【G大阪総括&展望】シュート数最多が途中退団の宇佐美。「獰猛さ」を取り戻したい

シーズン終盤に負傷により長期離脱した阿部と並んでシュート40本。

 今季のG大阪の通算42失点は上位6チームで最も多かった。また通算53ゴールは鹿島と並ぶものの、チームとしては過去8年間で最も少なかった(08年の46得点以来)。

個人データで、驚かされるのがシュート数のチーム内ランキングだ。1位が第1ステージのあとアウクスブルクに移籍した宇佐美、それにシーズン終盤に負傷により長期離脱した阿部の40本だった。

パトリックが不調により途中からスタメンから外された一方、宇佐美は本調子とはいかないまでも5得点・5アシストとふた桁ゴールに絡み、第2ステージでブレイクした長沢は自己最多の9ゴールを奪取。序盤戦はなかなかフィットできずにいたアデミウソンも第2ステージから欠かせぬ存在になるなど、前線の軸が入れ替わった。

逆に言えば、攻撃の柱が確立できなかった。結果的には、昨季決めた宇佐美の19点、パトリックの12点を埋め切れなかったことになる。彼らを超えるぐらいのタレントが出てきてほしかったし、何よりパトリックの「12点→2点」という得点数の落ち込みは痛かった。

加えて、宇佐美のクロス数は、チーム2位の60本だった(1位は藤春の60本、3位は米倉の56本)。宇佐美のゴールに向かう姿勢そのものが、チーム全体を動かす「原動力」になっていたことが分かる。彼が仕掛けることで敵陣に綻びが生じて、試合が動く――。そういった“動き”が減っていった。

もちろん、とはいえ成績は第1ステージよりも第2ステージのほうが良い。それはシーズン序盤、ACLを最優先しながらグループステージで敗れ、また主力に負傷離脱や調子を落とす選手が相次ぎ、リーグ戦でも勢いを付けられず……と悪循環に陥ったことが理由に挙げられるだろう。

第2ステージの収穫としては、アデミウソンの生かし方を、チームとして掴めてきたことが挙げられる。前線で自由を得たブラジル人アタッカーは、チーム内のドリブル数チーム1位を記録(81回、2位は倉田の77回、3位は宇佐美の67回)。チーム最多タイの9ゴールを決めて、来季のレンタル移籍から完全移籍への切り替えも発表された。

来季に向けて、小林、ファン・ウイジョの獲得に失敗。補強が進まず…。

 来季はアデミウソン中心のチーム作りが進むだろう。彼の良さをどのようにさらに引き出すのか、一方で、彼に周囲の良さをどのように引き出させるか。そのバランスがポイントになりそうだ。

それによってアデミウソンのプレーがこじんまりしたり、周囲がアデミウソンに気持ちよくプレーできるように気を遣いすぎたりしては本末転倒。やはりG大阪らしいダイナミックさをまずは大切にしたい。

好調時のG大阪はボールを奪った瞬間、チーム全体に「攻める」というスイッチが入り、サイドから、そして中央からも、誰もが文字通り矢も楯もたまらず攻めようとする意欲がスタンドにも伝わってくる。あのうねりのようなアタックを、より多く展開できれば理想的と言える。

シーズン終盤だけでも、土壇場で3-3の引き分けに持ち込んだ第2ステージのFC東京戦、PK戦の末に敗れたものの120分はドローで終えたルヴァンカップ決勝(1[4PK5]1)、そしてリーグ最終戦の川崎を打ち破った一戦(3-2)など、見応えのある試合は多かった。

ただ……大切な一戦で勝ち切れなかったのも事実。その結果が、年間3位の鹿島に勝点1届かず、チャンピオンシップ出場を逃した小さいようで、大きな「差」につながった。

来季に向けて、大森の神戸への移籍がこのほど決定した。さらに、阿部、岩下、パトリック(負傷によりブラジルへ帰国中)、米倉らに退団の噂が出ている。

一方、川崎の小林に破格のオファーを出したものの獲得に失敗。城南FCの韓国代表FWファン・ウィジョも「実質、獲得合意」と韓国紙でも報じられていたが、現監督が放出を否定していて、破断に終わったと言われる。千葉のドリブラーの井出、ボランチとCBをこなせる横浜のファビオの獲得が濃厚とされる。さらに大宮の泉澤、名古屋の田口にもオファーを出している。

特に前線は、あまり補強が上手くいっていない印象ではある。それは逆に、2年目の堂安、初瀬、市丸らにとってチャンスとも言える。さらにボランチの井手口には、チームを牽引するぐらいの活躍も期待される。

堂安、初瀬、市丸ら若手にとってはチャンスか。

 12月24日の天皇杯準々決勝・横浜戦で敗れ、今シーズンの全日程が終わった。3年連続の主要タイトル獲得はならなかった。

そして来季は大幅に陣容が変わりそうである。ただ、長谷川監督のもとで貫かれてきた、G大阪らしい「獰猛さ」はやはり何より大切にしたい。

今季は試行錯誤するなかで、時に丁寧に、ある意味上品にプレーしようとしていた感じも受けた。そのあたりでG大阪らしさがやや薄まり、シュート数のデータ(ランキング)にも表われていたのかもしれない。

シュートを打つ――。そのシンプルでありながら、サッカーで最も大切な部分を、もう一歩追求するところから、G大阪の再チャレンジが始まるはずだ。

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