久保、堂安、小川以外も逸材揃い!U-20代表候補の持ち味、一挙紹介。

 本番まであと2カ月を切り、ついに対戦する相手が決まった。

5大会ぶり、実に10年ぶりの出場となったU-20W杯。グループリーグの相手は南米予選(南米ユース選手権)覇者のウルグアイ、ヨーロッパ予選(UEFA U-19ヨーロッパ選手権)2位のイタリア、アフリカ予選(アフリカユース選手権)4位の南アフリカと強豪ひしめく“死のグループ”に若き日本代表は身を置くことになった。

現在、チームは本番に向けて世界仕様にするために、ドイツ遠征(3月19日~29日)を行い、強化に励んでいる。

「本番まで遠征が少ない分、これまで積み上げて来たものに新しいものを加えながら、チーム力を高めて行きたい。メンバー選考ももう時間も僅かですし、固まっていない訳ではありません」と内山篤監督が語ったように、このドイツ遠征のメンバーを中心に、最終メンバーを絞り込んでいくことになる。

そこで、このメンバーを軸にU-20日本代表の陣容を紐解いていきたいと思う。

選手権優勝GK廣末がメンバー漏れするほどの豪華さ。

 まずGKはアジア最終予選メンバーから廣末陸が漏れ、同じFC東京の波多野豪、早大の小島亨介、ロリアンでプレーする山口瑠伊(るい)、広島ユースで“ユース年代No.1GK”の称号を持つ大迫敬介が選ばれた。

このチームで守護神として君臨してきた小島、197cmの世代随一の長身GKである波多野、フランスでプレーしていて国際経験豊富な山口。185cmの体格にパワーを兼備する大迫と、将来のA代表守護神候補が多くそろっている。その中で個人的には大迫の躍動に期待したい。

DFラインはJリーグで経験を積んでいる選手が多い。その中で、守備の軸になるのが中山雄太(柏)と冨安健洋(福岡)だ。ともに昨季から所属チームでレギュラーを掴み、アジア最終予選でも安定したコンビネーションを見せて無失点優勝に大きく貢献をした。今季もレギュラーの座をがっちりと掴み続けており、不動のコンビであることは間違いない。

東京合宿では中山が不在だったが、FC東京とのトレーニングマッチでは、湘南で開幕スタメンをつかみレギュラーに定着した杉岡大暉がアピールした。冨安とCBコンビを組んで、無失点で切り抜けた。なおドイツ遠征も中山が負傷離脱し、杉岡が追加招集となっている。

湘南・杉岡の台頭によって、富安のボランチ起用も。

 杉岡の台頭はチームとしても大きなプラスだ。もし杉岡が最終メンバーに食い込めれば、冨安をボランチで起用することも可能になる。そのほかにもCBには左利きで190cmの高さを誇る町田浩樹(鹿島)、空中戦の強さとキック精度が持ち味の板倉滉(川崎)もプロ2年目となり、フィジカル能力や落ち着きは増した。

だが、対戦相手のウルグアイ、南アフリカはスピードを持ったアタッカーがいるとの情報があるだけに、高さだけでなく、スピードにも対応できる人選を期待したい。

サイドバックは初瀬亮(G大阪)、舩木翔(C大阪)、藤谷壮(神戸)の3人が定位置争いを繰り広げており、この構図は本番まで続きそうだ。

激戦区ボランチ、原のコンビ候補は神谷、坂井、市丸。

 最激戦区はボランチで、その中心が原輝綺だ。アルビレックス新潟では高卒ルーキーでクラブ史上初となる開幕スタメンを張り、代えの利かない存在として、早くも不動の地位を築いている。

危機察知能力に磨きがかかり、出足の鋭いインターセプト、カバーリング、そしてボールを奪ってからの縦パスなど、攻守のバランスを支える存在として、内山監督も重宝する存在だ。

原のコンビ候補は3人が争っている。アジア最終予選で負傷離脱したものの、それ以降フィジカル面で成長したMF神谷優太(湘南)、展開力とキープ力に秀でた坂井大将(大分)、視野が広く、正確なミドルパスが持ち味の市丸瑞希(G大阪)だ。前述したように冨安だけでなく、中山もボランチとしてプレー出来るだけに、ポジション争いはさらに激化しそうだ。

サイドハーフはドリブラーの遠藤渓太(横浜FM)、左足と前への推進力に秀でた堂安律(G大阪)、技巧派の三好康児(川崎)、多彩なパスとスペースへの動きを見せる森島司(広島)と、いつもの顔ぶれが揃った。ここに東京合宿で好アピールを見せたMF針谷岳晃(磐田)も食い込んでくる。

サプライズ招集された、旗手怜央という大学生。

 最前線に目を向けてみると、ドイツ遠征メンバーには一人だけ、初招集の選手が入った。

それは、順天堂大学のFW旗手怜央。世間的には無名の選手かもしれないが、彼の代表入りを期待する声は非常に多かった。

旗手の持ち味は驚異的な身体能力から繰り出されるドリブルシュート。ピッチがぬかるんでいようがスリッピーだろうが関係なく、低い重心からスピードに乗ったドリブルで守備陣を切り裂き、左右両足から強烈なパンチ力のシュートを放てる。

実は、そのポテンシャルの高さは静岡学園時代から光っていた。順大への入学後、いきなり活躍し始めたように見えたため、プロのスカウトが動き出すのが遅れてしまったという逸話を持つ。

順大では1年からレギュラーを掴み、ゴールを量産。「J1でも即戦力」と関係者を唸らせるほどのアタッカーに成長した。それゆえに代表待望論もあったが、守備面での不安もあり、内山監督はここまで彼を選出しなかった。それだけにこの本番直前での選出は多少の驚きもあったが、納得の判断と言えるだろう。

小川、岩崎、久保という3枚看板がいるだけに……。

 FWには絶対的エースの小川航基(磐田)、前線でのかき回し役となる岩崎悠人(京都)、最大の注目の的となっている久保建英(FC東京U-18)という、絶対に外せない3枚のアタッカーがいる。もし本番のFWの枠が4枚とするならば、旗手か高木彰人(G大阪)のどちらかが入ることになるだけに、ドイツ遠征でこの2人がどこまでアピール出来るかがポイントとなる。

2トップの組み合わせを考えると、ファーストチョイスが小川と久保で、岩崎がサイドに回る可能性がある。小川と岩崎のコンビの質の高さはアジア最終予選で実証済み。だが、小川がこのメンバーの中で一番実戦経験が乏しく、思い切って久保と岩崎、旗手と岩崎を並べることも十分にある。この組み合わせも実際に見てみたい。

いずれにせよ、日本が入ったグループは、今大会でも一番厳しいグループだという事実は間違いない。ボランチの原は“対・強豪国”について、昨年12月のアルゼンチン遠征を持ち出してこう語っている。

「アルゼンチン遠征で、ヨーロッパ組がいなかったアルゼンチン代表にあれだけの力の差を感じて、あのチームが南米予選4位(U-20W杯の出場権は獲得)。“あれより強いチームがあるのか!? ”という感じだった。それくらいアルゼンチン代表は僕の中で衝撃的でした。プレースピードはもちろん、球際で全然勝てなかった。ボランチも足が速くて、それが一番衝撃だった。ボランチから一気にスピードアップをして来るし、対応が本当に難しかった」

アルゼンチン相手に感じた実力差を埋めるために。

 アルゼンチン遠征では、U-19アルゼンチン代表と2度対戦した。相手の前へのスピードと球際の激しさ、フィジカルの強さに戸惑い、2試合とも1-2で敗戦した。特に第2戦は小川のゴールで先制するも、再び相手の出足の鋭い守備と、スピードあるショートカウンターの前に試合をひっくり返させられるなど。世界の実力を痛感する試合となった。

世界基準を目の当たりにしたことで、彼らの中で一つの指標が出来た。ドイツ遠征ではU-20W杯に出場するU-20ドイツ代表との一戦も組まれている。アルゼンチンで感じた指標を再確認する重要な一戦となり、世界へのスイッチを完全に入れる一戦になりそうだ。

「対戦相手が決まった以上、もうやるしかない。まずはチームで安定して出続けることが重要。見る人は見てくれる大会。良いチャンスになると思うので、そこで安定したプレーを見せたいし、そうすれば今後のサッカー人生に関わって来る。ドイツ遠征で4試合あるので、そこでしっかりと試したい。もっと縦パスを入れたいし、自分の縦パスで攻撃のスイッチを入れたいと思います」(原)

決戦は5月に開幕する。過去4大会連続でアジア最終予選で敗れ続け、経験出来なかったU-20W杯は、間違いなく彼らにとって世界に通じる登竜門であり、ここで得た経験が必ず彼らの大きなベースとなって、将来のW杯や世界での活躍に繋がって行く。

これまで失われていた10年間の重みを感じながら、若き日本代表は日本のため、自分のために世界で躍動することを誓っている。

果たしてその権利を掴むのはどの選手か。今はそのサバイバルレースの渦中にある。

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