王者・川崎を撃破。ガンバ大阪に、王座奪還への道は見えているのか

J1第4節、ガンバ大阪が昨季J1王者の川崎フロンターレを1-0で下した。

ガンバは前節までの3試合を終え、総得点8、総失点8という”出入りの激しいサッカー”で、1勝2敗と黒星が先行していた。せっかくの高い攻撃力を生かし切れない。そんなもどかしい結果が続いていただけに、ある程度川崎に攻め込まれる時間が長くなることを承知のうえで、「0-0の試合にしていけば、どこかでチャンスがくる。とにかくゼロ(無失点)で進めて、勝つチャンスを増やそう、という話はみんなにしていた」(ガンバ・宮本恒靖監督)。

その結果が、後半アディショナルタイムの91分に決勝ゴールを決めての劇的勝利である。MF遠藤保仁が語る。

「(相手にボールを)握られても我慢強くやれた。多少ピンチはあったが、全体としてはよく守れた。大きな勝ち点3。チャンピオンチームに勝てたのは自信になる」

もちろん、喜んでばかりはいられない。J1で2連覇中の難敵を、しかも敵地で破ったとはいえ、ガンバは2勝2敗の五分の星に戻したに過ぎず、その順位もまだ9位である。

しかし、昨季J1では開幕戦から3連敗。ようやく初勝利を収めたのが、1分け5敗で迎えた第7節だったことを思えば、悪くないスタートということになるのだろう。

昨季のガンバは、苦しい前半戦を送っていた。

若手の育成に定評のあるレヴィー・クルピ監督を新たに迎え、王座奪還はもちろん、それに必要な強固な土台作りを進めるはずが、スタートで大きくつまずき、下位に低迷。ワールドカップ開催にともなう中断期間前の第15節終了時点では、J2降格がちらつく16位に沈んでいた。

その後、急遽指揮権を託された宮本監督は、就任直後こそ、思うような結果を得られなかったものの、理想と現実の折り合いをつけながらチームを上昇気流に乗せ、第25節からは怒涛の9連勝。最終節では敗れ、10連勝フィニッシュとはならなかったが、瀕死の状態にあったチームを、最終的にはひと桁順位の9位まで引き上げた。

そして迎えた今季。いわば再スタートを切るべく、シーズンはじめから宮本監督が指揮を執るガンバは、より理想の比重を高めながら、チーム作りを進めている。敵地で貴重な勝ち点3を手にした川崎戦で、それはうかがえた。

J1最強と言っていい攻撃力を持つ川崎は、ボールを保持して相手を押し込み、敵陣でゲームを進めることを強みとする。そうすることで、もしもボールを失っても、すぐに攻撃から守備に切り替え、高い位置で奪い返すことができる。昨季の川崎が、総得点でリーグ最多だっただけでなく、総失点でもリーグ最少だったことの最大の要因はそこにある。

それだけに川崎と対戦するチームは、粘り強く守ることも大事だが、奪ったボールをいかに攻撃につなげ、川崎を押し返すかが重要になる。ただクリアで逃げるだけでは、再び川崎にボールを拾われ、連続攻撃を受け続けるはめになり、いずれどこかで耐え切れなくなるからだ。

その点、ガンバは果敢だった。

1本のパスで相手DFラインの背後を狙うような攻撃を織り交ぜながらも、ボールを保持して攻撃につなげようとする狙いは、時間を問わず、1試合を通じて見ることができた。MF倉田秋が語る。

「速く(攻撃に)いくことも狙うが、全員が関わって(ボールを)つないでいくこともやっていかなければいけない。(FWファン・)ウィジョを前線で孤立させてはいけないし、もっとポジションバランスを取ってやりたいと思っている」

現状を見る限り、まだまだ道半ばではある。

ガンバは、とりわけボールを奪ったあとの1本目のパスを効果的に使うことができず、すぐにボールを失ってしまうことが少なくなかった。あるいは、仮に川崎の素早い切り替えからのプレスをかいくぐれたとしても、攻撃を完全にスローダウンさせられてしまい、なかなかボールを前に進めることができなかった。遠藤が「もっとパスコースをたくさん作ってあげないと。全員の立ち位置を確認しながらやっていかなければいけない」と、課題を口にしていたとおりだ。

残念ながら、”つなぐ意図が見える”ことと、実際に”つなげる”こととは、話が別である。あまりに結果がついてこなければ、理想の追求もその前提自体、説得力を欠いてしまう。

しかしながら、今のガンバは宮本監督のもと、現実との折り合いを欠くことなく、うまく理想の比重を高めているように見える。

この川崎戦でも、まずは4-2-3-1で守備のバランスを重視した試合運びをしたうえで、試合終盤に「アデミウソンの守備の負担が大きくなっていたので」(倉田)、2列目のアデミウソンをFWに上げ、4-4-2へとシフトチェンジ。トップ下の遠藤がボランチに下がり、ボランチの倉田が左MFへ移ったことで、左サイドバックのDF藤春廣輝と「やり慣れているので連係しやすかった」と倉田。ふたりのコンビネーションで左サイドを破る「狙いどおり」(倉田)の形で、DF三浦弦太の決勝ゴールを生み出した。

倉田は「もっとボランチの自分たちを中心に、ボール回しが安定しないと、(パスを)つないで攻撃するのは難しい。自分が攻撃を全部仕切るくらいにやりたいが……」と反省の言葉を並べつつも、「厳しい戦いを勝ち抜けたのは自信になる」と語り、笑顔を見せた。

振り返れば、昨季の9連勝も、川崎戦での勝利から始まった。倉田が続ける。

「今日の1勝はただの1勝じゃない」

王座奪還を視野にとらえた、と言うには、まだ早い。

だが、昨季の苦境を乗り越え、ガンバは再び、進むべき道を歩み始めた。そのことだけはどうやら間違いなさそうだ。

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