【25年目の大阪ダービー 因縁の歴史 育成編】かつてはG大阪1強、流れ変えたC大阪の“一手”

9月28日にヤンマースタジアム長居で行われるC大阪―G大阪の「大阪ダービー」。ともに育成クラブとして下部組織出身の選手が多く、育成年代から「ダービーだけには絶対に負けるな」といった指導を受けてきた選手が多い両クラブ。現在は選手スカウトでもしのぎを削る、両クラブの育成の歴史を振り返る。

【C大阪編】

「関西にいる上手い子ども、上から11人はみんなガンバの下部組織に入ってたから」。昔を知るC大阪のスタッフからそんな話を聞いたことがある。G大阪に対して、そんな優遇がされていたわけでは決してない。が、C大阪より2年早くJ1の舞台に登場したG大阪が、関西のサッカー少年たちにとってあこがれの存在であったことを示すには十分なエピソードといえる。

2年の月日と、発足当時のJリーグバブルとが相まって生まれた「格差」は、育成現場にも影響を与えていた。98年からU―15コーチなど下部組織で指導してきた小菊昭雄コーチ(44)は、その差を肌で感じてきた1人だ。「特に小学校からジュニアユースに上がってくる時期に関西で良い選手はガンバに流れていた。今ではセレッソを優先して来てくれる子もいますけど、当時はガンバに受からなかった子が来ていた時代でしたから」。

02年から4年間は、スカウトとして全国を飛び回ったが「『大阪から来ました』と言うと、まず『ガンバさんですか?』となる。知名度がすごいなとは痛恨して、悔しかったですよね。(ガンバは)先を走っていると、全国を回るたびに感じました」と振り返った。入団がかなわなかった悔しさをモチベーションに変えた少年たちと同様に、スタッフも反骨心を糧に懸命な努力を続けた。

07年にクラブ独自の育成システム「ハナサカクラブ」がスタート。サポーターから募った出資の全額を育成組織の費用補助に充てる仕組みで、以降は海外遠征などより充実した強化が可能となった。時を同じくして、元日本代表FW柿谷やDF丸橋など、現チームの主力となる選手がトップチームに昇格。下の世代にも日本代表MF南野=現ザルツブルク=などが続いた。小菊コーチは「日本代表に入ったり海外に行く選手が出てきたことで、ようやくガンバとの距離が縮まり、追いつけたと実感できるようになった」と言葉に力を込めた。

中学からクラブ一筋の丸橋は、ライバルへの対抗意識について「染みついているような感じ」と表現した。それは苦難の時期を乗り越えることができた思いの結晶であり、今なおセレッソイレブンに色濃く受け継がれている。

【G大阪編】

“育成のガンバ”。ユース1期生のDF宮本(現トップチーム監督)や、FW大黒、MF二川、橋本ら下部組織出身の中心選手が活躍し、初タイトルを飾った2005年前後から、こう呼ばれるようになった。93年のJリーグ開幕時には関西で唯一のJクラブだったこともあり、C大阪に先んじて下部組織も発展。自前で育てた選手がトップチームへ昇格し、チームを支えてきた。現在でも東口、倉田、宇佐美、井手口ら、下部組織出身者が中心選手として居並ぶ。

かつてユース監督も務め、その発展に尽力した上野山信行取締役(62)は「最初は下部組織に力を入れ始めたのが、セレッソさんよりうちの方が早かったので、いい選手が集まってきた。いい選手が集まれば、いいサッカーができる。結果にもつながり、ガンバのサッカーはいい、と言ってもらえるようになって、さらにいい選手が集まるようになった」と話す。

G大阪ジュニアユース出身のGK東口は「小学校の時は、C大阪からも声をかけてもらいました。熱心に誘ってもらったので、迷いましたけど…」と明かす。しかし周囲のアドバイスや環境面なども考慮し、G大阪を選択したという。近年でも日本代表MF堂安=現PSV=やGK谷ら、C大阪の誘いを断ってG大阪を選んだ選手は多い。数々のタイトル獲得、さらに次々と日本代表選手を輩出する実績は、プロを夢見る子供たちにとって何より輝いて見えたはずだ。

しかしそんな潮流は変わった。「我々があぐらをかいていた時期があった」と複数のクラブ関係者が反省するように、G大阪が停滞する中で、C大阪が下部組織の強化を進めるようになると、力関係は変化。C大阪も下部組織出身の有力選手が活躍するようになり、G大阪がJ2に降格した12年ごろからは、有望な選手がC大阪を選択することも増えたという。最近は世代別の日本代表に送り込む選手の数も、C大阪がリードしている。

そんな状況を変えようと、G大阪もジュニア世代からのスカウト強化に着手。18年にはユース、ジュニアユース生が生活する『青翔寮』をパナソニックスタジアム吹田の付近に建設し、環境面も整備した。さらに上野山取締役は、下部組織の発展には「やはりトップ(チーム)が強くないといけない」と語る。今季ここまでの順位は、G大阪の12位に対し、C大阪は6位。プライドにかけ、ライバルに先行された中で迎える大阪ダービーで負けるわけにはいかない。

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