【英国人の視点】ガンバ、吹田でなぜ苦戦? 新スタでわずか1勝、“ホーム”に顕在するピッチ上の問題

ガンバ大阪が新スタジアムで苦戦している。サッカー専用の素晴らしいスタジアムであることに間違いないが、わずか1勝と波に乗れない。自分たちの本拠地で 勝てない理由とは何か? スタジアムに一家言を持つ英国人は“ホーム”に何を思うのか。(取材・文:ショーン・キャロル)

新スタジアムでわずか1勝。芝も改善したが……

 ガンバ大阪の待望の新本拠地移転は、クラブの発展を次なる段階へと導くものだと見られていた。だが、老朽化した万博記念競技場を離れて4分の3マイル(約1.2km)移動し、新設の市立吹田サッカースタジアムに移って以来、チームはその姿を見失ってしまっている。

昨年のガンバは、リーグ戦のホームゲームでわずか1敗のみ。最終的に王者となるサンフレッチェ広島に、11月の万博で0-2の敗戦を喫しただけだった。 だが今季は新天地でわずか一度しか勝利を味わっておらず、ここ4試合の連敗も含めて吹田での7試合で早くも5敗している。

この結果、チームはリーグ中位を漂っており、ステージ首位に立つ浦和レッズとは勝ち点で7ポイント差。昨年は準決勝進出を果たし、今回こそは絶対に優勝したかったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)ではすでに敗退に終わってしまった。

「ホームで勝てていないということは、勢いに乗れないということ。チャンスは作っているが決めることができない」と長谷川健太監督は、先日の柏レイソル戦に0-1の敗戦を喫したあと話していた。

長谷川監督はさらに、ガンバの不調を修正するべく、ごく小さな部分にまで気を遣いながら多大な努力を払っていることを強調した。

「今日は芝を少し短めにカットし、ピッチにスプリンクラーを撒く時間も半分にした。ピッチが滑りやすいと選手たちが言っていたからだ」

「今の状況を乗り越えるためあらゆる手段を試そうとしている。もちろん選手たちは、この素晴らしいスタジアムのファンの前で勝ちたいと思っているが、何が問題なのか分からない。今は試合に気持ちを入れることができても、結果がそれに付いて来ない」

「変えられるのは自分たちしかいない。次の水原戦で勝てるように、体と心をリフレッシュすることに専念したい」

だが、その後の5日間に行ったことも功を奏しはしなかった。水原戦もまた黒星に終わり、ガンバはACL敗退が決まった。

慣れていない選手たち。困惑する場面も

 レイソル戦も水原戦も、同じパターンにはまってしまっていた。ガンバはかなりの時間ボールを支配するが、それをゴールへの脅威に繋げることができない。前線の連携は特に不安要素だ。

宇佐美貴史や長沢駿、アデミウソンの波長が合うことは滅多になく、チームは新たなホームスタジアムを自分たちの家だとは感じられていないというのが全体的な印象だ。

会場が素晴らしいことに疑問の余地はないが、現時点ではアイデンティティを確立しきれていないように思える。アウェイの選手たちやファンもホーム側と同じようにスタジアムに影響されモチベーションを上げているため、まるで中立地同然だ。

各チームはホームのピッチで優位に立ち、慣れ親しんだ環境によるアドバンテージを得られることが期待されるものだが、ガンバの選手たちがピッチ内外の環境にまだ慣れることができていないのは明白だ。

たとえば、2-1で勝利を収めた3月の大宮アルディージャ戦は、これまでガンバが吹田スタジアムで白星を挙げた唯一の試合だが、試合のメンバーに入って いなかった岩下敬輔と丹羽大輝の2人は、どこから試合を観戦するべきなのかを求めてスタジアムの奥深くに迷い込んでしまっていた。試合に出場する選手たち も、試合後にどこを通ってミックスゾーンに出て行けばいいのか懇切丁寧にレクチャーを受けなければならなかった。

だが、より不安を感じさせたのはピッチ上での問題だ。

アウェイでは強いガンバ。ホームでの苦戦を裏付けるPK失敗

 最も近い場所ではピッチから観客席までの距離がわずか7メートルしかないという、サッカー専用スタジアムにおける周囲との距離感に馴染むのに苦戦しているようにも思える。

単なる偶然かもしれないが、PK成功率が低いこともこの推論を裏付けるかのようだ。水原戦では宇佐美が、1本目のキックも蹴り直した2本目もGKにセー ブされてしまった。さらに驚くべきことに、横浜F・マリノスに1-2の逆転負けを喫した4月2日の試合のアディショナルタイムには、いつもなら頼れるはず の遠藤保仁までもが12ヤードからのシュートを決めることができなかった。

そのいずれの試合でも、相手チームはセットプレーからネットを揺らしている。マリノスは中村俊輔が得意のフリーキックを沈め、水原はサントスがPKを冷静に成功させた。今のホームチームに影響を及ぼしている問題は心理面にあるのではないかと思わせる。

今年のチームが単純に良くないと考えてしまうのも難しい。激戦の末に勝利を収めた日曜日のアビスパ福岡戦も含めて、ガンバはアウェイではここまで勝ち点12ポイント中9ポイントを獲得できているのだから。

そのアウェイでの好調をベースとして、ホームでの問題も早急に乗り越えられることをチームは望んでいるはずだ。だが、次に吹田を訪れるチームは大久保嘉人を擁する好調川崎フロンターレ。ガンバの復調はもう少し待つ必要があるということになるかもしれない。

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