G大阪、新スタ元年は悔しい船出に。アデミウソン、井手口ら台頭も無冠でシーズン終える【2016年Jリーグ通信簿】

今シーズンのJ1も全日程が終了した。この1年を振り返り、各クラブはどのようなシーズンを送ったのだろうか。今回は、年間勝ち点4位のガンバ大阪を振り返る。

新スタジアムが完成、アデミウソンも加入

 記念すべき新スタジアム元年は悔しさばかりが残る1年となった。

昨季は歴代最多の公式戦60試合という過密日程をくぐり抜けて天皇杯優勝、ACLベスト4、ヤマザキナビスコ杯準優勝という実績を残した。

今季開幕前にはアデミウソンと藤本淳吾を獲得し、大卒No.1ルーキー呉屋大翔など新加入の若手も充実。主力級の退団はなく、満を持してリーグタイトル獲得を目指した。

補強の目玉はやはりアデミウソンだろう。U-21ブラジル代表歴を持つアタッカーは来日1年目の昨季、横浜FMで8得点を挙げて才能の片鱗を垣間見せた。個人技を駆使した単独突破は圧巻の破壊力で、JリーグのDFたちを震え上がらせていた。

藤本淳吾も清水エスパルス時代に長谷川健太監督の指導を受けた経験があり、チームへの順応はスムーズに進むかと思われていた。しかし、現実は厳しかった。

井手口らが台頭するも…タイトルに手が届かず

 アデミウソンは宇佐美貴史やパトリックとの連携確立に苦しみ、藤本も一時はJ3のU-23チームが主戦場になるなど主力の座を脅かせない。

ACLを最優先にした影響もあり、Jリーグの1stステージは波に乗り切れなかった。1トップと2トップを併用しながら打開を図っても、宇佐美やパトリックも本来の力を発揮できず、停滞感はチーム全体に波及していった。

結局1stステージは7勝3分7敗で6位。優勝はおろかチャンピオンシップ出場権すら危ぶまれる状況だった。しかし、夏に宇佐美がアウクスブルクへ移籍してから風向きが変わり始める。

長谷川監督はシステムを4-2-3-1に固定し、アデミウソンを1トップに据える。すると前線で自由を得たブラジル人アタッカーが躍動。ゴールだけでなく崩しの局面で違いを生んだ。長期離脱から復帰した長沢駿も途中出場がメインながら自己最多の9ゴールを挙げ、大事な場面で輝く勝負強さを見せた。

そして何と言っても井手口陽介の台頭は見逃せない。もともと評価の高かった守備力が研ぎ澄まされただけでなく、攻撃面にも磨きがかかって1年で一気に中盤の柱へと成長を遂げた。年上の選手たちに混じってリオデジャネイロ五輪出場を果たし、A代表からも初招集を受けるなど飛躍の1年となった。

2ndステージ4位につけたものの、最終的には年間勝ち点が1ポイント足りずにチャンピオンシップ出場権獲得を逃した。天皇杯でもベスト8で横浜F・マリノスに敗れ、来年のACL出場権を獲得できず。新スタジアムで臨んだ最初の1年は悔しさばかりが残ってしまった。

得点数は過去9年間で最低。王座奪還へ選手層の拡充を

 天皇杯があった影響で来季に向けた新加入選手の動きはほとんど発表されていない。すでに公表されている高卒ルーキーの4人は全員攻撃的な選手だが、即戦力ではないだろう。

サンパウロから保有権を買い取ったアデミウソンは来季も残留する一方、大森晃太郎は神戸の移籍が決定した。今季のリーグ戦では25試合に出場し、サイドで存在感を発揮していただけに、代役の確保は必要になるだろう。

阿部浩之も他クラブから狙われているという情報があるものの、その動向はいまだ不明のままだ。パトリックが抜けた最前線の得点力にも多少の不安はあるが、来季のタイトル争いに向けて必要なのは選手層の拡充だろう。U-23チームが主戦場の若手有望株たちには、J1のレベルでチームの質を落とさずプレーできる保証がない。

現在の主力たちと競争できる即戦力級の選手を数人獲得し、各ポジションで競争を喚起しながらタイトル獲得を目指していくことが理想と言える。特に過去9年間で最も少なかった得点数を伸ばすため、攻撃陣に新たな選手を加えたい。

診断

補強診断 C

アデミウソンの獲得はチームに大きなプラスをもたらした。一方、すでに完成されていた組織に突出した個をはめ込むのは困難を極めた。1stステージで精彩を欠いた宇佐美の退団が巻き返しの要因のひとつになった。

大卒No.1ストライカーと言われていた呉屋は成長の跡を見せたが、フィニッシュの精度不足に苦しみ大事な場面で結果を残すことができず。指揮官の愛弟子と期待された藤本も主力の座を脅かすまでではなかった。

総合力診断 B

加齢によるものか例年ほどの迫力がなかった遠藤保仁の横では井手口が台頭し、アデミウソンや長沢が前線を引っ張った。ここ数年チームの形に大きな変化がなかったG大阪にとって新たな一歩となっただろう。

それでもタイトル獲得を逃したのは事実。ACL優先の戦いを選んだ指揮官の選択か、宇佐美やパトリックの不調か…。原因は様々考えられるが、苦しい時期を乗り越える爆発力に欠けていた。新スタジアム初年度だったにもかかわらずホームではアウェイよりも少ない8勝しか挙げられなかった。

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