「アジアの聖地」目指すG大阪の新本拠 年間経費6億円…知恵絞り捻出せよ

G大阪の新本拠「市立吹田スタジアム」のお披露目となるプレシーズンマッチが14日に行われ、3万5千人を超える観客が“門出”を祝った。寄付や助成金で 総事業費約141億円をまかない、昨年9月に完成したサッカー専用スタジアム。陣頭指揮を執ったG大阪の野呂輝久社長は「アジアのサッカーの聖地にした い」と意気盛んだ。(細井伸彦)

◆J開幕以来の感動

名古屋を迎えた“オープニングマッチ”を勝利で飾ったG大阪。2点目を挙げた今野は「欧州でサッカーをしているような雰囲気」と声を弾ませた。約4万人 の収容人員を誇り、ピッチから観客席の距離は最短7メートル。陸上競技のトラックがフィールドをぐるりと囲む昨季までの本拠地、万博記念競技場とでは臨場 感は比べものにならない。

サッカー関係者の喜びはひとしおだ。「1993年のJリーグ開幕以来の感動。それくらい、うるっとくるような…」。こう話したのは日本協会の田嶋幸三副 会長。スポンサー企業や自治体の関係者も多数駆けつけたといい、Jリーグの村井満チェアマンは「こうした息吹が日本中に広がっていってほしい。長期的に見 れば、地域とサポーター、クラブにとってトリプルウィンの関係になる」と歓迎した。

◆VIPルーム活用

スタジアムは吹田市が所有し、指定管理者となったG大阪が2063年3月までの長期にわたって運営する。施設使用料や土地の賃借料、修繕積立金を含め、 維持管理にかかる費用は年間約6億円。これをいかにして捻出し、さらに利益を上げるかが今後の課題だ。日本協会の川淵三郎最高顧問は「今までの延長線上で (観客動員が)4万人に届くかというと、そうはいかない」とくぎを刺す。

クラブの見立てでは、1試合平均2万8千人の観客動員が採算ライン。目標は3万人だ。昨年5月、ホームタウンに池田、摂津、箕面の3市を新たに加え、計 7市に拡大。スタッフを増員して全市に専任の担当者を置いたのも、“新スタジアム元年”を見据えた取り組みの一環にほかならない。

課題の一つは、試合開催日以外でどう稼働させるか。G大阪の主催試合は現状でJ117試合、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)3試合、ヤマザキナ ビスコ・カップ1試合の計21試合。6月に日本代表戦が開催され、カップ戦の決勝トーナメントが加わればさらに増えるが、年間300日以上は使用されな い。

収益を見込んでいるのが、2千人収容のVIPルーム。メーンスタンド側に14、バックスタンド側に16部屋あり、野呂社長は「いろんな会議で活用していただきたい」とPRする。

万博記念公園の外周道路を走るランニング愛好家向けに、シャワー室やトイレを有料で利用してもらう構想もある。スタジアム3階コンコースは1周約600 メートルあり、「雨の日でも走ってもらえる。『G大阪ランニングチーム』をつくるのも一つの手かな」と伊藤慎次事業部長。天候に左右されない強みを生か し、イベント誘致を検討するなど、スタッフは知恵を絞る。

◆グルメやお宝堪能

専用スタジアムとしては西日本最大級。注目度の高さを示すのが、合計で1万席に迫る年間パスの売れ行きだ。最も高額なエキサイティングシート(21万円)は216席が既に売り切れた。J1開幕戦となる28日の鹿島戦のチケットも、車いす席をのぞき完売した。

魅力はサッカー観戦だけではない。スタジアム内には19の飲食店が出店。箕面市のフランス料理店やホームタウンで人気のグルメも味わえる。併設するミュージアム「ブルストリア」には、優勝トロフィーや記念スパイクなどを展示。ファンにはたまらない空間だ。

「このスタジアムが歓喜あふれる夢の劇場になるには、チームのパフォーマンスが一番。ここでアジアチャンピオンになるのがたった一つの希望」と野呂社 長。アジアに冠たるビッグクラブへ-。今季のスローガンに「Ambition」を掲げるG大阪が、野望への第一歩を踏み出す。

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