もう一度、世界最高峰の舞台へ… “絶頂期”のマンUからG大阪の遠藤が得たもの

36歳の司令塔を今も駆り立てる、2008年FIFAクラブワールドカップの記憶

 世界ナンバーワンクラブに真剣勝負を挑んだ夜のことを、ガンバ大阪の元日本代表MF遠藤保仁は今でもはっきりと覚えていた。

2008年のFIFAクラブワールドカップ。この年のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)で初優勝を果たし、アジア王者としてこの大会に挑んだG大阪は、初戦となった準々決勝でアデレード・ユナイテッドを1-0で破り、準決勝に進出。12月18日、横浜国際総合競技場で欧州王者マンチェスター・ユナイテッドと対戦した。「力の差を痛感させられた大会でした。クラブレベルとして、世界のトップとやる経験はなかったので、個人としてもチームとしても、とても大きな大会だったことは間違いないですね」と、遠藤は8年前のビッグマッチを懐かしそうに振り返り始めた。

当時のユナイテッドは名将アレックス・ファーガソン監督の下、ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド、イングランド代表MFウェイン・ルーニー、同DFリオ・ファーディナンドら各ポジションに世界屈指のプレーヤーを揃え、06-07シーズンからプレミアリーグ3連覇を達成するなど、世界にその名を轟かせていた。

一方のG大阪も西野朗監督の下、司令塔の遠藤を中心とした攻撃的なパスサッカーでアジアの頂点に立つなど、絶頂期を迎えていた。しかし試合が始まると、両者の差は歴然だった。

「衝撃はそれほど感じなかったけど…」

 セットプレーから前半28分にDFネマニャ・ヴィディッチ、同アディショナルタイムにはロナウドに決められ、0-2でハーフタイムに突入。G大阪は後半29分にFW山崎雅人(現金沢)が1点を返したが、これがユナイテッドのプライドに火をつけて、その後の5分間で3失点を喫した。

同40分には遠藤のPK、アディショナルタイムにはMF橋本英郎(現長野)が決めて2点差まで迫ったが、「4点差になってから、点を取ったというだけで……」と遠藤も語ったように、3-5というスコア以上に力の差を見せつけられた。

「やっぱり差を感じさせられたという印象ですね。僕は日本代表でもいろいろな選手と試合をしているので、衝撃という意味ではそんなになかったですね。でも当時のマンチェスター・ユナイテッドには、各国代表の主力クラスがいた。日本代表は日本のトップが集まるけど、クラブはそうじゃない。代表でも難しさはあるけど、クラブチームの方が個人個人の差は出やすかったのかな。経験値も違いますしね」

ボールポゼッションでは51%、シュート数も23対18とG大阪が上回ったことで善戦と讃えられたが、ゴール前での質や、攻撃のスイッチを入れた際の破壊力は遠く及ばず。敵将ファーガソン監督も、巧みにユナイテッド守備陣の隙をついた遠藤のプレーを高く評価していたが、チーム力の差は歴然だった。

そんな試合で、遠藤が最も印象に残っている選手が、当時スコットランド代表のMFダレン・フレッチャーだという。

攻守を支える“黒子役”のレベルの高さを痛感

「ロナウドとかはもちろん素晴らしい選手なんですけど、テレビで観ている通りという感じでした。個人的にはフレッチャーが、すごく良い選手だなと印象に残っています。アグレッシブだったし、ボールの取り方や間合いの詰め方が良かった。すごく堅実な選手だな、と。相手に隙を見せないポジショニングもそう。実際にやってみて、凄い選手だと思いました。対戦しないと、良さが分かりづらい選手というか、ずっとテレビで観ている時には追いかけるような選手ではないので」

ビッグネームを集めた選手たちのなかでは決して目立った存在ではなかったものの、中盤で攻守に走り回ってチームを支えた“黒子役”の、レベルの高さに驚いたという。

結局、この大会でユナイテッドは優勝を果たし、世界一の称号を手にした。一方、3位決定戦に回ったG大阪は、メキシコのパチューカに1-0と勝利して3位に輝いた。

「より高いレベルを経験したことで、また(FIFAクラブワールドカップに)出たい、って思うことができる。ウチのクラブはACLで勝って、FIFAクラブワールドカップにまた出たいと、選手だけじゃなくクラブの人たちみんなが思っている。だから毎年、アジアのチャンピオンになりたいと強く思うことができる。1試合でも多く、世界レベルの試合はやりたいですよね」

もう一度、あの舞台へ――。その思いが、36歳を迎えた司令塔を今も勝利へと駆り立てている。

【Alibaba E-Auto プレゼンツ FIFAクラブワールドカップ2016開催スケジュール】
■12/08(木)
[M1]開幕戦 Jリーグ王者 vs オークランド・シティーFC 横浜国際総合競技場(19:30)
■12/11(日)
[M2]準々決勝 AFCチャンピオンクラブ vs クラブ・アメリカ(メキシコ) 市立吹田スタジアム(16:00)
[M3]準々決勝 マメロディ・サンダウンズ(南アフリカ) vs M1勝者  市立吹田スタジアム(19:30)
■12/14(水)
[M4]5位決定戦 M2敗者 vs M3敗者  市立吹田スタジアム(16:30)
[M5]準決勝 アトレティコ・ナシオナル(コロンビア) vs M3勝者 市立吹田スタジアム(19:30)
■12/15(木)
[M6]準決勝 M2勝者 vs レアル・マドリード(スペイン)横浜国際総合競技場(19:30)
■12/18(日)
[M7]3位決定戦 M6敗者 vs M5敗者 横浜国際総合競技場(16:00)
[M8]決勝 M6勝者 vs M5勝者 横浜国際総合競技場(19:30)

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