DF藤春 スタミナ生んだ弟との“ウマイ”共同生活

リオ五輪開幕を控え、48年ぶりのメダル獲得を目指す男子サッカーの日本代表戦士に迫る連載がスタートする。支えてきた家族や恩師らの証言を交え、現在地 に至る分岐点を探る。第1回はオーバーエージ(OA)枠で選出されたDF藤春広輝(27=G大阪)にフォーカス。「最も感謝する人物」として名を挙げる 弟・隆矢さん(24)との共同生活が、成功への道を切り開いていた。

13年オフだった。隆矢さんのもとに1本の電話が鳴った。「俺やけど一緒に住まん?ご飯とか作ってもらいたいんやけど」。G大阪所属の兄・広輝から。広輝の運命を変えた共同生活の始まりだった。

広輝は入団3年目だった13年、G大阪コーチだった小井土正亮氏(現筑波大監督)に命じられて自炊を始めたが「朝はコンビニのパンとかで終わらせてい た」と明かす。一方、隆矢さんの趣味は料理作り。母の手伝いから面白くなり、小学3年生から作り続けていた。高校卒業後、一時は料理専門学校にも通った。 今も書店では必ず料理本を手に取る。当時は職を探していた頃。広輝からの打診を「正直にうれしいと思った」と快諾した。

得意料理は和食。旬の食材を取り入れて朝晩2食を作る。「今は夏バテしないようにブロッコリーはレシピに入れています。納豆は夜に摂取する方が良いと読 んだので、それもマスト」と隆矢さん。広輝も「パフォーマンスが上がった。体内から湧き上がるパワーも感じている」と実感を込める。事実、14年は公式戦 34試合出場で3冠に貢献した。15年にはA代表に初選出。そして今年は五輪…。兄弟が支え合って大舞台にたどり着いた。

隆矢さんが「五輪に選ばれたのは兄の力」と謙遜すると、広輝は「正しい食生活で90分間走り切る体ができた。弟のおかげ」と返す。固い絆がある。オフは隆矢さんのチョイスで国内旅行に出掛け、互いに1年間の労をねぎらうのが恒例。昨年は熱海などで過ごした。

隆矢さんは来年4月から再び料理専門学校に通う予定だ。広輝は言う。「五輪で活躍してロシアW杯も出て…。その頃に僕がオーナーで弟が厨房(ちゅうぼう)。そんな料理屋を開ければ良いですよね」。“藤春食堂”の夢を背負い、まずはリオ五輪に挑む。

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