「“ごまかし”はもう利かない」 惨敗の日本代表「ベネズエラ戦出場16人」を金田喜稔が採点

「攻守における共通理解の欠如」を露呈と指摘 総じて及第点以下の採点に…
日本代表は19日に国際親善試合ベネズエラ戦に臨み、前半に4ゴールを叩き込まれる失態で1-4と大敗した。序盤からミスの目立った日本は、前半8分にFWサロモン・ロンドンに先制点を奪われると、30分、33分、38分と立て続けに失点し、まさかの0-4でハーフタイムへ。後半に途中出場のMF山口蛍(ヴィッセル神戸)がミドルシュートを決めて一矢を報いたものの、反撃はこの1点のみに終わった。

5日前のカタール・ワールドカップ(W杯)アジア2次予選のキルギス戦(2-0)から先発メンバーを8人入れ替え、欧州組の主力を多く欠くなかでの完敗を識者はどのように見たのか。1970年代から80年代にかけて活躍した「天才ドリブラー」で、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏が、この試合に出場した全16選手を5段階で評価してもらった(5つ星が最高、1つ星が最低)。

大前提として「どのようにボールを回し、守るのか。攻守におけるチームの共通理解が見えず戦い方が整理されていなかった」と指摘した金田氏は、「アジア2次予選のレベルでは“ごまかし”が利くが、最終予選や世界を相手にしたらそうはいかない」と、森保一監督のチーム作りに敗因があると語った。そのうえで、この試合のスタメン11人には軒並み及第点以下を与えた一方、後半から出場した選手には一定の評価を与えた。

◇   ◇   ◇

<FW>
■鈴木武蔵(札幌/→ハーフタイムOUT)=★★

チームとして攻撃の形がなかったとしても、前線でもう少しボールを収められなければ厳しい。苦しい時間帯にルーズボールを足もとで収めるだけのフィジカルや走力、高さを示せずアピールに失敗。前半25分には浮き球のパスを胸トラップからシュートしたが枠を捉えられず。せっかく先発出場のチャンスをもらったのに生かせず、相手に先手を打って仕掛けるようなシーンも作り出せなかった。

<MF>
■浅野拓磨(パルチザン/→後半20分OUT)=★★★

浅野の適性ポジションが、やはりサイドではないことを再認識させられた一戦。中央に位置しながら鈴木とコンビを組み、前半14分など後方からのロングパスに抜け出し、相手最終ラインの背後を突くシーンを作った。巧みに駆け引きをしながら裏に抜ける動き出しは、サイドで起用された際にはできないもの。相手ゴール前の局面でプレー精度を欠いたことは課題として残るが、持ち味は発揮できた印象だ。

前半は“引きすぎた”中島 「“ごちゃごちゃしていた”エリアをさらに混乱に陥れた」
<MF>
■中島翔哉(ポルト)=★★★

率直に言って前半は“引きすぎ”。いくらボールが出てこないからといって、左サイドハーフからボランチの位置に下がってしまうと、ビルドアップの共通理解がなく、ただでさえ“ごちゃごちゃしていた”エリアをさらに混乱に陥れた。中島があれだけ引くと、左サイドバックの佐々木も怖くて上がれない。もちろん簡単には取られないキープ力は見せたが、効果的とは言い難かった。もっとも、そこを修正するのは監督の仕事。後半はポジションを上げ、日本の攻撃をリードしただけに、チームとして前半のうちに的確な修正を施したかった。

■原口元気(ハノーファー/→後半37分OUT)=★★★

右サイドハーフとして久しぶりのスタメン起用。左サイドでプレーする際には、ドリブルから中へ切り込む形を得意とするが、ロシアW杯の時もそうだったように右では内側へ持ち込むことはほとんどない。攻撃時には右サイドバックとの縦関係が一つのポイントになるが、室屋と連動するシーンはほとんどなく、ボランチの橋本を含めてサポートをあまり得られなかった。

■柴崎 岳(デポルティボ)=★★★

試合後には攻守両面で修正できなかった自身を責める発言を残したようだが、自身の統率力云々というよりチームの連動性のなさが引き起こした問題。守備面では取りどころが定まっていないため、後手を踏むシーンが多く、ビルドアップでも後方のセンターバックとの距離感が良くないシーンが多かった。後半に入り徐々に縦パスを供給するシーンは増えたものの、決定的な仕事はできなかった。

■橋本拳人(FC東京/→後半20分OUT)=★★★

柴崎とともにビルドアップ面で苦労し、パスを引っかけるシーンもあった。持ち味である守備面では、前半の立ち上がりは相手に激しく寄せて突破を防ぐシーンも見られたが、チーム全体が連動できなかったこともあり、時間の経過とともにポジショニングに戸惑いも感じられた。個人のパフォーマンスだけの問題でないのは明らかだが、9月、10月の代表戦では着実に評価を高めただけに、少し物足りない印象だった。

CBコンビのビルドアップに課題 「スムーズさを欠いた配球でチームを苦しくした」
<DF>
■佐々木翔(広島)=★★

左サイドバックとして先発のチャンスをもらったものの、攻守に迷いが見られた。1失点目の場面では左サイドからのクロスに対してロンドンにつききれず簡単に競り負けた。3失点目のシーンでも左サイドからのクロスに対して後手を踏み、相手にヘディングでの折り返しを許し、4失点目では左サイドを攻略された。ビルドアップの場面でも、前半は同サイドにいた中島が下がりすぎたため位置取りに苦労している印象が窺えた。

■畠中槙之輔(横浜FM)=★★

久しぶりの代表戦出場でアピールにつなげたかったが、4失点と不本意な結果に。所属する横浜FMではビルドアップ能力に定評があるが、共通理解が見えないこの日のメンバーの中では苦労していた。後手を踏み続けた守備面ではパートナーの植田とともに相手FWロンドンを捕まえきれない場面が目立ち、3失点目のシーンでも左右に振られて離してしまった。三浦とのコンビになった後半はやや持ち直したものの、前半の内容が悪すぎた。

■植田直通(セルクル・ブルージュ/→ハーフタイムOUT)=★★

海外組の1人であり、最も実績を積んでいる選手として統率力に期待したが、急造の最終ラインを上手くコントロールできなかった。自身も特にビルドアップの場面では課題を露呈。あれだけベネズエラに高い位置から、ボランチの柴崎と橋本に対してプレッシャーがかけられているのなら、もう少し自らがドリブルで前に持ち出してマークのズレを誘ったり、ボランチを飛び越えたミドルパスを前線に送りたいところ。ボールに向かって真っすぐ下りてきたボランチに短いパスを当てたところで、相手の圧力をかわすことはできず、最終ラインからのスムーズさを欠いた配球がチーム全体を苦しくさせた。もちろん、そうした出し手と受け手のイメージを共有させるのも監督の仕事。選手がピッチ上で迷いながらプレーしているようでは、サッカーを熟知する南米勢には敵わない。

■室屋 成(FC東京)=★★

先制点を許した場面の右サイドでの対応は、ペナルティーエリア内で少し考えられないほど対峙したジェフェルソン・ソテルドに長い時間キープされ、圧力をかけきれないままアシストを許した。攻撃時は自らのポジショニングが低すぎたことが、右サイドでのパス回しが停滞する一因に。右のセンターバックである植田がビルドアップ時に開いた際には、もう少し前にポジションを取れれば、その先の展開が楽になったように見えた。

<GK>
■川島永嗣(ストラスブール)=★★

あれだけサイドから完璧に崩され、中央でフリーで相手に合わせられてはGKとしてなす術がないだろう。コーチングによってその守備を修正するのも最後尾にいる守護神の役目ではあるが、約束事が見えないなかでは的確な指示も出せなかったのではないだろうか。もちろん、経験豊富な川島だからこそ最後の部分でのセービングに期待したが、前半だけで4失点を喫してしまった。

永井、古橋らの迫力あるプレーを評価 「チーム全体のプレーのギアを上げた」
<途中出場>
■古橋亨梧(神戸/MF/←ハーフタイムIN)=★★★★

後半開始から右サイドに入ってフレッシュな力を発揮。後半4分にドリブルで持ち上がるなど、チームの攻撃を活性化した。ゴールという結果にはつながらなかったが、ドリブルもできてアシスト能力も高い選手。今後への可能性を感じさせるデビュー戦となった。

■三浦弦太(G大阪/DF/←ハーフタイムIN)=★★★★

ベネズエラが前半より攻撃のペースを落としたこともあるが、後半45分間のプレーで失点をゼロに抑えた。植田よりもビルドアップ時に高いポジションを取ることができ、ボールを前に運びながら常に縦パスを意識していた。三浦がセンターバックに入ったことで最終ラインが高い位置をキープでき、日本のリズムを作ることができた。

■永井謙佑(FC東京/FW/←後半20分IN)=★★★★

やはり永井はジョーカーとしても魅力的な選手だ。心と体の準備をし、自分がやれることをしっかり整理してピッチに入ったことで、短い出場時間のなかで持ち味を表現できていた。出場直後に左サイドからのグラウンダークロスでゴールを演出してリズムに乗ると、絶対的な武器であるスピードを生かし、攻守において迫力のある動きでチーム全体のプレーのギアを上げた。

■山口 蛍(神戸/MF/←後半20分IN)=★★★

出場4分後に同時投入された永井からのパスを受けて、一矢を報いるミドルシュートをねじ込んだ。相手に当たった一撃とは、その積極性が1点につながった。ベネズエラの足が止まった時間帯であり、守備面でも破綻がなかった。

■井手口陽介(G大阪/MF/←後半37分IN)=評価なし

プレー時間が短く評価の対象外だが、疑問なのはなぜ井手口が左サイドハーフに投入されるのか。ライン際で何回かボールを受けたが、本来はそこから縦に仕掛けて勝負する選手ではない。久しぶりの代表戦出場が不慣れなポジション、しかも限られた時間というのは、アピールしたい選手には酷だろう。不可解な采配だった。

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