ガンバ大阪が宇佐美貴史を獲得したふたつの理由。松波強化部長が明かす復帰の舞台裏

「若手の成長にフタをすることにならないか?」

 ドイツのアウクスブルクからデュッセルドルフへ期限付き移籍をしている宇佐美貴史の古巣・G大阪復帰が24日、正式発表された。3年ぶりの復帰で、最短出場は7月20日の名古屋戦(豊田スタジアム)となる。

なぜ、このタイミングでの獲得になったのか。その理由はふたつ。ひとつは宇佐美自身が古巣への復帰を熱望したこと。もうひとつは松波正信強化部長が描く未来像に合致したことだ。

 チームは5月中旬から若手路線に切り替えている。22日の湘南戦で決勝点を挙げたFW食野亮太郎(21)、U―20ワールドカップを経験してひと皮むけたFW中村敬斗(18)、MF高江麗央(20)にMF福田湧矢(20)、DF高尾瑠(22)。彼らは試合をこなすごとに成長している。

そして、現状のシステムであれば2トップの一角に組み込まれるのが濃厚だが、FW陣は食野亮、韓国代表のファン・ウイジョにチームトップスコアラーのアデミウソン、負傷から戦列復帰したベテラン渡邉千真ら多士済々。ともすれば過剰戦力になり、不協和音を生み出す恐れもある。

そんななか、私は「若手の成長にフタをすることにならないか?」と松波強化部長に質問したことがある。だが松波強化部長からの答えは「NO」。選手の出場や勝敗などの目先のビジョンだけが描かれているわけではなかった。
交渉過程のなかで松波強化部長が最も大事にしたのは、宇佐美のクラブ愛だった(もちろん移籍金交渉も粘り、アウクスブルクの求める金額から大幅譲歩を引き出した)。5月下旬か6月上旬、日本に帰国している宇佐美と面談。神戸を始めとする他のJ1クラブから興味が届くなか、J復帰ならばG大阪一択という意思を確認した。

また宇佐美はすでに2度、海外リーグへ移籍をしている(11年バイエルン、16年アウクスブルク)。松波強化部長は「海外の選択肢を残して復帰したいとか甘い考えを持っていてはダメ」と厳しく言い「アイツが発する言葉の持つ影響力、ピッチ内外での存在感。そこは何にも代え難い」と口にしていた。

その言葉から読み取れるのは、G大阪で生涯を全うする覚悟。つまり宇佐美には長らくMF遠藤保仁が担ってきたバンディエラ(旗印)の役目を、次に背負うことが期待されている。

ここ2年間は残留争いに巻き込まれているが、獲得に踏み切ったのは残留争いから抜け出すためだけではない。再び黄金期を作るためだった。

宇佐美は25日の練習からチームに合流。そして練習後に会見を行う。奇しくも3年前の6月25日はアウクスブルク移籍のためのセレモニーが行なわれた日。当時は「粘り強く、地面に這いつくばってでも努力を重ねて、皆さんに助けてもらわなくて済むような男に成長して、このクラブでいつかプレーできることを夢見ています」と語った。

海外リーグでは輝きを放てなかったが、彼が戦ってきたことはG大阪関係者もメディアも知っている。そして、それは宇佐美やクラブにとっては財産だ。

27歳にして酸いも甘いも知り尽くした経験を、若手にどう伝えていくか。どうピッチで活かしていくか。ここからの宇佐美には一選手を超えたチームの模範になることが求められているだけに、第一声に注目が集まる。

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