高体連の新卒を続々と獲得! ガンバ大阪の強化イズムになにが起こった?

2016年に8年ぶりに獲得して以来、3年連続で高卒新人が加入。

 アカデミー育ちの選手は40人以上。そんなJリーグ屈指の下部組織を持つG大阪に、新しい風が吹き込まれている。12月26日に三菱養和のU-17日本代表FW、中村敬斗の加入が正式発表され、来季の新人選手6選手が出揃った。内訳はユース昇格組2人に他のクラブユースから1人、そして高体連からの3人だ。

「それまでもユース外選手の必要性は感じていました。それにサンフレッチェ時代の浅野(シュツットガルト)と野津田(仙台)の競争やインタビューを見て、お互いに刺激し合うのはあらためて大事だと思ったんです」

2010年から8年間スカウトとして尽力した朝比奈伸は高体連組を獲得した狙いを語る。浅野拓磨と野津田岳人は同じ1994年生まれで、13年に広島に同期入団。高体連出身の浅野と広島ユース出身の野津田のライバル心は互いを高め、成長させた。同じことをG大阪にももたらしたかった。

始まりは16年。FW一美和成とDF野田裕喜の2人を大津(熊本)から加入させた。高体連出身者の獲得は07年の玉置慎也以来8年ぶり。17年には東福岡MF高江麗央と市立船橋MF高宇洋が加わった。

「ウチのベースは当然ユースにある。でも外部からの選手を取ることでユースの選手もウカウカしていられないと感じてほしかった」

ハーフタイム中に公衆の面前で味方に思い切りカツを入れたのは…。

 Jクラブ下部組織と高体連(街クラブ出身者を含む)のバランス。これは歴代の日本代表のメンツを見ても明らかなように、チーム作りをする上では重要だろう。例えば11月に行なわれたハリルジャパンの欧州遠征。J下部組織出身者は10人で高体連出身者は13人だった。14年ブラジル・ワールドカップもJ下部組織9人に対して、それ以外は14人の配分だった。

足もとの技術に優れるユース出身者とは違い、高体連出身選手の強みは何と言っても「感情を良い意味で出せる強さ、リーダーシップ」という。朝比奈には忘れられないシーンがある。15年11月の高校サッカー選手権熊本県大会決勝。ハーフタイム中、公衆の面前で味方に思い切りカツを入れる選手がいた。野田裕喜だった。同様に、来季加入する東福岡MF福田湧矢、前橋育英DF松田陸、東海大相模DF山口竜弥も「気持ちは強い」という。

G大阪ユースは古くは宮本恒靖、近年ではMF井手口陽介やMF倉田秋の日本代表選手、海外で戦うFW宇佐美貴史やMF堂安律を輩出してきた。井手口は日本代表のハリルホジッチ監督好みの“デュエル(球際の戦い)”ができる選手だが、技術に長けた選手の方が多い。大阪だけではなく、全国各地から優秀な人材が集う。そして何度も振るいに掛けられ、その中で生き残った彼らは紛れもなくトップ・オブ・トップだ。

だからこそトップチームに昇格して芽が出なかった時、心が折れる選手も多くいる。ベンチに入れない選手たちが「監督の見る目がない」と不平不満を口にしている姿を何度も見てきた。その点で高体連出身者の方が打たれ強い傾向にあるのかもしれない。

「最後は“気持ち”だった」(遠藤保仁)

 かつて元日本代表MFで、、鹿児島実卒の遠藤保仁はこう話した。
「(高校時代は)限界を超えるトレーニングが圧倒的に多かった。これ以上やれば倒れるという状態でも、あと3本いけるとかね。最後は“気持ち”だったんでね。それを乗り越えたからこそ多少の苦しさや痛みは“全然いけるんじゃないか”と思うような心にはなりましたね」

サッカー界のヒエラルキーを取り出してみれば、アンダー世代ではJ下部組織が頂点に君臨しているのは間違いない。ユースに入れなかった選手は他の道を選択する。だがG大阪ユースに昇格できず星稜(石川)進学を選んだMF本田圭佑(パチューカ)のように、挫折をバネに変えて大成する選手もごまんといる。

J下部組織育ちの強みがあるように、高体連には高体連の強みがある。朝比奈が敢えて外部の血を導入してきた背景には、両者の血を交えることでG大阪をさらに強いクラブに成長させるためだ。

今季を最後にスカウト業から外れる朝比奈は声を大にしていう。「もっと戦える集団にしたい。ガンバはもっとやれるはずですよ」

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