一夜限りの社交場、ホスト役若手選手の振る舞い注目

Jリーグ開幕を1カ月後に控えたこの時期、規模や名目こそ違えど、ほとんどのクラブが実施しているのが「スポンサーパーティー」。いわゆるクラブのスポンサー企業の要人を招待し、選手との交流の場を設けるのだ。選手は一夜限りで、もてなし役のホストへ変身する。

ガンバ大阪も1月24日に大阪市内の一流ホテルで恒例の会が催された。何回も取材で訪れている記者が、常に注目しているのは若手選手の立ち居振る舞い。この宴会場では主力選手は大口スポンサーの近くに配置され、若手や実績のない選手になるほど出入り口に近い下座に。これは社会の常識であり、若手はまずこれらの勉強から始まる。

この日、出入り口に近い場所に配置されたのは、ガンバ大阪ユースから昇格したばかり、ピカピカのプロ1年生の2人。FW塚元大とFW川崎修平(ともに18)は、少し緊張した表情で立っていた。

記者が名刺を差し出してあいさつすると、2人もぎこちなく自らの名刺ケースから1枚手渡してくれた。記者も30年近く前に経験した、彼らにとって人生初の名刺交換だ。

でも、この2人、実はちょっと有名だった。今冬にTBS系テレビで放送されたドキュメンタリー番組「バース・デイ」(語り・東山紀之)に出演していた。ユースからプロに昇格できるか否かを約1カ月にわたって密着され、見事にプロ選手になった2人。でもやはり、ピッチでまだ結果を出していないためか、出席者から話しかけられることも少ない。

「番組の放送は気恥ずかしくて見ていません」という塚元は「今は森下(U-23)監督から、ボールを持っていない時の動きをアドバイスされています。今度、初めて給料をもらえたら、母や兄にプレゼントしたい」と、初々しいコメント。記者は心の底から「頑張ってね」と返した。

次に名刺交換したのは、川崎フロンターレから期限付き移籍してきたDFタビナス・ジェファーソン(21)。ガーナ人の父とフィリピン人の母を持ち、東京で生まれ育った。「名字がタビナスで、名前がジェファーソンです。国籍はフィリピンですが、日本国籍を取得している最中です」と自己紹介してくれた。身体能力の高い左サイドバックで、J1の出場経験はまだない。記者の取材ノートには「要注目」の文字を記しておいた。

次は関学大から入団2年目のDF高尾瑠(23)。1年目の昨年は18試合に出場した準レギュラーだ。それでも彼の名刺には何と、直筆のサインが入っていた。関係者からアドバイスされたそうで、100枚ほどある名刺にすべてペンを走らせていた。もらった関係者は、彼の気持ちを受け止めたはず。思わず「そういうサービス精神が、いつか成功につながるよ」と言うと「はい」と笑っていた。

宴会はあっという間に約1時間半がすぎ、それでも宮本恒靖監督(42)やMF遠藤保仁(39)ら有名人にサインを求めて並ぶ行列は、途切れていなかった。

この宴会であまり話しかけられなかった選手は、おそらく違った意味で将来へのモチベーションになったはず。実績ある先輩が何百枚もサインをしている姿を見て、学ぶこともあったはず。何クソ精神って、意外にこんなところで生まれたりすると思っている。この日、記者が会話した若手選手が1日も早く、公式戦で勝利に貢献するのを楽しみにしている。

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