたい」と24日のアフガニスタン戦(埼玉)で途中出場ながら躍動感を欠いた香川真司(ドルトムント)も気合を入れ直していた。
日本同様、最終予選進出を決めているシリアとは昨年10月に中立地・オマーンで対戦し、3-0で勝利しているが、後半10分に本田圭佑(ミラン)がPKで先制するまでは相当苦労した。底力がある相手だけに、最終予選前哨戦とも言っていい一戦だ。
「特に前半はハードなコンパクトなディフェンスで戦ってくる。その中でどう辛抱強く戦っていくかが大事になってくる」と香川も強調したように、前半の厳しい時間帯をどう乗り切るかが勝負の分かれ目になりそうだ。
アフガニスタン戦の前半もそうだったが、相手も立ち上がりは中央のスペースを確実に閉めてくる。となると、強引に中をこじ開けようとしても難しい。その事態を想定して、サイドを有効活用しながら攻めを組み立てるのが重要な攻略法の1つとなる。
「やはりサイドからの攻撃が1つキーになる。前の試合はなかなかクロスが合わなかった。引かれた相手、コンパクトに守られた相手に対してどう崩すかというのは、サイドからの攻撃の質が大事になる。そこを1人ひとりが意識して戦う必要がある」と香川も語気を強めていた。
そこで、改めてクローズアップされるのが、両サイドのタテ関係である。

鍵握る宇佐美と長友の関係性

 右での先発が有力視される本田と酒井高徳(HSV)は2015年アジアカップ(オーストラリア)など数多くの実戦を積み重ね、相互理解が深まっているか ら大丈夫だろうが、左のスタメン候補である宇佐美貴史(G大阪)と長友佑都(インテル)は過去に揃って先発した試合が昨年6月のイラク戦(横浜)しかな い。
この時は親善試合ということもあり、2人が高い位置を取りながらスペースを空け合うようないい連携も見られた。長友は「初めて同サイドでプレーするの で、試合の中でどうやったら彼が気持ちよくプレーできるのかを見ながらやっていたんですけど、でもホントに楽しそうにやれていた」と前向きに語ったが、や はり勝負のかかった公式戦となればスムーズに行くとは限らない。2人を含め、近い位置関係にいる選手たちと入念な意思疎通を図っていくことが肝要と言える。
宇佐美と長友の特徴を考えると、宇佐美はボールを持ったらドリブルで中に切れ込んでシュートかクロスを狙うのを得意とするが、外に動く場合は深い位置までえぐって折り返すようなプレーはほぼしない。
長友はそんな宇佐美のスタイルを頭に入れながら、外に回ってクロスを上げる形に多くトライするだろう。ただ、同じパターンを繰り返していると相手にも読まれやすいし、2人とも厳しいマークに遭ってボールを失うような場面も起こり得る。だからこそ、臨機応変にリズムを変化させたり、お互いがポジションをク ロスしたり、細かいパス交換で敵を欺くなど、大胆な試みを繰り返していくべきだ。
宇佐美も、周囲との「活かし活かされる関係」を最優先に考えながらプレーするつもりだという。
「状況にもよりますけど、自分が活かされるというよりは、先に近くにいる真司君やオカちゃん(岡崎慎司=レスター)、逆側にいる圭佑君を活かすことを考えてやりたい。自分を活かすことを当たり前にしてくれる選手たちなので。
もちろん、いい意味のエゴは持ちながらやりたいですけど、そういうエゴを持つためにも、まずは近めの選手たちに気持ちよくプレーしてもらえるかってことがすごく大事。その中で次は活かしてもらうって感じになっていくといい」と彼も話していた。

最年少だが若手ではない。崩しのイメージを掴めるか

 長友との関係もまさにそう。むしろ宇佐美の方が長友の推進力や突破力、クロスの精度、シュート力を生かせるようなポジショニングを心がければ、左サイドは自然と活性化していくはず。
外が有機的に機能すれば、相手も引き出され、中のスペースが空き、香川や本田、岡崎がフリーになれる場面も増えてくる。ドローに終わった昨年6月のシンガポール戦(埼玉)のように、宇佐美を含めた4人が中へ中へと行きすぎて重なるのが最悪のシナリオだ。
その失敗例を今一度、頭に叩き込み、長友といい関係を築き上げてサイドから崩すようなイメージを、宇佐美にはしっかりと思い描き、実際にピッチ上で実践してもらいたい。
今回の日本代表では宇佐美と昌子源(鹿島)がチーム最年少。昌子は「世界では僕らと同じ歳のポグバ(ユベントス)やネイマール(バルセロナ)、ゲッツェ(バイエルン)などが活躍している。
そういう人たちが出てチームや国を引っ張っているんで、日本もそうならないと。貴史や航(遠藤=浦和)、岳(柴崎=鹿島)もそういう思いは持っている。そのためにも結果を出さないといけない」と強調していた。
その代表格である宇佐美には、チームの軸にふさわしい明確な仕事が求められているのは言うまでもない。最年少とはいえ世界基準で見れば若手ではない。チームの核にならなければならない。

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