吹スタで“珍”ハプニング。米倉がヒーローインタビューまで受けたのに、得点者は藤春!?当事者だけが知る真実とは…
[J1第2ステージ13節]
G大阪 3-3 FC東京
9月25日/吹田市立スタジアム
試合終了間際の90分、平山相太が倒れ込みながらも執念のゴールを決め、FC東京が3-2とついに突き放すことに成功する。ところがアディショナルタイムに突入した1分後、猛反撃に出たG大阪が右サイドから攻略。
サイドバックの米倉恒貴が稲妻のように中央へ切れ込み、彼からパスを受けた倉田秋が身体を張ってボールをキープしながらヒールパスを送る。そこへ再び飛び込んだ米倉がシュートを突き刺し、ホームチームが土壇場で3-3に追い付いてみせたのだ
絶叫が連続したジェットコースターに乗っているような内容も起伏に富んだ一戦は、6ゴールが飛び交ってのドロー決着に終わった。
興奮冷めやらぬなか、ヒーローインタビューに呼ばれた米倉は「(倉田)秋がいいパスを出してくれて、あとは合わせるだけだった。最後、(シュートの)コースが変わったけど、自分のゴールでいいんじゃないかなと思います(笑)。最後まであきらなければ追い付けると思っていた。誰が出てもチームのために一生懸命やるのがガンバのサッカー。負けない戦いが続くが、それを貫き次の浦和戦でも勝ちたい」と、顔を火照らせながら語った。
アップダウンを続けて徳永悠平と激しい駆け引きを繰り返しながらも、どこにそんなスタミナが残っていたんだと驚くような、驚愕のオーバーラップを最後に繰り出した。米倉は間違いなく、この日のヒーロー
――吹スタに詰めかけたG大阪サポーターの誰もが、そう思ったに違いない。
ところが、吹スタ劇場のオチはまだあった。
「ヨネのゴールであっても良かったと思うんですけど……申し訳ないです」
試合後にそう漏らしたのは、藤春廣輝だった。Jリーグから発表された公式記録を見ると、G大阪の3点目の欄には「90+1分:藤春」と記されていたのだ。
動画で確認すると、確かに米倉の地を這う光線のようなシュートが、藤春の足に当たってコースが若干変わっているのだ。FC東京のDF陣がオフサイドをアピールしたのは、藤春のポジションについてだったことが分かる。
藤春は次のように振り返った。
「(ボールに)触ったほうが、よりしっかりと枠に入れられると思ったので……。まあ、触ってしまった、とも言えますが」
藤春だけが真実を知っていた。吹田スタジアム全体が〝騙された″と言える、G大阪の劇的ゴールだった――。
とはいえその場面で、左サイドバックの藤春が、ゴール前まで詰めていたという事実も見逃せない。米倉のシュートがGKやDFに弾かれたり、こぼれていたら……、彼が見逃さずゴールへ蹴り込んでいたはずだった。
なにより、この日の藤春のプレーは常にアグレッシブで、熱い気持ちを上手くプレーで表現していた印象を受けた。
前半の大森晃太郎のゴールで1-1の同点に追いついた4分後、背番号4が勢いに乗ってゴール前まで駆け上がると、アデミウソンから絶妙なスルーパスが放たれる。すると藤春は飛び出したGK秋元よりも一瞬先にボールに触って振り切り、中央へ折り返して長沢のゴールをお膳立てした。
「前半内容があまり良くなかったなかで、アデ(アデミウソン)が一発でくれた。パスが強くて、めちゃキツかったけど(笑)、GKが上手く出てくれたので、駿に合わせることができました」
そう振り返った藤春の“ビッグプレー”が、試合全体をさらにヒートアップさせたのは確かだった。一方、守備でも厳しい対応を迫られたと言う。
「相手のサイドバックやサイドハーフも運動量が多いので、そこにだけは仕事をさせたくなかった」
攻守両面で奮闘し、終わってみれば、藤春の1得点・1アシスト。彼に運気が巡ってきたようにも見える。そして今週末、第2ステージ首位に立つ浦和との大一番(10月1日午後2時開始/埼玉スタジアム)を迎える。サイドで対峙する宇賀神友弥や駒井善成らとのマッチアップを含め(関根貴大は出場停止)、藤春のプレーが注目を集めそうだ。
そして逆サイドには米倉がいる。両翼が揃って好調なのが、G大阪の強みでもある。