いよいよJ1再開だ! 青山知雄が選ぶ“世界”と“覚悟”を持つJ1注目選手5選

いよいよ今週末からJ1リーグが再開する。ここでは、今シーズン押さえておきたいJ1注目の5選手をピックアップ。楽しみな選手が多い中、キーワードに掲げたのは「世界」と「覚悟」。全国のファン・サポーターが待ちに待ったJ1リーグの舞台を、熱く盛り上げてくれるであろう世界に通じるスーパープレーと、彼らが胸に秘める熱い気持ちにフォーカスした。

▼チャナティップ(北海道コンサドーレ札幌/MF 18)
「不思議と応援したくなる選手」とでも言おうか。“タイのメッシ”という異名を引っ提げてJリーグに来てから4年目。タイ代表で見ていた当時から技術面は光っていたが、来日後の急成長で、最近はヨーロッパのクラブも目を光らせているとされる。

中でも特筆すべきはあふれ出る闘志と、158センチという小柄な体格を逆手に取ったプレーだ。ボールを受けてからの鋭いターン、小刻みなタッチで相手守備陣を切り裂くドリブル、アタッキングサードでの鋭い飛び出し、そして倒れても瞬時に立ち上がってプレーを続ける姿。オフ・ザ・ピッチでの笑顔と明るいキャラクターが印象的だが、試合中の鬼気迫る表情とのギャップには驚かされるばかり。そこからはタイという国を背負って戦う覚悟も伝わってくる。

昨季はAFCアジアカップ参加の影響で十分なオフを取れず、シーズンを通してなかなかコンディションが整わなかったが、今季はタイ代表とムアントン・ユナイテッドで同僚だったGKカウィンの加入がメンタル面でプラスに働いているとも聞く。心身ともに休養十分で臨める再開後のチャナティップには、さらなる進化の予感が漂ってならない。

▼大島僚太(川崎フロンターレ/MF 10)
言わずとしれた川崎フロンターレの心臓。とにかくボールを受ける前からワクワクさせてくれる。どんなトラップをするのか、その体の向きで次に何をするのか。簡単につなぐのか、前を向いてタメを作るのか、それともダイレクトで切り裂くのか。もはや「時間と空間を支配するコンダクター」と称してもいいだろう。

ミスの少なさも成長の証だ。加えてオン・ザ・ボールでのアジリティや体幹の強さ、ボディバランス、前へ向かう意識の強さも格段に向上している。チャンスメーカーとしてJ最高クラスにあることは間違いない。だが、選手としてもう一つ上のステージに到達することを求めたくなってしまう。それが自分で試合を決める能力――つまり「怖さ」を手にできることができるかどうかだ。この部分に関しては、中村憲剛も彼の課題として挙げていた。

そこでカギになるのが、今季から川崎フロンターレが取り組んでいる4-3-3の新システムである。逆三角形にした中盤において、大島のポジションは従来のボランチから一列上がったインサイドハーフ。サガン鳥栖との開幕戦では、積極的にゴールを狙って4本のシュートを放っている。最近2年間のリーグ戦で放ったシュート本数は計23本、25本(いずれも年間2ゴール)だっただけに、得点意欲の兆しが表れているようにも思われる。J屈指のコンダクターから勝負を決める大黒柱へ――。川崎フロンターレの若きバンディエラが切り拓こうとしている新境地を見逃す手はない。

▼前田直輝(名古屋グランパス/MF 25)
ボールを持ったときの期待度は、今季のJリーグでナンバーワンかもしれない。右サイドから鋭く内側にカットインして、思い切りよく自慢の左足を振り抜く。インフロントに掛けたスライダー系のキックも、ストレート系の弾丸シュートもある。ゴールネットに豪快に突き刺す光景は、もはや「撃ち抜く」と表現するべきかもしれない。

一方、得意の形が警戒されれば、縦へ力強く突破して右足を強振することもできるようになってきた。つまり逆足でニアを「撃ち抜く」形である。実はこの中断期間に取り組んだ個人トレーニングで右足を鍛えたことを前田自身も明かしている。本格的に逆足の精度とパワーが上がってくれば、目標だった海外移籍も夢ではなくなるだろう。実際、今年に入って海外クラブが積極的に興味を持ち始めたという話も聞く。

闘志を前面に押し出した気持ちの入ったプレーは、実に力強く、清々しい。名古屋グランパスではFWで起用されることもあり、ペナルティエリア内で結果を出すシーンも作れるようになってきたが、やはり彼が生きるのは右サイド。果たしてマッシモ・フィッカデンティ監督はどんな采配を見せるのか。とにかく再開後のJリーグで最も見ておくべき選手の一人だと断言しておこう。

▼昌子源(ガンバ大阪/DF 3)
“ロストフの14秒”から丸2年。昌子源が大阪の地で再出発を図る。世界と邂逅した2018年、ロシアで感じた世界への想いを封印し、鹿島アントラーズに残留してAFCチャンピオンズリーグを制覇。そこから新天地にトゥールーズを選択し、翌年1月に渡仏した。ロシアでの悔しさをバネに世界と伍するための覚悟の移籍。だが、長引いていた右足首痛のリハビリに関してチームのメディカル体制が整わず、治療方針の違いから今年に入って帰国を決意。ジュニアユース時代にプレーしたガンバ大阪で再起を期すことになった。

今年2月のJリーグキックオフカンファレンスでは多くの取材を受けていたが、当時はまだプレーできる状態ではなかった。「少なくとも1カ月は掛かると思う。状況によっては手術をするかもしれない」とも話していただけに、彼の足首にとってはコロナ禍の中断は「禍転じて……」という期間になったと言えるかもしれない。再開後はリモートマッチ、そして厳戒態勢下での開催が続く。となれば、いつも以上に彼の武器である“声”が響き渡るはずだ。

しかし、再開に向けて彼の言葉は聞こえてこない。普段は明るいキャラクターで、勝っても負けてもしっかりと試合を言葉を紡ぐタイプだが、今は「試合で結果を出すまでは」と取材を受けない姿勢を貫き通しているという。これも覚悟の表れなのだろう。ロストフの芝の匂い、見上げた夜空は忘れてはいない。もともと持ち合わせる資質も申し分ない。完全復活を遂げて再び日本代表へ、そしてその先へ――。G大阪で結果を求める覚悟のシーズン。その姿を見届ける価値は十二分にある。

▼古橋亨梧(ヴィッセル神戸/FW 11)
数多くのワールドクラスを擁するヴィッセル神戸において、最もヨーロッパに近いプレーヤーと言っていいだろう。今年4月には大手スペイン紙『マルカ』で特集記事が掲載され、同僚のアンドレス・イニエスタもスペインでの活躍に太鼓判を押す。その武器はとにかく圧倒的な速さと縦への突破。瞬間的にトップスピードに乗る加速力は、すでにJリーグのレベルを超えている。ただし、ここはすでに語り尽くされた部分。注目すべきは鋭い抜け出しからのファーストタッチ、そしてシュートのうまさにある。

特にスルーパスに反応した直後のプレーは必見だ。そのままシュートを打つのか、それともシュートまでの動きを逆算したボールタッチを見せるのか。フィニッシュまでの流れるようなプレーも世界に通じるものがある。彼自身は「ラストパスを引き出す動きを心掛けている」と話しているが、そのパスを出してくれるのは、世界最高峰の司令塔イニエスタ。裏を返せば、イニエスタのパスセンスを生かしているのが、彼であるという見方もできる。一瞬で状況を打開する二人のコンビネーションは絶対に見逃せない。

古橋自身、スペイン語の勉強を進めており、オファー次第で今冬に欧州移籍が決まる可能性もある。FC岐阜から神戸、そしてヨーロッパへ。チームメイトの藤本憲明が地域リーグ、J3、J2からJ1へステップアップして「シンデレラボーイ」と称されたが、それを上回るストーリーを実現する可能性は十分。昨年11月には日本代表デビューも果たした25歳のストライカー。これぞまさしく「今、最も見ておくべき選手」である。

リンク元

Share Button