今日J開幕…“大本命”川崎を追い落とすのはどこだ?

昨シーズンの王者・川崎フロンターレがホームの等々力陸上競技場に、2019シーズンを制した横浜F・マリノスを迎える26日の神奈川ダービーで29年目のJリーグが開幕する。

シーズンの前哨戦となる20日のFUJI XEROX SUPER CUPでもガンバ大阪を下し、幸先のいいスタートを切った川崎が今シーズンの優勝争いでも本命となる。背中を追うチームの一角、FC東京の長谷川健太監督も「川崎は非常に強い」と認めた上でこんな言葉を紡いでいる。

「ただ、川崎を超えなければ優勝はない、と思っています」

年間の勝ち点や勝利数、総得点などでJ1歴代最多をマークするなど、記録ラッシュの独走劇で2シーズンぶり3度目の優勝を決めた川崎では、レジェンドの中村憲剛さんが引退。さらに最強攻撃陣を縁の下で支えた、アンカーの守田英正がサンタ・クララ(ポルトガル)へ移籍した。

中村さんの電撃的な引退表明は大きなショックを与えた。しかし、いつかは誰でも引退を迎えるだけに、中村さんから未来を託された選手たちは昨シーズンを超える川崎を目指す。むしろ後半戦は代役のきかない存在だった守田の穴を、どのように埋めるかが連覇へのカギを握ってくる。

G大阪戦ではアンカーで新戦力が試された。先発したジョアン・シミッチ(名古屋グランパス)は利き足の左足から繰り出される長短のパスを駆使した展開力に、後半途中から投入された塚川孝輝(松本山雅FC)は身長184cm体重78kgのサイズを生かした守備にそれぞれ長けている。

「ハードワークをし続けることがベースであり、それがすべてだと思っている。そのなかでゴールを奪い続けることにこだわる、自分たちのスタイルを貫き通すことしか考えていない」

鬼木達監督は他チームから追われる立場になっても、昨シーズンから導入した[4-3-3]を主戦システムとする戦い方は変えないと明言する。そのなかで攻守両面のキーマンとなるアンカーに関しては、昨シーズンの前半戦で起用され、その後にインサイドハーフに移った東京五輪世代の田中碧を含めて、しばらくは実戦のなかで最適解が誰になるのかを探していくことになる。

その上で乗り越えなければならないのが、AFCチャンピオンリーグ(ACL)となる。新型コロナウイルス禍で長期中断を余儀なくされた昨シーズンは二転三転した末に、最終的には中東カタールでの集中開催となり、ACL期間中に予定されていたJ1リーグ戦が予備日に組み込まれた。

必然的に過密日程により拍車がかかり、けが人が続出したなかでACL勢はFC東京が6位、マリノスが9位、ヴィッセル神戸が14位とJ1リーグで苦しんだ。そして、今シーズンも4月下旬から5月のゴールデンウィーク明けまで、ACLのグループリーグ6試合が集中開催形式で組まれている。

グループリーグを突破すれば、シーズンの後半に決勝トーナメントが再び集中開催形式で行われる可能性もある。川崎とともにACLに挑むG大阪、名古屋の前にも過密日程が立ちはだかる。

昨シーズン2位のG大阪は、期限付き移籍していたサンフレッチェ広島で得点ランク3位の15ゴールをあげたFWレアンドロ・ペレイラ(松本)をはじめ、FWチアゴ・アウベス(サガン鳥栖)、韓国代表MFチュ・セジョン(FCソウル)らを補強。システムを[4-3-3]に変更し、攻撃力をより前面に押し出す戦い方で昨シーズンから公式戦で4連敗を喫している川崎の背中を追う。

川崎に土をつけた3チームのひとつで、最終的に3位に食い込んだ名古屋もFW柿谷曜一朗(セレッソ大阪)、MF齋藤学(川崎)、MF長澤和輝(浦和レッズ)ら日本代表経験者を獲得。G大阪とともに選手層を厚くした背景には「打倒・川崎」だけでなく、ACLとの両立をにらんだ戦略がある。

そしてACLには出場せず、国内の戦いに集中できる点で、川崎の対抗として存在感が増してくるのが鹿島アントラーズとなる。昨シーズンは就任まもないザーゴ監督の戦術が浸透せずに開幕4連敗を喫するなど、序盤戦における出遅れが最後まで響く形で5位に終わった。

しかし、8月下旬から7連勝をマークするなど右肩上がりに転じた軌跡は、2シーズン目の指揮を執るザーゴ監督の存在とともに今シーズンへ引き継がれる。指揮官も大きな手応えをつかんでいる。

「昨シーズンに比べれば、選手たちは私が求めるものを理解して取り組んでいる。スムーズな準備ができたのではないか、と思っている」

得点ランク2位の18ゴールをあげ、オフには中国や中東のクラブが獲得に動いたとされるFWエヴェラウドを含めて、鹿島は昨シーズンの主力が全員残留した。加入2年目で10ゴールと2桁をマークした、東京五輪世代のFW上田綺世と組む2トップのどちらかがゴールすれば14勝4分けと不敗神話を継続させ、連携をさらに熟成させて今シーズンに臨む陣容も対戦相手の脅威となる。

一方でチーム力のさらなるアップを託される新戦力、ディエゴ・ピトゥカ(サントス)とアルトゥール・カイキ(アル・シャバブ)のブラジル人MFコンビが、緊急事態宣言発令下における外国人の新規入国禁止で来日のめどが立っていない。鹿島とともに地力のあるマリノスも、新ストライカー候補のブラジル人FWレオ・セアラ(ヴィトーリア)の合流時期が未定のまま開幕を迎えた。

新型コロナウイルス禍に見舞われた昨シーズンに降格なしの特例が設けられた結果、今シーズンは昇格組の徳島ヴォルティスとアビスパ福岡を加えた、史上最多の20チームがJ1リーグを戦う。1チームあたりの試合数は例年より4つ増ふえて「38」となり、全体の5分の1にあたる17位以下の4チームがJ2へ自動的に降格する、かつてないシビアな戦いが繰り広げられていく。

本来ならば降格となる最下位に終わった湘南ベルマーレからは、オフにDF坂圭祐(大分トリニータ)、MF松田天馬(京都サンガF.C.)、MF金子大毅(浦和)、MF齊藤未月(ルビン・カザン)、MF鈴木冬一(ローザンヌ・スポルト)と東京五輪世代の若手を含めた主力が次々に移籍した。

「いろいろな数字が表すように課題がある。たとえば攻撃の部分で点が取れていない点をしっかりと踏まえて、キャンプでは意識して取り組んできた。ベースとなるスタイルや戦い方は変えない」

浮嶋敏監督は努めて前を向くが、リーグワーストの総得点29に終わった攻撃を改善するべく獲得した新外国人FWコンビ、ウェリントン(ボタフォゴSP)とウェリントン・ジュニオール(ポルティモネンセ)の入国および合流時期が、未定という状況も苦境に追い打ちをかける。

オフの国内移籍市場が活性化したなかで、11位の大分からもチーム得点王のMF田中達也(浦和)をはじめ、DF鈴木義宜(清水エスパルス)、DF岩田智輝(マリノス)、MF小塚和季(川崎)、MF島川俊郎(鳥栖)と主力が軒並み移籍。13位の鳥栖もMF原輝綺(清水)、DF森下龍矢(名古屋)、MF原川力(C大阪)、MF高橋秀人(横浜FC)らを失った。

J3を戦った2016シーズンから指揮を執り、大分を成長させながらJ2およびJ1への昇格、J1残留へと導いた片野坂知宏監督は「20チームで戦うなかで、優勝争いだけでなく順位争いや残留争いも厳しくなる覚悟で準備してきた」と語る。引き分けでよしと確実に勝ち点を拾う、現実的な戦いに徹する下位チームが増えてくれば、おのずと優勝争いにも影響を及ぼしてくるだろう。

ただ、2010シーズンのFC東京、2012シーズンのG大阪、2016シーズンの名古屋のように、戦力的には期待を寄せられながら一度崩れたリズムを取り戻せず、J2降格を喫したチームも少なくない。東京五輪開催に伴う中断期間が設けられた影響で過密日程が待つ今シーズンの場合は、建て直す間もなく次の試合が訪れるケースも多くなる。ゆえに序盤戦の戦い方が大事になってくる。

昨シーズンはチーム内でクラスターが発生した鳥栖で4試合、柏レイソルではFC東京とのYBCルヴァンカップ決勝を含めた3試合がそれぞれ延期された。しかし、今シーズンは延期しても代替開催が困難なときには「みなし開催」が適用され、どちらかのチームの責任に帰すべき中止の理由がある場合は、そのチームが0-3のスコアで敗戦となることも決まっている。

たとえば代替日程が限られる終盤戦でクラスターが発生すれば、数試合が敗戦扱いとなるケースも生じかねず、その場合は最終的な順位に大きな影響を及ぼしてくる。ピッチ内で対峙する相手チームだけでなく、日々の感染予防対策の徹底を含めたピッチ外の戦いにも神経を尖らせていくシーズンとなる。

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