【二宮寿朗の週刊文蹴】いつも播戸竜二は熱かった

“黄金世代”の40歳、播戸竜二が現役引退を表明した。昨季限りでFC琉球を退団してフリーとなっていたが、このたび古巣のガンバ大阪の“1日契約”という粋な計らいで引退セレモニーが催された。定番の「1、2、3バ~ン!」あり、敬愛する三浦知良のビデオメッセージに涙ぐむシーンあり、彼らしく熱くピリオドを打った。

この数日前に、本人から「引退します」と連絡をもらった。これまで「引退しません。どんなカテゴリーでも話があれば聞きたい」と現役にこだわってきただけに、何となく寂寥(せきりょう)感も伝わってきた。

まさに熱血のストライカーだった。エネルギッシュなプレーでチーム全体に火をつける力を宿した。最もキャリアの長いガンバ時代では08年度の天皇杯決勝で延長後半、左足シュートでゴールにねじ込んで試合を決めたシーンをすぐに思い出す。雄たけびを上げながら全速力でベンチに向かっていく光景もセットで強く印象に残っている。

昨シーズンはJ3の琉球でプレーした。チームメートと初めて顔を合わせた際、「優勝して昇格しよう」と呼び掛けた。これまでチームの最高成績は6位。目標に半信半疑のチームメートを本気にさせるために「最初に自分のエネルギーを使って、いいスタートを切りたかった」と開幕2戦、3戦目と途中出場ながら2試合続けてゴールを挙げてチームに勢いをもたらしている。結局、琉球は7月から首位を譲らず、優勝をもぎ取った。

実は17年11月に最愛の母を病気で亡くし「心がからっぽになって」一時は引退も考えた。四十九日法要を終えて「そろそろ自分のことを考えなと思ったら、やっぱりサッカーだった」と琉球への移籍を決断したのだった。

組織を結束させ、同じ方向に一緒に走らせていく播戸の熱。これからも日本サッカー界を盛り上げる熱血漢であってほしい。

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