【G大阪】天皇杯決勝へ鍵を握る倉田秋の役割。「守備で頑張るのは当たり前。決定的な仕事にこだわる」 SOCCER DIGEST Web 2015年12月31日(木)21時0分配信

4-2-3-1へのシフトで戦術的なキーマンに。

 チャンピオンシップ準決勝のリターンマッチとなった元日の天皇杯決勝。G大阪にとって、攻守のキーマンとなるのが長谷川健太監督もその存在をことのほか重視する倉田秋だろう。

今季は、切り替えの速さや球際の強さというチームの基本コンセプトを継続。スタメンの基本的な顔ぶれにも変化はなかったが、G大阪はその仕様を確かにマイナーチェンジしていた。

第1ステージでチームが用いたのは昨年の基本布陣だった4-4-2。パトリックの推進力と宇佐美の決定力を前面に押し出した「三冠布陣」でファーストス テージも終盤まで優勝争いに食い込んだG大阪だったが、ACLとの厳しい並行日程を戦い、疲弊気味のチームは大きな「欠陥」を見せ始めた。

「4-4-2のシステムでは前線が点を決めれば、迫力はあるし、逆に決めきれないと間延びしてリスクがある」

第1ステージで優勝を逃した直後の6月末、長谷川監督は課題を感じ取っていた。

当時、遠藤が再三、口にしていたのが相手ボランチに対するプレッシャーの少なさだった。「あれだけボランチを自由にさせると、ラインも下がらざるを得ない」。

当初は攻撃の変化を付けるオプションのひとつに過ぎなかったはずの4-2-3-1へとマイナーチェンジを図ったのは、あくまでも守備を安定させるのが第一義。その戦術的なキーマンとなったのが倉田だった。

「僕だけが走っているわけじゃないし、特別なことはしていない」

シーズン序盤はFWや攻撃的MF、さらにはボランチなど戦況に応じてマルチな働きぶりを見せて来た背番号11の口ぶりはどこまでも謙虚だが、指揮官は東アジアカップで初の日本代表入りを果たしたハードワーカーに絶大な信頼を置く。

「あれだけ動ける選手はそうはいない」(長谷川監督)。宇佐美のような決定力や万能性は持たないが、90分間にわたり、相手の起点にプレッシャーをかけ続 ける守備力に関しては倉田が断然上だ。スプリント回数や走行距離といった数字上のデータでは表われにくいが、その献身性がチームにバランスをもたらしたの は確かだった。

2015シーズン初のタイトル奪取へ攻守に渡る奮闘が求められる。

 もっとも倉田自身は守備面だけの貢献に満足はしていない。
「守備で頑張るのは当たり前。トップ下で出ている以上、もっと決定的な仕事にもこだわりたい」

2013年の長谷川体制発足後、泥臭さやハードワークぶりが注目されがちだった背番号11だが、トップ昇格当時は「遠藤と二川の特長を併せ持つ」と称された俊英だ。

7月の東アジアカップ韓国戦で代表デビュー。その後招集はないが、「ハリル効果」は確かに倉田を変えた。
「ハリルさんに口を酸っぱくゴール、ゴールと言われて自分の中に刷り込まれた。今は考えなくても身体がそう動く」

最大の目標だったACLは敗退直後に行なわれた10月25日のアウェー・仙台戦。自身初となる1試合・2得点で3-1の勝利に貢献すると、代表組が不在 で挑んだ天皇杯4回戦では川崎相手に自陣から50メートル近いドリブルシュートをゲット。「秋が攻守の鍵」と指揮官が信頼を置き続けて来たタフな技巧派 は、確かにその幅を広げて来た。

「トップ下は自由に動けるのでやりやすい。それに僕が前で守備をすれば、後ろもしっかりと守ってくれる」

長谷川監督の「懐刀」が今季のG大阪を支えていたのは間違いない。昨季の三冠王者が、今季いまだ手にしていないタイトルを獲得するには、倉田の躍動が不可欠だ。

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