【藤田俊哉の目】MFが100得点を奪うには? 僕がタイプの違う遠藤保仁に感じた意外な共通点

遠藤が13人目のJ1通算100ゴール。MFとしては藤田俊哉以来ふたり目!

 10月29日、ガンバ大阪の遠藤保仁が13人目となるJ1通算100ゴールを決めた。ミッドフィールダーを主なポジションとする選手では僕以来2人目の記録達成となった。

試合後、遠藤は「100ゴールを決めた選手たちはJリーグに名を残すような選手ばかりなので嬉しいです」というコメントを残していた。とても光栄なことだし、遠藤がJ1で100ゴールを決めたことで、改めてMFの得点記録がクローズアップされた。どちらかというとゴールはシーズン得点王や最多得点のほうがクローズアップされる。遠藤がこうやって頑張ってくれたおかげで、僕もまた自分の100ゴールを思い出すことができて素直に嬉しい。

自分の100ゴール目はもちろん覚えている。

2007年8月25日。対戦相手は大宮アルディージャ。グランパスのホームスタジアムの瑞穂陸上競技場で、Jリーグ史上4人目、FW登録以外の選手としては史上初のJリーグ通算100得点を達成したけど、当時、すでに100ゴールを決めていたカズ(三浦知良)さん、中山(雅史)さん、ウェズレイの3人は2試合に1点のペースではたどり着けないほどのハイペースでゴールを決めていた(編集部注:カズ=176試合、中山=181試合、ウェズレイ=148試合で記録を達成した)。

それに比べて、僕の場合は404試合もかかったわけだから、4試合に1点のペースになる。いかにカズさんや中山さんがストライカーとして偉大だったか、改めて痛感させられた。

遠藤の場合は、536試合目での記録達成となったという。ペースとしては僕の方が上になるのだろうけれど、主にトップ下でプレーしていた僕と違って、遠藤は主にボランチでプレーしてきた。ゴールに近いポジションでプレーしている分、僕のほうにアドバンテージがあるのは当然のこと。

逆に言えば、本職がボランチのポジションにもかかわらず、100ゴールを決めた遠藤の価値のほうがどれほど大きいことか。

現役時代の僕は、2試合に1ゴールは決められるイメージでプレーしていた。でも、プロ10年目を過ぎてから徐々にゴールを決められなくなってきた。そうなっても100ゴール目はPKで決めたくないっていう自分なりの“こだわり”を持ってプレーしていた。チームメイトも気遣って僕にPKを用意してくれるような空気もあったけれど、そこは頑なに拒否した。流れのなかでゴールを決めることが、自分らしいゴールと考えていたから。そこにはプロ選手としてのプライドもあった。

その点で言えば、遠藤がPKで100ゴール目を決めたことは、とても納得がいくし、そのほうが遠藤らしいとも思う。ワールドカップで直接フリーキックを決めるくらい、彼のキックは素晴らしい。フリーキックで言えば、左は中村俊輔、右は遠藤が日本を代表する選手。彼らを超える名手はまだ出てきていないのも事実だろうし、ことPKに関しては遠藤がいまでもナンバーワン。“コロコロPK“という言葉が生まれたし、彼の冷静で正確なPKは芸術品だよ。

タイプの違うふたりだが、得点を奪うために必要なベースは同じ?

 僕と遠藤。得点力をもった中盤選手としてプレーしてきた共通点はどこにあるのか。その視点から考えると、ゴールのイメージをつねに持っていることだろうね。もともと僕はゴールを決めることが大好きだった。ゴールを決めるために、つねに「ビデオテープを早回ししているイメージ」でプレーしていた。

だから、誰よりもゴール前に早く、たくさん顔を出していた。エリア内へのスプリント回数には“こだわり”を持っていた。ストライカーと同じ感覚を持ちながら、誰よりも走っていたという自負もある。

遠藤も「走る」ということの重要性は感じているはず。振り返れば、南アフリカ・ワールドカップの走行距離もチーム内でトップレベルだったと聞いている。どことなくスローテンポな遠藤に対して、僕は意外性や俊敏性で勝負するタイプ。プレースタイルが違うので、テクニカルなプレーがクローズアップされがちだけど、ふたりのベースにあるのは「走れること」だったと考える。結局、走れなくなるにつれてゴールの確率が減るわけだから。

しかし、遠藤にはセットプレーという最強の飛び道具がある。それが彼の代名詞でもあるから、これから年齢を重ねていっても、まだまだゴールを奪えるに違いない。最低でもあと10点は取るんじゃないかな。

記録はいつまでも守り続けられるものでもないし、現役選手の遠藤がこれからもっとゴールを決めて記録を塗り替えていくことは間違いない。このように世代を超えて記録を作り上げていくことが、歴史を積み重ねていくということなのだろうから。そしていつの日か、遠藤とふたりで、“MF100ゴールを祝う会”を開けたら嬉しいね。

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