J1残留は本当に大丈夫? 苦境が続いているガンバ大阪の危うい現状

今季J1が終盤戦を迎えてもなお、ガンバ大阪の復調気配が見えてこない。  

昨季のJ1と天皇杯で、いずれも”準優勝”だったG大阪にとって、今季はタイトル獲得を目指すシーズンだったに違いない。シーズンオフの補強も順調に進み、開幕前の評判は悪くなかった。

ところが、シーズンが開幕すると、すぐにクラブ内で新型コロナウイルス感染が広がり、活動休止となるアクシデントが発生。活動再開後も調子は上がらず、大きく黒星が先行した。  

その結果、他クラブに比べて試合消化が遅れた影響はあったにせよ、しばらくJ2降格圏に沈むこととなり、宮本恒靖監督を解任。新たに松波正信監督が就任し、数字のうえでは状況はいくらか改善されたとはいえ、依然苦境が続いている。

 直近の第29節鹿島アントラーズ戦にしても、現状を色濃く映し出すような試合となった。  

相手の鹿島は9月に入り、ルヴァンカップも含めて3戦全敗と苦しんでいた。しかも、3連敗中の総失点数は7。好調だった8月に見せた鉄壁な守備は影を潜めていた。

 G大阪にしてみれば、都合のいいタイミングでの対戦だったはずである。

実際、前半はこう着した展開で試合が進んだ。どちらかと言えば、鹿島が攻勢だったのは確かだが、攻撃に厚みはなく、それほど怖さは感じられなかった。  

いわば、どっちもどっち。鹿島の相馬直樹監督も、「(前半は)多少硬さ、単調さがあった。互いに(ここ2、3試合で)勝ちがないチーム同士。パワーが少し空回りする部分があった」と認めている。  

しかし、G大阪はどっちつかずの試合の流れを引き寄せるどころか、後半早々にあっけなく失点してしまう。  

52分、G大阪は敵陣でのスローインを奪われ、ロングカウンターから先制点を許すと、60分、73分とおよそ10分間隔でたちまち3失点。見る間に勝負は決した。

 鹿島は「1点とれるまでは重さ、硬さがあった」(相馬監督)にもかかわらず、G大阪がそこを突くことはできず、「ああいう(後半の早い)時間帯に失点してしまった」(松波監督)のでは、勝負の行方は明らかだった。

「簡単な失点が非常に多い。切り替え、戻りながらの守備の対応がよくない」

 松波監督はそう言って嘆いたように、1、3点目はいずれもロングカウンターからの失点。あたかも同じ映像を繰り返し見ているかのごとく、守備への切り替えが遅く、簡単にドリブルでボールを運ばれた挙句、ゴール前での対応も拙(まず)く、楽々とシュートを打たれてしまっている。これでは、失点が増えるのも当然のことだろう。  

G大阪は、8月以降のルヴァンカップ、天皇杯を含めた公式戦12試合で、無失点試合が5試合ある一方で、複数失点を喫した試合は6試合に上る。失点せずに耐えているうちは何とかなっても、ひとつの失点で堰(せき)を切ったように失点を重ねてしまう。そんな傾向がはっきりと表れている。  

特に最近はそれが顕著で、直近3試合で計10失点という惨状だ。松波監督は試合後、「前半は守備の面では、中盤でのプレッシング、背後への対応は準備してきたものを出せた」と語っていたが、その見立てに素直にうなずくのは難しい。どこで攻撃を制限し、どこでボールを奪おうとしているのか。全体に強度が低く、狙いがボンヤリとしていた印象は拭えない。  

しかしながら、守備と攻撃は表裏一体。有効な攻撃を繰り出せないなかで、守備だけ頑張ってくれ、というのも無理がある。  

鹿島戦を見ていても、G大阪は前線のFWパトリックへ向かってロングボールを入れるしか打つ手がなく、有効な攻撃手段を持ち合わせていなかった。

「ずっと(鹿島に)ボールを持たれていて、(自分たちが)攻めることがなく、この展開では勝てないと全員が思っていたと思う」  

3バックの一角を務めたDF高尾瑠がそう振り返ったのも、無理はない。失点を重ねたあと、選手交代とシステム変更で「前へ行く姿勢はしっかり見せてくれた」(松波監督)とはいえ、事態を一変させるには程遠く、焼け石に水の感は否めなかった。 “互いに勝ちがないチーム同士”の似た者対決も、終わってみれば、内容、スコアともに歴然と差が開く結果に終わった。

とはいえ、シーズン前の目標がどんなものだったかはさておくとすれば、今のG大阪は開幕当初の最悪の事態は脱したように見える。連勝はできずとも、負け続けることもない。コロナ感染の影響で試合が延期された結果、J1が中断していた東京五輪期間中に5連戦をこなす憂き目にも遭ったが、そこでも3勝2敗と勝ち越している。

今季も残り10節をきった第29節終了現在、降格圏の17位とは勝ち点7差の14位は、苦しいながら、ひとまず降格危機を免れたと見てもいいのかもしれない。

 だがしかし、やはりこうして試合内容に目を向けてしまうと、どうにも心もとない。むしろ降格圏を脱しているのが、ラッキーなことに思えてしまう。  

鹿島戦後、高尾が「僕自身の意見だが」と前置きしたうえで口にした言葉は、歯車が噛み合わないチームの現状を物語る。

「僕が思うのは、守備どうこうより、自分たちの時間を増やしたいというのが強い。そうしたら失点も自ずとなくなっていくイメージがあるが、今はずっと(相手に)ボールを持たれて、自分たちがやりたいことができない」  

Jリーグの歴史を振り返ると、降格圏にいたクラブが最後の最後で奇跡の残留を果たした例は少なくない。だが、裏を返せば、まさかの降格を味わった例もまた、同じ数だけ起きているということだ。  

本当に大丈夫?  

G大阪の現状を見ていると、そんな不安が頭をもたげてくる。

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