5節までの戦績が降格した年と一致。勝てないガンバの「ふんわり」問題。

「試合にふんわり入ってしまっている。柏戦もそうだったんで、そこは今回、修正しようと話をしていたんですけど……」

三浦弦太は、厳しい表情でそう言った。

ガンバ大阪はFC東京に2-3で敗れて、リーグ戦5試合を終えて1分4敗の最下位。国際Aマッチの中断期間にしっかりと修正してきたかと思われたが、この結果である。

試合にふんわり入ってしまったというのは、サッカーではよく聞く言葉だ。

クルピ監督はそのことを「集中力を欠いた」と指摘したが、ふんわり=集中力が欠けた状態であることは間違いない。

この奇妙な病は、サッカーだけに起こるわけではない。

たとえば陸上男子100mで9秒98の日本記録を樹立した桐生祥秀も、気持ちがふんわりしたままスタートに入ると、まず勝てないという。特に結果が出ていない時はいろんな邪念が生まれ、走ることに集中できないままレースに入り、また結果が出ないという悪循環に陥るというのだ。

今のガンバの選手にも、それが当てはまるのではないか。

今日は大丈夫だろうかという不安や、自分たちの戦いに確固たる自信が持てない状況がモヤモヤ感を生み、スイッチをうまく入れられずに試合に入ってしまう。誰かが「集中」を促せば気持ちを切り替えることもできそうだが、今のガンバにはそれを伝えられる選手がいない。結果、中途半端なプレーが増え、後手に回ることが多くなる。

すべてが後手に回る守備。

 例えばFC東京戦の最初の失点だ。ディエゴ・オリベイラを使ってDFの背後に落とすプレーについて、三浦たちは分析済みだった。だが分かっていても裏に落とされ、永井謙佑を捕まえ切れずにシュートを打たれ、そのこぼれ球を東慶悟に決められた。こぼれ球に集中してクリアーできれば最悪の事態は避けられたはずだが、すべてが後手に回っていた。

2点目の失点は、セットプレーからだった。

横からのボールに対してガンバのマークが甘くなるのは、昨年からである。FC東京の選手は、それをわかった上でファーサイドに山なりのボールを上げた。ファビオとファン・ウィジョのゾーンの合間から森重が飛び込んだのだが、誰のマークかがあやふやになり、フリーで森重にヘディングを許してしまった。

ゾーンで守っているのに、どうしてフリーでやられたのか。失点後、ファビオら選手のリアクションから混乱しているのがよく分かった。

やられてからスイッチが入るようでは。

 流れの中のプレーでも、前の選手がなんとなく守備にいき、後ろがついてこないシーンが多々あった。選手が個々のタイミングで守備をしており、これでは連動して守備をするのは難しい。

攻撃についても、前半は相手の術中にハマった。三浦とファビオが永井とオリベイラの2トップにプレッシャーをかけられ、遠藤保仁が下がって相手のマークをはがしてビルドアップをしていた。結果として前線にパスを供給する選手がいなくなり、押し込まれたのだ。

相手の運動量も落ちてきた後半は、マテウスを下げて遠藤がポジションを上げることでリズムをつかみ、同点に追いつくことに成功した。

だが、そもそも相手にやられてからスイッチが入るようでは、安定して勝ち星を重ねていくのは難しい。実際、FC東京戦も2点追いついた時点で畳み掛けてひっくり返したかったところだが、逆に突きはなされた。

ふんわりして試合に入り、モヤモヤして終わってしまったのだ。

クルピの戦術以前に、個人の問題?

 ふんわり入ってしまうという問題点は、選手も分かっているという。

だが、2週間の中断期間にもかかわらず柏戦と同じ入り方を繰り返してしまうのはチームとしてどうなのか。

これは、クルピの戦術どうこう以前の問題だろう。

三浦も深刻な表情で、こういう。

「個々の選手の問題だと思います。切り替えを早くする、球際を厳しくいくとか基本的なことが出来ていない。守備の約束事も作らないといけないですね」

もうひとつ、今のガンバはお互いをフォローする意識が欠けているように見えてしまう。要するに他人まかせになっていて、チームのために、みんなのために、というマインドが足りない。もともとそういう姿勢が見えにくいチームだが、勝てていない状況だからこそ「みんなのために」という意識を持ってプレーすべきだろう。

浦和の監督交代は他人事ではない。

 ●●●△●という星取りは、2012年に降格した時とまったく同じ。その時も外国人監督に代わったばかりだった。不吉なムードが漂うが、あの時は攻守に光が見えなかった。

しかし、今は攻撃に迫力が生まれつつある。

「後半のようなサッカーができればという拠り所ができているので、まだマシかなと思います。でも、勝たないことには何も変わらないんで、まずは1勝ですね」

三浦は、次の試合が「非常に重要」といった。

東西のビッグクラブとして競い合ってきた浦和は、2分3敗で堀孝史監督の解任を決断した。チーム事情が異なるとはいえ、ガンバもその危険水域に片足を突っ込んでいる。

「お互いを助け合うのがサッカー」と遠藤保仁は言う。

その意識を持ち、ふんわりからピリッとした集中力で試合に入ることができるか。前半をしっかりゼロに抑えられるのか。

三度、同じことを繰り返すことは絶対にあってはならない。

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