3戦勝利なしのG大阪。柏戦の敗北のなかで見えた〝戦術アデミウソン″という光明 SOCCER DIGEST Web 7月24日(日)20時58分配信

守備陣が低調だった一方で最前線で気を吐いた。

[J1第2ステージ5節]柏3-2G大阪/7月23日/日立柏サッカー場

G大阪の調子がいまひとつ上向かない。昨季優勝を逃したチームは、横浜からアデミウソンや藤本らを加えて開幕前の下馬評は相当に高かった。しかし、蓋を 開けてみれば、年間で7位(9勝5分8敗)で、第2ステージも同じく7位(2勝2分1敗)と、うだつの上がらないシーズンを過ごしている。

J1第2ステージ5節の柏戦は守備陣が低調だった。相手のFWに対して寄せが甘く、簡単に突破を許したり、球際で競り負けたりと、インテンシティの低さ を露呈。対する柏にクリスティアーノという強烈な“個の力”があったとはいえ、あまりに簡単にやられすぎた。長谷川監督も「失点の仕方があまりにも簡単すぎた。もっとゴール前の寄せであったりとかを厳しくしなければいけない。同点に追いついてここからというときに、またカウンターからクリスティアーノに3 発目をやられてしまった。リスク管理の部分で、後手を踏んでしまっていた」と悔やんだ。

ただ守備陣の調子が悪かった一方で、2点のビハインドをすぐさま返した攻撃は目を見張った。得点の形こそ、セットプレーと相手DFのミスによるオウンゴールだったが、それ以外にも流れるようなパスワークで柏守備陣を崩し、ゴールを脅かすシーンが見られた。

そのなかでひと際輝きを放ったのが、この日2試合ぶりに先発出場したアデミウソンだ。

1トップのポジションに入ったアデミウソンは、随所に能力の高さを披露。ボールロストもほとんどなく、前半はパーフェクトに近いパフォーマンスでG大阪の攻撃を牽引し、まさに“ブラジルの至宝”と謳われた能力を発揮していた。

しかし長谷川監督が「アデミウソンがFWで入って、非常にキレのあるプレーをしてくれたのは、ここ2戦でなかった」と語るように、今季鳴り物入りで加入 したブラジル人アタッカーはチームへの順応に苦しんだ。第1ステージは13試合・4得点と物足りない出来で、第2ステージに入っても持ち味を発揮できず、 3節の大宮戦と続く福岡戦は、スタメンから外されていた。

指揮官は柏戦での先発起用の理由をこう語る。

「ボールが非常に落ち着くところです。前線で起点になりますし、周りを使うのも非常に巧いので、彼がトップに入るとそういう特長を生かすサッカーがやれる んじゃないかなと。パトリックはまた違う特長を持った選手ですが、レイソルはコンパクトに戦ってくるというのは分かっていたので、パトが裏に一発に抜け出 しても、オフサイドになるのが関の山だと思いました。その分アデミウソンの方が手前で受ける能力であったりとか、2列目の選手をうまく生かす能力に長けて る選手だと思いましたので、今日はアデミウソンをチョイスしました」

たしかに、G大阪の攻撃はアデミウソンがボールを受けることから始まっていた。前線でボールを受けると、懐の深いボールキープとキレ味鋭いドリブルを交 えながら、攻撃のリズムを作った。またポストワークでも貢献。テンポの良いパスワークの起点となり、2列目の遠藤、大森、阿部と〝生かし、生かされ″の関係を築いた。そのなかで1点目のヘディングや、右サイドを崩して相手のミスを誘った突破などゴールに向かう姿勢は迫力があり、終盤に長沢とパトリックを前 線に置いた、単調なパワープレーよりも怖さがあった。

「良い守備が良い攻撃を生む」とはよく言うが、その逆も然りだ。主導権を握った前半15分過ぎは、やはりボールを保持する余裕からかチームの守備は安定していた。それだけに後半にアデミウソンがトーンダウンしたのが悔やまれる。

ただ、アデミウソンが戦術の核となり得る光明を見せたことは事実だ。宇佐美というエースを放出したG大阪にとって、このブラジル人アタッカーの奮起は浮上の鍵となるかもしれない。チームに立ち込める暗雲を振り払うには、〝戦術アデミウソン″を極めるのもひとつの手だ。

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