今季3得点目! 堂安律がオランダで乗り越えた壁【前編】「ガンバでの毎日が緩く感じるくらい…」

旧知のライターがオランダで堂安を直撃。開幕戦以降、スタメンを外れた理由とは?

 フローニンゲンに所属する堂安律が12月24日のスパルタ・ロッテルダム戦で今季3ゴール目を決めた。序盤の苦境を乗り越え、確実に出場時間を伸ばしている堂安だが、日本からオランダへと活躍の場を移して以降、これまでいかなる壁に突き当たり、乗り越えてきたのか。旧知のライターが本人を直撃した。

日本を離れて約5か月半。今でこそ、ほとんどの試合に先発出場を続けながら、攻撃の中心選手として活躍を見せる堂安律だが、一時期は「苦しい時期を過ごした」と振り返る。それは開幕戦のピッチに立って以降、控えに回った4試合を指す。

「開幕戦は自分でもそんなに良くないなと自覚していたとはいえ、そこから4試合ベンチに回った時は……、さすがにキツかった。自分なりにいろんなものを捨てて、せっかくオランダまできたのに、最初の1試合、調子があまり良くなかっただけで外されるのかと。その事実を自分の中で消化しきれず、モヤモヤしていました。

監督からは2節のアヤックス戦を前に『相手との力関係を考えて守備的に戦うからスタメンから外す』って説明されたけど、開幕戦のパフォーマンスさえ良ければ、そういう結果にはならなかったはずですしね。自分への腹立たしさと、『何やってんだ?』って想いで凹んだというか、苦しんだ。でもそのおかげで『次に試合に出た時には後悔しないパフォーマンスを残そう』という考えも生まれてきたし、それが意識の変化にもつながった。なかでも開幕戦で感じたことや周りの人に言われたことはすごく参考になりました」

その『参考』になったのが、動きの質、量だ。オランダに来てすぐ、彼はチーム関係者にこんな言葉を投げかけられたという。

「日本のサッカーは攻撃と守備の時間に分かれていて、野球のように見える」

攻守の切り替えの遅さを指摘した言葉だが、実際、開幕戦でも自身に対してそれを実感したからだろう。開幕戦以降は、普段の練習から、オフザボールの時間の使い方、動き方に変化を求めるようになったという。

「フローニンゲンのトレーニングは強度が高い。試合でも実感できている」

「『律はボールを持ったら速いけど、ボールを持っていない時間に歩きすぎている』とスタッフに指摘されたこともあり、ピッチの中で歩いたり、ジョグをしたりする時間を減らすことから始めました。と同時に、オフザボールの時にいかにボールを受けられる動きをするかにも、重きをおくようになった。それでも未だにスプリントしながらボールを受けろと言われますが、映像を見返すと、オランダに来たばかりの頃とは違って、最近はほとんど止まらずに動き続けられるようになった。コーチングスタッフからも、最近は『止まらなくなったね』と言われますしね。しかも、最近はこっちのトレーニング強度に慣れてきたせいか、常にハイテンポでプレーすることも、苦にならなくなってきた」

実はそのトレーニング強度についても日本との違いに驚いたと言う。偶然にもフローニンゲンではガンバ時代と同じく『レイモンド理論』(※)に基づいたフィジカルトレーニングを行なっているが、例えば、ガンバ時代には週1回の公式戦開催の週は1度だけ同トレーニングを実施していたのに対し、オランダではシーズン中もほぼ、毎日同トレーニングが行なわれているそうだ。それだけではない。1週間に2試合を戦う週でも、当たり前のように試合前日のトレーニングで8分の紅白戦を4本行なうなど、その強度は圧倒的にガンバ時代を上回っているという。

「ガンバにいる時は、週1回の『レイモンド』でもキツく感じていたのに、こっちに来たらほぼ毎日ですからね(笑)。外国人と日本人ではもともとの身体の構造やフィジカルの差はあるとはいえ、ガンバでの毎日が緩く感じてしまうくらいフローニンゲンのトレーニングは強度が高い。でも面白いもので半年も過ぎれば、それが当たり前になってくるというか……、全然苦にならなくなってきたし、試合での効果も実感できている。試合中に歩いている時間がほぼなくなった状況でも、疲労度に大きな違いはない。そう考えると、確実に成長している実感もあるし、それは充実感にもつながっています」

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