元ボランチがFW抜擢で公式戦12得点!! ガンバが育てた強気な21歳は、東京五輪招集もあり得るか?

「よしっ、今年はFWをやろう」

 食野亮太郎という選手をご存知だろうか?

今季公式戦12得点(J1リーグ3得点、J3リーグ8得点、ルヴァン杯1得点)とゴールを量産しているG大阪下部組織育ちの21歳、ポジションはFWの選手である。

U―22代表が参加したトゥーロン国際大会、久保建英(レアル・マドリー)や三好康児(横浜)ら若手中心で構成されたコパ・アメリカのどちらも未招集。それどころか過去のアンダー世代の代表にも一度も選出されたことがない。それは食野が希有なキャリアを歩んできたことと無関係ではないだろう。

同学年には日本代表の堂安律(フローニンヘン)がいる。そのなかで食野はボランチとしてG大阪ユースに昇格。そして高校2年時に攻撃的MFにポジションを上げ、プロ1年目の18年にはトップ下も経験した。純粋なFWとしてプレーするのは、実は今季が初めて。通常、プロの扉を叩く選手は前線のポジションからスタートするが、徐々にポジションを上げていく選手は滅多にいない。
「最初は“んんっ?“という感じだった」

それは何気ないひと言が始まりだった。1、2月に行われた沖縄キャンプ。食野はわずか6人だけの“居残り組“に組み込まれた。その練習のなかで今季からU―23チームの指揮官に就任した森下仁志監督から「よしっ、今年はFWをやろう」と言われた。突然のコンバート。驚きを隠せなかったが熱のこもった指導、そして練習試合で結果を残していくことで「自信がついて、楽しさが沸いてきた」(食野)。自らもマンチェスター・シティの選手のプレーを研究する貪欲さも成長を加速させた。

精神面での開き直りも今季のブレイクを後押しした。昨年も4月の時点でトップチーム出場のチャンスを得たが、チーム状況が芳しくなく遠慮してしまう部分があった。だが、今年は「恐れずにやろう」と自らに言い聞かせた。そしてJ3リーグでゴールし続けることで、進んでいる道が間違えていないことを確信した。だからこそ周囲が“ボールを持ちすぎ”“強引だ”と感じたとしても局面を打開してシュートを打つスタンスは変えない。鳥栖戦でのJ1初得点、湘南戦での劇的なロスタイム決勝弾。その強気すぎる姿勢はJ1リーグの舞台でも通用することを証明した。

「全然タイプが違うし、馬力、速さ、献身的な守備。良い選手なのは分かっていたし、代表に呼ばれるのも当然だなと率直に思った」

この日対戦した松本山雅の日本代表FW前田大然を見て、食野は素直に感嘆した。そして同時に言う。
「まだ東京五輪も意識していない。でも、さらに上にいくためには追いつき追い越さないといけない存在」

FW歴は1年にも満たない。経験不足なのは当たり前。松本戦のように研究された時のプレーの引き出しに課題があるのは事実だ。そして伸びシロが多分に残されているのも、また事実だ。

「違う色を出さないと生き残っていけない。ゴール前で集中させてもらえるのは性格的にも合っている」

結果に反映されなければ叩かれやすいスタイルだ。だが、東京五輪世代のFW陣を見渡しても前田も上田綺世(法政大)も小川航基(磐田)も、そしてオーバーエイジ枠で加わってくるかもしれない大迫勇也(ブレーメン)も持ち合わせていない武器を有している。上手さと怖さが同居するFW。そのスタイルでJリーグを突き抜けたならば……。いつか、こう言われる日が来るかもしれない。

食野亮太郎という選手をまさか知らないのか?

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