観戦へのワクワク増に工夫。 ガンバ大阪の『パナソニックロード』とは

スタジアムに向かうワクワク感を盛り上げるために――ガンバ大阪が『パナソニックロード』に込めた思い

『パナソニックロード』が生まれた理由

大阪モノレールの万博記念公園駅から徒歩15分。

駅前の広場から続く149段の階段を上り切ったあたりで、左手にガンバ大阪のホームスタジアム、パナソニックスタジアム吹田が視界に飛び込んでくる。といっても、まだ着かない。公園内を抜け、南駐車場の外側をぐるっと囲む道を歩き、ようやくスタジアムに到着する。

この距離を長いと感じるか、短いと感じるか。

受け取り方は人それぞれだが、今年の4月にガンバ大阪が行なったスタジアム個別満足度を知るためのwebアンケート(観戦者8385名対象)によると、高い満足度を示した『臨場感』に対して、不満の声が多く寄せられたのが『アクセス』だった。

「観戦者を対象に、インターネットで行なったアンケート調査では『とても満足』から『とても不満』まで5段階で評価していただきました。このアンケートは毎年行なっていて、毎回『臨場感』をとても高く評価していただいた一方で、万博記念公園駅からスタジアムまでのアクセスに関しては、たくさんの方たちがストレスを抱えているという事実が浮き彫りになりました。

実は、このアクセスに関する課題は私たちも認識していましたし、今回のアンケートに限らず、パナソニックスタジアム吹田に関するさまざまな側面からのアンケート調査でも低評価で……。それを踏まえて、かねてから少しでも改善できる方法がないかをクラブ内で議論を交わしてきた結果、『物理的にスタジアムを動かせない以上、お客さまとスタジアムの心理的な距離を縮められる工夫を行なおう』という結論に至り、今回の施策の実施に至りました」

そう話すのは、ガンバ大阪広報課課長・奥永憲治氏だ。そこからアンケートに添えられていた意見を参考に、社内でさまざまな施策を練り、営業部パートナー営業課主任・吉村友寿氏が中心となってパートナー企業と連携した新たな取り組みを始めた。

それが『パナソニックロード』だ。

「パナソニックロードは、アクセス途中の高揚感、ワクワク感の醸成と体験イベントの提供により、観戦者の心理的な負担を軽減することを目的にスタートしました。そうしたなかで、アンケートにご協力いただいたお客さまからはいろいろなご意見をいただきました。

いくつか抜粋すると『万博記念競技場からパナソニックスタジアムになり、とても臨場感のある、いいスタジアムになりましたが、最寄りの駅から遠いです(20代・女性)』『駅からスタジアムまでの道に楽しさやワクワク感が感じにくいので、改善できればよい(40代・男性)』『最寄り駅から試合へ向けた気分を高めるような演出。小さな子どもが楽しめるイベントがあったらうれしい(30代・女性)』などです。

それらをもとに、心理的な距離を縮めるべく、スタジアムに向かうワクワク感をさらに高められるような、『これから、ガンバの試合が始まるぞ!』という期待を膨らませられるような雰囲気づくりを考えました」(吉村友寿氏)

さまざまな準備を経て、5月18日の『大阪ダービー』から『パナソニックロード』をスタートするにあたり、協力体制を敷いてくれたのが、メインスポンサーのパナソニック株式会社だ。

パナソニックではかねてより、同社商品に愛着を持ち、長きにわたって愛用してもらうための便利な情報や商品の使用に関するサポートとして『CLUB Panasonic オーナーズサービス』を行なってきたが、その会員増を図る手段の1つとして、ガンバ大阪の集客に目をつけた。パナソニック株式会社コンシューマーマーケティングジャパン本部担当者が狙いを説明する。

「CLUB Panasonic(クラブパナソニック)はパナソニックのファン会員組織で、オーナーズサービスはお手持ちのパナソニック商品を1件以上、ご愛用者登録していただくことで利用できるサービスです。同メンバーの獲得を目指すうえで、安定した集客力があり、我々が支援を行なっている人気チーム、ガンバ大阪のホームゲーム時の集客に目をつけました。

今回の企画を通して、クラブパナソニックオーナーズサービスの認知向上と、登録者(オーナーズサービスメンバー)を増やすことはもちろん、ガンバ大阪のサポーターのみなさまに、パナソニックとパナソニック商品のファンになっていただければと思っています」

『パナソニックロード』にある楽しみ

『パナソニックロード』の演出として最初に行なったのが、万博記念公園駅からスタジアムまで徒歩15分とされている推奨ルートへの工夫だ。

まず、万博記念公園駅の構内では、大阪モノレールの協力を受け、毎試合先着3000名を対象に、試合ごとに掲載選手を変えたトレーディングカードを配布。カードの裏面を使ってパナソニックロードの通行を喚起したうえで、歩みを進めた先にある149段を数える階段の脇には、ガンバ大阪のタイトルの歴史を辿(たど)れる大きな写真パネルを並べた。

クラブ初のタイトル獲得となった2005年のJ1リーグに始まって、2007年のナビスコカップ(現ルヴァンカップ)、2008年のAFCチャンピオンズリーグなど、その時々の『タイトル』の喜びが表現された、全9枚の集合写真だ。そこには来場者に向けた吉村氏の想いが込められている。

「私も、何度もあの距離を歩いていますが、暑さが厳しい夏場はまさに汗だくで……。来場者の中にも、スタジアムに到着する頃にはシャツが汗でびしょびしょになっている方をたくさん見かけました。

その様子からも、試合前から観戦意欲を失わせてしまうことになりかねないと思い、少しでも楽しみながら歩ける工夫をしようと写真パネルを作成しました。当時を知っているファンのみなさんには、それらを見て思い出話に花を咲かせていただいたり、知らない方にはガンバの歴史を知ってもらうきっかけになればうれしいです」

事実、試合前にその前を通る人たちを見ていると、懐かしのメンバーが顔をそろえる集合写真と一緒に写真を撮ったり、当時を思い出してか、足を止めて写真パネルの前で談笑するなど、思い思いにパネルを楽しんでいる様子が目に止まる。

もっともリピーターに対する目新しさという点では、まだまだ工夫もできるはずだが、公共施設ゆえのさまざまな制限もあるなかで、万博記念公園駅を降りてすぐ、まだスタジアムが視界に入ってこないところから『ガンバ大阪』を楽しめるのは、スタジアムに向かう高揚感を間違いなく後押しすることだろう。

そうして、9枚の写真パネルを見終わったところでお目見えするのが、階段の両脇に掲げられた所属選手の個別のノボリだ。遠藤保仁、東口順昭、藤春廣輝、宇佐美貴史、井手口陽介、三浦弦太……。まるで来場者を迎え入れるように、ユニフォーム姿の選手たちのノボリが颯爽とそびえ立つ。

それらを見ながら、スターティングメンバーを予想したり、あれやこれやとガンバ談義に花を咲かせて階段を上り切ったら――左手にスタジアム全体を捉えられる踊り場に到着する。

実は、この場所は『SNS映えポイント』でもあるらしく、スタジアムをバックに写真撮影を行なっている人を多数見かける。キックオフ30~40分前になると一気に人の流れが増えるため、時間帯によっては足を止めて撮影するのは難しいが、早めにスタジアムに到着した時には撮影を楽しんでからスタジアムに向かうのもいいだろう。

そして、この踊り場に来たら必ず立ち寄りたいのが、階段を上って右手にある『クーポン抽選ブース』だ。

当日の試合チケットを提示すれば1人1回、そのうえでクラブパナソニック会員なら1人計2回、抽選に参加でき、もれなくスタジアム内で利用できる各種クーポン券(試合当日に限り有効)が受け取れる。しかも、浴室などで利用できる『ポータブルテレビ プライベート ビエラ』や『衣類スチーマー』『電気脱臭機 nanoeX』など、パナソニックの人気商品が当たるかもしれない、という特典つきだ。

さらには、クラブパナソニック会員限定の2回目の抽選に参加すると、ガンバ大阪選手のサイン色紙やサイン入りレプリカユニフォームなど、ファンにはたまらないガンバグッズが景品としてお目見えする。

「スタジアム内で利用できるクーポンは、たとえば『ドリンク200円割引クーポン』だったり、『くくるのたこ焼き2個増量クーポン』だったり。スタジアム内の各店舗にもご協力をいただいて試合ごとに趣向を凝らしています。夏場は暑さを考慮して、全員にソフトドリンク1本が実質無料になる『ドリンク200円割引クーポン』のプレゼントを実施して好評をいただきました。

10月19日のJ1リーグ第29節の川崎フロンターレ戦(観客数2万5748名)では、4833名の方が『クーポン抽選ブース』を通過してくださいましたが、今後はより多くの方にご利用いただければうれしいです」

実はガンバ大阪では、その川崎フロンターレ戦にパナソニックロードの認知度や利用者数、充実度を知るためのアンケート調査を実施。3679名が回答し、『パナソニックロードを歩いたことで、ガンバ大阪に対する印象に変化がありましたか?』という質問には、44.6%の方が『スタジアムへの道のりがより楽しくなった』と返答。また、『パナソニックロードを歩いたことで、パナソニックに対する印象に変化はありましたか?』という質問にも、51.5%の方が『パナソニックに対して好感、親しみが増した』という回答を寄せている。

もっとも、『クーポン抽選ブース』の利用者はパナソニックロードを通った人のうち約半数、48.7%という結果だったため、利用者の増員は今後の課題だが、スタートから約半年だと考えれば上々の結果だろう。吉村氏も手応えを口にする。

「川崎戦も、たくさんの方に抽選会をご利用いただきました。当日は、私も実際に抽選会場に立ち、いろんな方とコミュニケーションを図りましたが、いろいろな課題も浮き彫りになった反面、ポジティブな声も多く聞かれ、好感触を得ることができました。であるからこそ、もっと中身を充実させることで、より多くの方にご参加いただける企画を考えていきたいと思っています。

とくにパナソニックロードを何度もご利用いただいている方に向けた仕掛けという点ではまだまだで……。現在も、試合ごとにトレーディングカードのデザインを変えるなど工夫は行なっていますが、より目新しい仕掛けを行なうことができれば、観戦の楽しみを増やせるはずですしね。

たとえば、万歩計などで歩いた歩数を換算し、それに応じたプレゼントがもらえる企画とか、夏場は給水ポイントやミストシャワーのポイントを作るとか。抽選会の賞品にしても、売店で利用できるだけではなく、『家までタクシーで送りますクーポン』などを取り入れるなど、まだまだ発展させられるはずなので、今後もご来場者の方に喜んでいただけるような、何よりスタジアムまでの足取りが軽くなってワクワク感が増すような、企画を考えていきたいと思っています」

今シーズンのガンバ大阪のホームゲームは、残すところ11月23日のベガルタ仙台戦、11月30日の松本山雅FC戦の2試合。そのうち、仙台戦ではすでに新企画として、クラブパナソニック会員で2回目の抽選会に参加していただいた方を対象に、ホログラム加工されたガンバ大阪の限定トレカを先着1000名にプレゼントされることが決まっている。149段の階段を上り切ったあとの休息も兼ねて、抽選スポットに立ち寄らない手はないだろう。

そうして抽選を終えたら、もうひと息――。

時間にして、さらに約7分、歩いた先にそびえ立つパナソニックスタジアム吹田では、極上の熱狂と興奮が待ち受けている。

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