宇佐美貴史、2度目のドイツ挑戦 類まれなテクニックを武器に定位置を掴めるか

今夏ドイツ1部アウクスブルクに移籍した宇佐美貴史は2度目のブンデスリーガに挑む。新たな挑戦の舞台に選んだのはミュンヘン近郊に位置する人口30万人 弱の都市アウクスブルクをホームタウンとするFCアウクスブルクだ。2011年にクラブ史上初の1部昇格を果たしたアウクスブルクは、以降何度も降格の危 機に瀕しながらも1部に留まり続けている。

昨シーズンはクラブ史上初めての出場となったヨーロッパリーグ(EL)でベスト32進出を果たしたが、国内リーグでは低迷し、残留争いに巻き込まれるこ とになった。4シーズンに渡ってチームを率いてきたマルクス・ヴァインツィール監督がシャルケへと引き抜かれ、ディルク・シュスター新監督を迎える今シー ズンは新たなスタートを切ることになる。

シュスター監督は3部に所属していたダルムシュタットを3シーズンで1部昇格に導き、昨シーズンは降格候補筆頭に挙げられながら14位に入って1部残留 を成し遂げたことで評価を上げた監督だ。シュスター監督は、所属選手の市場価値がリーグ最下位だったダルムシュタットでは堅い守備からのカウンターという 弱者の戦いを徹底したことで結果を残して見せた。ダルムシュタットと比較すれば戦力で勝るアウクスブルクだが、リーグ全体でみれば下から数えた方が早いの は変わらない。その意味では、アウクスブルクにとってシュスター監督は最適の人材といえるだろう。

そんなアウクスブルクにおいて宇佐美への期待は高い。練習初日には多くのファンが練習場を訪れたことからもそれは伺える。試合にはほとんど出られなかっ たとはいえ、19歳でバイエルンに入団したことはそれ自体大きな実績であり、ミュンヘン近郊ということもあってアウクスブルク加入前から宇佐美の存在を 知っているファンも少なくなかった。

今回の挑戦では宇佐美は通訳を付けていない。監督やスタッフ、チームメイトとは一通りドイツ語でコミュニケーションを取っているようだ。通訳がいないこ とには不安もあるが、通訳を介さないことで直接的なコミュニケーションを取ることができるのはメリットだ。それだけに自分からコミュニケーションを取って いくことが重要になる。自分からどんどん話しかけていくというタイプではないが、初日の練習からチームの輪に加わろうとする姿勢は見て取れた。

練習後にはチームメイトが先にロッカーへと引き上げていく中、宇佐美はグラウンドに残ってクールダウンをするなど意識の高さも伺えた。チームが1週間のオフを与えられた中でもグラウンドにやってきて体を動かすなど、今回の挑戦に掛ける意気込みも高いことが分かる。

宇佐美加入後、クラブからは2人の攻撃的MFが去ったが、それでもライバルは強力だ。ウィングでポジションを争うのは28歳のブラジル人MFカイウビー と29歳のパラグアイ人FWラウール・ボバディージャの2選手。カイウビーは身長184cmと上背があり、長いストライドから繰り出す独特なテンポのドリ ブルが特徴的だ。 パラグアイ代表歴もあるボバディーじゃははち切れんばかりの強靭なフィジカルを活かした力強いプレーが持ち味だ。いずれの選手も競り合いに強く、宇佐美と は違ったタイプの選手だと言えるだろう。

シュスター監督からはトップ下での起用も想定されているが、同ポジションでは韓国代表MFク・ジャチョル、元トルコ代表MFハリル・アルティントップと レギュラーを争うことになる。ともに周囲を見てプレーすることができる選手なだけに、宇佐美としては彼らとともにプレーする方が持ち味は発揮しやすいかも しれない。

今シーズン、クラブが目指すのは1部残留だ。昨シーズンはELに出場したが、クラブの規模を考えれば妥当な目標だと言える。宇佐美としては、シーズン最 初の公式戦となったドイツ杯1回戦での出場がなかったことを考慮すると当面の目標は出場機会を得ることになる。クリエイティブな選手が少ないアウクスブル クにおいて宇佐美の技術の高さは目立つだけに、試合でその武器を生かすことができれば必ず道は開けてくるはずだ。

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