遠藤保仁に聞く、ガンバ優勝への条件。 「ここまでは悪くないと思う」

J1第16節、ともに攻撃的なチームであるガンバ大阪と川崎フロンターレの一戦は、1-1のドローに終わった。

試合前、ガンバの遠藤保仁が語ったフロンターレ攻略は非常に明快だった。

「フロンターレは、(中村)憲剛、エドゥアルド・ネット、大島(僚太)の中盤がキーだけど、その3人を生かす(小林)悠や阿部(浩之)ちゃんとか、周囲の選手の動きもいい。主導権は握られるだろうけど、(こちらは)我慢して、ボールが入ったところに厳しくいく。(その結果)逆にこっちが(主導権を)握る時間を長くして、押し込める展開になれば、勝機は見えてくると思う」

試合が始まると、ガンバは遠藤の話したとおり、我慢するところは我慢して、フロンターレのキーとなる中盤の3人には、MFの倉田秋や井手口陽介、今野泰幸らが厳しくチェックにいった。だが、攻撃で中盤のひし形のバランスが崩れると、何度かカウンターを受けた。そして後半7分、フロンターレの中村に先制点を決められた。

その後、ガンバはFWアデミウソンとMF藤本淳吾を同時に投入。攻撃を活性化させ、後半23分にFW長沢駿がゴールを決めて、なんとか追いついた。

以降はそれぞれチャンスは作るが決められず、両者痛み分けに終わった。

これで、ガンバは16節を終えて8勝5分2敗、勝ち点29で暫定4位。シーズンはまだ半ばだが、リーグ優勝に向けてまずまずのポジションにつけている。

「ここまでは、悪くないと思う」

遠藤はそう言った。

「シーズンを半分終えた時点での目標の勝ち点は、30~35。それを考えると、負け数(2敗)が少ないのはいいけど、引き分けがちょっと多いね。秋に向けて優勝争いをするには、最低でも勝ち点70は必要になると思うんで、(今後は)引き分けを勝ち切るゲームにしていかないといけない。

昨年、年間勝ち点1位の浦和レッズは勝ち点74。そのくらい取れるのが理想だし、数字的にはそれくらい取れたらいいなと思う。ただ、サッカーは算数のように簡単にはいかないからね」

15試合を消化して、勝ち点29。シーズンの半分となる残り2試合で勝ち点を積み重ねれば、遠藤が言う目標には届くので、確かにその数字は決して悪くない。

ガンバが優勝した2014年シーズンは、前半戦が7勝3分7敗で勝ち点24だった。そこから、後半戦は12勝3分2敗の勝ち点39(トータル=19勝6分9敗、勝ち点63)と巻き返して優勝を果たした。今季のガンバは、数字的にはこのときの後半戦に近い勢いを前半戦から見せている。後半戦もこのペースでいければ、自然と頂点は見えてくるだろう。

では、勝ち点29の内容はどうなのか。

遠藤は、「勝ち点を取った、というより、拾った感じの試合が多かったかなと思う」と言う。

実際に今のガンバは、攻撃で相手を圧倒して勝ち点3を取るようなチームではない。相手にボールを支配される時間や試合が多く、以前のようにポゼッションで上回り、相手の戦意を喪失させるような試合運びはほとんど見られない。

ただ、第9節の横浜F・マリノス戦(1-0)や第15節のヴィッセル神戸戦(1-0)など、内容があまりよくない試合でも粘り強く戦って、勝ち点3を獲得した試合がいくつかある。それらが、遠藤の言う「勝ち点を拾った」試合になるのだろうが、優勝するためには、そういう勝ち点を得ることも重要だ。

それを可能にしているのが、守備の安定だ。

「センターバックが安定しているのが大きいね。(彼らの)セットプレーやクロスの対応がいいんで、昨年多かった失点がかなり減っている」(遠藤)

センターバックでコンビを組むのは、三浦弦太(清水エスパルス→)とファビオ(横浜F・マリノス→)。ともに今季、移籍加入したばかりだが、チームにもすっかり馴染んで攻守に力を発揮している。

1試合少ないものの、失点13はF・マリノスと並んでリーグ最少。優勝への条件とも言える、安定した守備が実現できていることは心強い限りだ。

一方で、フロンターレ戦同様、今季は1-1で終わった試合も多い。土壇場で追いついた開幕戦のヴァンフォーレ甲府戦のような試合もあるが、追加点を奪って勝ち切るような戦いができていない。それが、引き分けの多い要因でもある。

この引き分けを減らして勝利を増やせれば、もっと優位にリーグ戦を戦える。そのためには、追加点を奪うだけの攻撃力アップが求められるが、その点について、遠藤はどう考えているのだろうか。

「うちは、サイドにボールが入るとクロスを選択している。(攻撃力のある)フロンターレなどは、クロスを入れるエリアでもパスを選択することがある。俺は、どっちかひとつじゃなく、両方できないといけないと思う。

うちはワンツーやスルーパスとか、そういうのが最近少ない。ペナルティーエリアに近づいたとき、そうしたアイデアがもっと出てこないと、2点目、3点目を取るのは難しいし、相手も怖くないと思う。そういうプレーはやらないと腐っていく一方だから、意識的にやっていくことが大事だと思う」

もともとガンバはパスサッカー主体のチームだった。ユース上がりの選手たちはそのDNAがしっかり染み込んでいるはずだが、指揮官が求めるスタイルはそうした方向性とは違う。最近の欧州サッカーの流行りでもある、ボールを奪ったら縦に速くというスタイルを志向している。もちろん、それがハマッたときは、迫力のあるサッカーを見せ、好結果につながっている。

「第2節の柏レイソル戦(3-1)と第3節のFC東京戦(3-0)は、全体的にすごくいい試合だった。欧州のチームみたいな激しさがあって、(縦に)速く攻めてゴールも3点奪った。見ている人も気持ちのいい試合だっただろうし、こういう試合を増やしていきたいと思う、象徴的な試合だったね」(遠藤)

この2試合は、遠藤が中盤のアンカーを務め、2列目のインサイドハーフに今野と倉田を置いた3-5-2システムだった。遠藤はボールホルダーに猛チャージをかけ、今野と倉田も攻守にアグレッシブに動き回った。

このときのプレーが日本代表のハリルホジッチ監督の目にとまり、今野と倉田はそろって代表に招集された。そして、W杯最終予選のアウェーで行なわれたUAE戦にふたりとも出場し、勝利(2-0)に貢献した。

その試合で、今野が負傷して戦線離脱。ガンバはそれ以降、中盤の構成をいろいろと変えてきたが、今野が戻ってきた最近は、4-4-2のシステムで中盤をひし形にしている。

遠藤はその中盤で再びアンカーの役割を担っている。前線よりも、最終ラインとの連係が重要となり、どちらかと言えば守備に比重が置かれている。その分、遠藤の持ち味である攻撃力を存分に発揮するには難しい状況だ。

「守備がベースの中でも、楽しさを見つけながらやっているよ。相手に激しくとか、最後の1歩を出せるようにするとか、(これまで)あんまりできなかったことが今はできているんで楽しい。そういうことにプラスして、自分の本来持っている武器を融合させていければ、もっといいプレーができると思う。

チームとしては、(中盤を)ひし形とかシステムを気にするよりも、全体的にもう少し攻撃への意識と動きの質を高めていかないといけない。それができれば、もっとチャンスが作れるし、ボールを支配できる時間が増える。(そうすると)勝ち点1を勝ち点3にすることができると思う」

折り返しまで残り2試合。レイソル(勝ち点34)が首位を走っているが、2連勝すれば、2007年以来となる前半戦での首位通過の可能性もある。

引き分けを勝ちに持っていくためには、遠藤が言う多様性のある攻撃をどれぐらい実現できるかにかかっている。空中戦と地上戦をうまく融合するだけでも、攻撃の迫力は一層増すに違いない。

若手有望株のFW堂安律がオランダのフローニンゲンへ期限付きで移籍してしまうが、代わって韓国の城南FCからFW黄義助(ファン・ウィジェ)が加入する。彼が三浦やファビオのような活躍ができれば、遠藤が目標とする勝ち点74にも近づいていけるはずだ。

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