西川潤にバルサが熱視線。リーガに 挑む日本人選手の歴史は続いていく

リーガに挑んだ日本人(最終回)

短期集中連載「リーガに挑んだ日本人」では、20年以上前から、その挑戦の足跡を振り返ってきた。挑戦者ひとりひとりが、進むべき道を広げてきたのだろう。失敗は成功につながってきた。結果、久保建英(マジョルカ)という”ミュータント”のような選手まで登場したのだ。

リーガ・エスパニョーラは修羅の場である。どれだけポテンシャルが高くても、コミュニケーションに問題のある選手は、力を出し切れない。また、どれだけ明確な武器があっても、プレー全体に適応できなければ、不要の選手とされる。

エイバルの乾貴士が成功できたのは、機動力のあるドリブル突破に驕ることがなかった点にあるだろう。課題の守備面でも戦術的に向上。ポジション的優位を確保できるようになり、本来の技術が生きたのだ。

絶え間ない戦いの中、チーム戦術を完遂し、個人の力を見せつけられるか。その知性と技術がカギになる。次にリーガに挑む日本人は誰になるのか――。

4人の「次にリーガに挑む日本人」の候補を選んでみた。

〇西川潤(セレッソ大阪/18歳)

左利きのアタッカーでトップ、トップ下、サイドアタッカーに適性がある。スペイン語で「Perla(真珠)」と言われる際立った才能だ。

ポジションを取るうまさがあり、身体的なしなやかさにも恵まれ、ボールプレーで負けない。俊敏でタイミングをずらすドリブルで仕掛けられるだけでなく、ボールを持ってためを作り、有利な味方にパスを出すことができる。左足のキックの質は瞠目に値し、シューターとしての非凡さもU-17ワールドカップで証明している。

スペイン人好みの日本人選手と言えるだろう。

事実、2019年夏にはバルセロナが接触。「今年2月の18歳の誕生日を待って(18歳未満の選手の国際移籍は禁止されている)の契約成立」と噂されたが、東京五輪やコロナ禍の影響によって、サインには至っていない。ただ、移籍は秒読みとも言われている。

仮に移籍が成立した場合、西川は当面バルサBでのプレーになる。その非凡なセンスはバルサというエッセンスを触媒に、大きく変貌を遂げるかもしれない。久保以来、大化けする可能性のある日本人アタッカーだ。

〇橋本拳人(FC東京/26歳)

2019年シーズン、J1でボランチとしてベストイレブンに選ばれている。中盤でのプレーは攻守ともに隙がない。

守りをベースに攻撃に厚みを出し、攻守のつなぎを丹念にこなせる。身体的な強靭さと柔らかさに恵まれ、足が伸びるようにボールを奪うこともできる。世界基準のストロングヘッダーではないが、高さが弱点になることはない。攻撃に入った時には、センターフォワードのような爆発力も持っていて、ダイナミズムを感じさせる。ボランチだけでなく、アンカー、インサイドハーフなどもできるユーティリティ性も強みだ。

しかし、その最大の長所は、やはりチームプレーヤーとして周りを補完できる点だろう。カバーや迅速な球出しで、味方にアドバンテージを与えることができる。イゴール・スベルディア(レアル・ソシエダ)、ハビ・マルティネス(バイエルン・ミュンヘン)に近いプレーインテリジェンスを感じさせる。

たとえば、久保建英がプレーするマジョルカのボランチ、イドリス・ババと比較しても、何らそん色はない。実力だけで言えば、それ以上の貢献ができる。唯一の懸念は年齢だろうか。欧州のクラブが23歳前後までの選手を求めているのは確かだ。

〇中村仁郎(16歳、ガンバ大阪U-23)

左利きのアタッカー。昨シーズンは15歳にしてJ3で18試合に出場し、3得点を記録した。

右サイドからカットインしてのシュートはひとつのパターンだが、その動きは変幻自在で、自らのタイミングで”時間を操れる”。アイデアが多彩で、スピードの変化で相手の逆を取り、プレーの渦を作れる。J3時代の16歳だった久保と比べて見劣りしない。

現時点では、大人を相手にするとプレーの連続性が失われ、積極性を失ってムラが出ることは間違いないが、18歳でどんなプレーヤーになっているのか、見ものだ。

〇松尾佑介(22歳、横浜FC)

右利きのアタッカー。左サイドを拠点に防御線を突破し、混乱を生じさせ、味方を優位に導く。常に視野を確保し、アイデアが豊富で、無数の選択肢から迅速に決断できる。基本的なスピードをベースにしたドリブルは武器だが、ドリブルそのものに固執せず、シュートまでの絵が強く描かれている。

昨季はJ2で6得点。今シーズン、初のJ1で化けられるか。

他にも、田中碧(川崎フロンターレ)、上田綺世(鹿島アントラーズ)、斉藤光毅(横浜FC)、岩田智輝(大分トリニータ)、渡辺剛(FC東京)、本田風智(サガン鳥栖)など、東京五輪世代は注目に値する。

大穴はFC東京の19歳、中村拓海だろうか。現在の主戦場は東京U-23。右サイドバックを担当する。そこが本職かどうかは微妙だが、センスは光る。ボールを失わない自信と技術があり、ひらめきと判断も高い水準で、パスの質は高い。今はセンスだけでプレーしており、守りに関してはユースレベル、だが、”サッカー”を感じさせる。まずは、プロでの出場経験を積むことだろう。

リーガはサッカー選手を魅了させる。あのジネディーヌ・ジダン(レアル・マドリード監督)も、サッカーの楽しさを取り戻すためにスペインにやって来た。そこには至高のスペクタクルがある。

「スペインでのプレーはやっぱり楽しかった。できれば、もう一度やってみたいよね」

マジョルカで激闘を演じた大久保嘉人(東京ヴェルディ)の感慨である。

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